KISSACOの名前について
*前回からの続きです
イベントに出店するにあたり、バッグを仕上げると共に出店者名を決定して申請する必要がありましたが、ブランド名はほぼ迷うことなくKISSACOに決めました。
KISSACO喫茶去(キッサコ)
とは禅語で、
とりあえずお茶でも召し上がれ、
という意味や、
老若男女分け隔てなく喫茶去であるべき、
という使い方をするそうです。
そもそもどのように喫茶去という言葉を知ったかというと、私は夜間のバッグの専門学校に通っている時期に昼間は出版社の編集部でアシスタントをしていたのですが、上司の編集者が食事に連れて行ってくれた際に、最近作った本だよ、と『本のお茶』という作品を一冊くれました。
『本のお茶』は、明治39(1906)年にニューヨークで刊行され、世界中で翻訳されベストセラーとなった岡倉天心著『茶の本』(The Book of Tea)をエッセイストの川口葉子さんが美しいカラー写真とわかりやすい意訳でまとめた作品です。
そして、何の気なくぱらっと開いたページにあった言葉が<喫茶去>だったのです。
言葉の響きや意味も含め、不思議と馴染みが良かったんでしょうね。
いつか自分のバッグのブランドを立ち上げる日が来たら、喫茶去にしようとなぜかそのときすでに直感的に決めていたような気がします。
そしてこれには後日談もあり、KISSACOを立ち上げて5年が経った頃になんと『本のお茶』の著者である川口葉子さんご自身がたまたまKISSACOのバッグを購入しに来てくださったのです。
これには心から感動しました。
ご本人にも、先生の作品からKISSACOと名付けましたとお伝えしたら大変喜んでくださいました。
KISSACOという名前にも偶然ではない何かを感じずにはいられません。
*川口葉子さんと神田COFFEE COLLECTIONにて
そしていよいよ初御披露目となるイベントの当日、仕上がった数十点のバッグと木で手作りしたKISSACOの看板を車に詰め込み、会場に向かいました。
まだハイハイしかできない生後10ヶ月程度の息子も一緒に会場へ連れて行ったので、お店の設置も販売も一苦労でした。
イベント当日は生憎の雨で肌寒かったので、
これでは人もあまりこないだろうから屋台で買い食いでもして楽しもう!
というようなテンションになっていたのですが、
バッグは出店者の間でもみるみる話題となり、
思いの外どんどん売れていきました。
また、その日だけで百貨店などのバイヤー3名ほどから出店のお誘いを受け、悪天候にもかかわらずイベントは大成功に終わりました。
イベントには単発で出店したつもりでしたし、子供を保育園に預けてバリバリ仕事をする予定もなかったので、子育てしながら無理なくできそうな条件の合った一社さんだけをひとまずお受けすることにしました。
また、生地の加工も一回限定での約束だったので新たに別の依頼先を探すのも一苦労でした。
現在KISSACOの生地を加工してくださっている工場さんはもう7年ほどのお付き合いになりますが、今の工場が見つかる前に「作業が大変過ぎて無理です」と三社ほどから断られている過去もあるので、毎回面倒な作業を引き受けて下さっている今の工場の職人さんたちには感謝しかありません。
唯一お受けした一社はECサイトでの販売だったので、子育ての合間を見計らいつつ、商品がなくなったら製作をして、というのを繰り返していくうちにぽつりぽつりとですが販売できていました。
本格的に起業しよう!などと大それた事も特に思っていなかったですし、十分な運転資金なども用意しておいなかったので、
ひとまずは少ない自己資金だけでできる範囲のことを細々と続けて行こうというスタンスでした。
KISSACOがスタートして1年半くらいが過ぎたころ、自身が30歳を迎えるとほぼ同時に第二子となる長女も出産しました。
リピーターのお客様も少しずつですが付いてきていたので、このまま二人の子供を育てながらゆるやかにKISSACOを続けて行けたらいいなぁと呑気に思っていた矢先、出産の2ヶ月後にあの忘れもしない東日本大震災が起きたのです。
つづく。
*現在発売中のオレンジページ8/17号にて、2ページに渡り特集していただいております
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