御宇田みや Miya Miuta
今思うこと
さいてんしろちょうたん
俳句と短歌を束ねました
詩と七五調の歌を連ねました 透織(すきおり)/平織や綾織などに紗(しゃ)や絽(ろ)の組織をまぜた織物のことです
ハンドメイドを楽しんで
翌日、佐平は孝彦とキエに、少しお時間をいただけませぬか、と桔梗丸屋を出る話をした。二人は佐平が驚くほど困惑し、決断が早急過ぎると孝彦が云った。するとキエが、二助の様子を見に行って欲しい、と云った。忙しいだけの理由で祖父の葬式に来なかったのはおかしい、たまに来る文がありきたりなことしか書かれていないのもあの子らしくない、その間に身の振方をよく考えておくれ、と云った。 佐平が奈良の薬園を訪ねると、二助は、また丁度ええ時に来たなぁ、と感心したように云った。武蔵の植物園で働い
佐平は利一が知っていたフンランの言葉や、習い始めたアンゲリアの言葉を清に認めた。これが初めて出した文であった。清はヨネから教えてもらった簡単な料理の材料や作り方を返事に書いた。互いに心に秘めている会えない寂しさを表しはせず、こうしたやり取りが二人にとっては好意の最善をなすことで、立場上これ以上はどうしようもなかった。 ヨネは一彦が来ることを大層喜んでいた。裁縫が上手だし、畑仕事をしてくれるし、力仕事を頼めるし、何より家に信頼出来る男がいることの安心感があった。清は寺子屋で
桔梗丸屋への帰り道、里山を歩いている時、少しでも清の側にいたい気持ちから、佐平は故意に二人より遅れて歩いていた。そして急な斜面に差し掛かると、気持ちの重さからか、よろけてしまった。すると体が当たった樹木の下の叢から蝶が飛び出した。黄色い蝶と白い蝶が夫婦をしたまま飛んで行った。これは一生のことをしておる時にすまぬことをした、と佐平は心の内で詫びた。羽化した蝶のオスの一日の仕事はメス探しである、求愛飛行はよく見掛けるが、交尾は動きがままならなく危険が伴う、そのためメスに拒否
京都から慰霊祭の通知はがきが熊本の自宅に届いた。私は代々の祖等親族家族の神霊等の祭典を毎年五月のゴールデンウィーク中に執行してもらっている。その時に遠縁または無縁知己などの神霊等の慰霊祭を、これは通知がないので申し込みの手続きを同時にお願いしているのだが、郵便局の払込取扱票の通知欄及び依頼人(※私、阪本三夏、五十八歳・男/私の妹、阪本夏希、五十五歳)の記入を妹が彼女の自室で終えると、遠くから鶯の声が聞こえてきた。なぜかこの時私は谷崎潤一郎の『春琴抄』をふと思い出した。 昭
夕庭のほのかに白し夏の蝶
昼下がり照明消せば花色を濃く紅くして青蓮学士
爪先や隠れ咲きたる土佐下野
騒がしき大風の夜の大でまり散じぬ朝のいささ幸せ
椿『西王母』 平成の住まひの椿「西王母」恋しくなりて取り寄せたりけり 三月の令和の庭の西王母椿咲きたるさまにやはらげられ