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【過去記事】ラオスの経済は好調なのか? ー経済成長率7%の実感と中国マネーに高まる期待ー
※本稿は、2019年4月に『ザイ・オンライン×橘玲 海外投資の歩き方サイト』に執筆した内容を、掲載元の許諾を得て掲載しています。
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2017年6月の映画『ラオス 竜の奇跡』の公開を最後に、筆を休めてしまっていた本稿。日ラオス初の合作映画は、日本、ラオス、タイの映画祭や劇場など22カ所で上映を終えた(現在は自主上映会など)。
帰国後は活動を一転、18年1月から日本でラオス料理の普及を目的とする移動式キッチン「ラオス食堂」を始め、東京を拠点に全国を周りながら、年に一度ラオスを訪れている。
今回は、2月から3月にかけて滞在したラオスの今を新旧の写真とともに書き留めてみたい。
世界一静かな首都とも謳われるビエンチャンだが、近年の開発は著しい。建築規制が緩和され郊外には高層ビルの建築ラッシュ、市内には大豪邸がチラホラと出現し、車両増加による朝夕の渋滞、高級外車ロールスロイスも街中を走る。
国家の経済成長率は7%前後をキープし、日系企業や在留邦人の数も増えているようだ。しかし、ラオスの景気は本当に良いのだろうか?
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その前に余談を少し。ラオス入国の前に立ち寄ったタイ国境の町ノンカイに、テスコ・ロータスというショッピングモール隣接のスーパー(以下、ロータス)がある。以前から比べると、スーパーにある生鮮食品売り場の品数は薄く、ショッピングモール内の照明もどこか薄暗かった。
ロータスといえば、ラオス人やラオス在住外国人が毎週末の買い物で賑わう場所だった。私もラオスにはない人々の活気に購買意欲を刺激されたものだが、ラオス政府が国内消費を促進させるために入管での関税徴収を強化したため、客足は減少、これにタイ側の外国人の陸路入国制限(年2回)が追い打ちをかけ、優良な消費者だったラオス在住外国人によるタイでの日帰りショッピングに歯止めをかけた。
とはいえ、ノンカイ市内でラオス人のグループも複数見かけたので、まったく行かなくなったということではない。いずれにしても、国境のビルボード広告は減り、ノンカイ一のショッピングモールの照明は灯りを減らし、生鮮売り場の品数は薄くなった。
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外資の波、自然破壊、緩やかに進む変化
さて、1年半ぶりの首都ビエンチャン。
中心部は高層建築規制があるので、パッと見て急激に変わったという印象はないが、昔からあった古い建物が数カ所、改築されていた。これまでに改築されなかった物件には家族間の遺産相続問題が関連していると聞いていた。兄弟の多い大家族ラオスならではの事情が潜んでいるが、それらが解決してきたということなのだろう。
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「景気は良いのか?」単刀直入に旧知の事業主達に話を聞いた。彼らがまず口にしたのは「けっして良くはない」ということ。これは5年前からずっと言われていたことだが、状況が少し深刻になってきたのかもしれない。
ラオスが所有していた金鉱をすべて外資に売却したことを理由に挙げる人もいた。金鉱のみならず多くの関連企業が外資に移り、ラオス企業に恩恵が回らなくなったのだという。
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別の理由として、材木の輸出禁止を挙げた人もいた。1940年代には70%だった森林率が2002年には41%に激減したことを受けて、ラオス政府が2020年までの森林回復を目標とする「森林戦略2020」という政策を立てたが、以後も違法伐採が横行し、現首相の代になり、ようやく本格的な禁止措置がとられた。
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巷では、ラオスで誰もが知る大企業の売却話も聞こえてきた。多くの人にそれとなく聞いても、そんな雰囲気は微塵もないという。報道に出てこない事柄も多くあるラオスなので、真偽のほどは定かではないが、国境や街中のビルボード常連でもあった企業広告が見られなくなった状況を考えると、可能性は否定できない。
公務員数削減で「仕事がない」が深刻化!?
市井の人々にも話を聞いた。以前からよく口にしていた「仕事がない」という言葉を今回改めて聞いたが、表情には眉間のシワが一本深くなっていたような気がした。
これまで、彼らの言葉の裏には「実は真剣に仕事を探していない」という実態が見え隠れしていたが、今は「本当に仕事がしたくてもありつけない」という現実に変わってきているのかもしれない。
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地方から首都の国立大学に入り、そのまま帰郷せず就職、恋愛、結婚をする若い労働力が首都に流れ込んでいる。政府は財政赤字を是正するため、政府機構の縮小と公務員数(人口の2.8%相当。アセアン域内ではブルネイに次いで2位だという)の削減計画を発表した。
コネの大きな受け皿であった国家公務員枠が減り、人々はこれまでのようにのんびりとはしていられなくなっているのかもしれない。
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しかし、町を歩くと、高級外車が街中を走り、オシャレなカフェが雨後の竹の子のように乱立し始めている。高級飲食店では、一皿8000円以上の刺し盛りがメニューに並び、4万円以上するワインのコルクが開く。絵に描いたような貧富が、日常的に目の前を通り過ぎていく。
現在の発表でラオスのGDPは1人当たり2472ドル(約27万5000円、2017年、ラオス中央銀行)。失業率は2.1%。
期待が高まる中国マネー
そもそも、これまでラオスは何で収益を得てきたのだろうか。日本国外務省によるとラオスの主要産業を、サービス業(GDPの約42%)、農業(約17%)、工業(約29%)(2016年、ラオス統計局)に大きく分けている。
ここまでの聞き取りによれば金鉱や材木。この他、山がちな地理を生かした水力発電による売電、コーヒー栽培と輸出、それらを牽引する外資企業向けの土地売買もあるのだろう。
また、ラオス財政はこれまで外国援助に支えられてきたと声高に言う人は多く、一方、戦時中から根強い麻薬ビジネスを指摘する人もいる。果たして、ラオス経済の実態とは何なのだろう。
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今回、ビエンチャンで証明写真が必要になり、写真館を訪ねた。30分ほどのスピード写真12枚入りで300円ほどだったか。この店は、幅10m×奥行き25mほどある4階建てのビルを所有している。お客は他に公務員が1名いた。同じくスピード写真。並ぶ必要などない。これまでに何度か利用してきたが、混雑しているのを見たことがない。どうすれば、こんなビルが建ち、それを維持できるのだろうか。
18年前にラオスに住み始めた時、友人に言われた言葉を思い出す。
「ラオスは七不思議が沢山あります。表だけ見ていたら何も分からないんですよ」
大陸アジアのダブルスタンダードは、喧騒のない静かで平穏なラオスでも、文化として息づいている。人々はしたたかに、たくましく、朗らかに生きてきた。
さて、旧知の友人に、不景気はいつまで続き、その打開策は?と訊くと、こんな答えが返ってきた。「あと2、3年はかかるんじゃないかな。中国マネーが鉄道に乗って来るまでに」
中国からの高速鉄道完成は2021年12月を予定。ラオスは新しい時代を迎えようとしている。
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