名CM考Ⅱ 第十一回 1987年 コスモ証券 「頭がしわくちゃ」/「珍しいんじゃない、新しいんだ」
私はね、準大手証券会社の知名度を上げるにはこれは最高のCMだと思いますね。人はやっぱりどうしても4大証券の店舗に行ってしまうわけだよ。で、世はバブル。しかもコスモは大阪の企業つまり在阪企業だ。そういった企業が全国展開するにはどうすればいいだろう。企業名を覚えてもらうには……。そうだ。3時に取引が終わった時の証券情報の番組の後にこれを流せばいいんだ!
頭いいですよね。人はそれをマーケティングの勝者と言います。
1987年 「頭がしわくちゃ」
で、このCMの逸話として小学校から帰って来てファミコンをやろうとした少年たちにとってある種のトラウマを与えたわけですよ。親は証券情報(つまり「財テク」)に釘づけなので「株価情報見てからゲームやってね」って言われたはずなんだよ。だから子供が待ちながら株価情報を意味も分からずに見てるわけだ。そのCMでこれが登場するわけだよ。インパクト強いですよね。
(※なお、このCMには「株式やるんだったら頭を使え」って警告の意味も含まれている)
1987年 「珍しいんじゃない、新しいんだ」
だからこの2作品を覚えてる人は案外40代後半あたりにいると思うし親は親で変わってるCMだし下手すると小さな女の子だと泣く子もいるだろうから「コスモ証券」という知名度アップに大きく貢献したわけだよ。
これを「マーケティング」って言うわけ。
なぜ「珍しいんじゃない、新しいんだ」と言ったのかというと大阪では知名度あるから、ですよね。でも一切関西色は消した。『真夏の夜の夢』の序曲を使ったわけ。ほら、人文知が必要だろ?
私は「#マーケティング」って付けてる人でnoteで人文知(文学・芸術・文化・歴史)を語ってる人を見たことが無いですね。私はマーケターとして失格だと思いますね。だって、どうやって広告を打つんだよ? そもそも金・金・金ばっかり言ってる人はそもそもお客から嫌われますよ。だから当時は証券会社ですら人文知を求めたわけだよ。どうやってあなた方はマーケティングの仕事をしてるんです? 真面目に聞きたいですね。
しかもこのコスモ証券のCMって一切金融商品のCMを打ってないんですよ。そんなことしたら「ああ、株屋か」ってただでさえ印象の悪い証券会社のイメージが悪くなるんで。そうだよ、証券会社ってのは人の金を損させることも多いから恨みを買う仕事でもあるわけ。だからそういうことまで考えて打ってるし儲けたお金は社会貢献にも使うわけだよ。
そういうことまで考えてマーケティングって仕事するわけだけど、今のマーケターって全然そういう事を考えてないわけ。それどころか「意識高い系」で専門用語でマウント取ってお客の印象を悪くするんだよ。将来そのお客は名証ネクスト辺りに上場する中小企業の役員かもしれないのに。証券会社って幹事会社にもなるんだから絶対に必要な存在だし上場するって事は会社の信用を得るための手段でもあるんだよ。それが今や投機、投機の話ばかりでバブル期以上に異常な世に落ちてるよ。
プロ失格だと思いますね、今のマーケターは。だから今のマーケターのこの「コスモ」のCMは作れないです。たぶん。人文知なんて役に立たないとか言ってゴミ箱に捨てただろうから。