善悪を超越したマルジャーナ【5】(追考編・2)/『アリババと40人の盗賊』
追考編2回目は、マルジャーナの公平感について考えてみようと思います。
奴隷の立場のマルジャーナが、公平さに固執したらどうなるでしょうか。
他人の目から見た自分を意識して、卑屈になってしまうかもしれません。
他人に奉仕することが仕事なので、与えるばかりで不満が絶えなくなってしまうかもしれません。
誰も自分に公平に振舞ってくれない人生に嫌気が差し、自分自身を見失ってしまうかもしれません。
そのように、満ち足りた気分を他人から得ようとすると、他人の意向に振り回されて、自らを公平に扱うことが出来にくくなってしまうような気がします。
マルジャーナは、リスクを伴うことでも勇敢に有意義なことを選びました。油の袋の中身が判明した時、彼女は魅力的で利口な女性なので、クオジャ・フサインの妻になるべくアリババを裏切り、贅沢に暮らすことを選べたかもしれません。しかしマルジャーナはためらうことなく真に自分に忠実に振舞ってアリババを助けました。
マルジャーナが進むべき方向へ行けたのは、自分に対する公平感を保っているからだと思います。ムスタファを介した大仕事は、清濁併せ呑む度量で成し遂げました。奴隷としての料理やダンスは、自分が喜びを感じたり、自分を豊かにするための行いにしています。自分が自分のベストパートナーになる大切さを知っているから出来るのだと思います。
しかし決して独り善がりで生きているわけではないので、アリババの息子とお互いにとって幸せな結婚をします。
そうしてマルジャーナは結果的に奴隷ではなくなったのでした。
(了)