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【言語学】 国名が物の名前と一致してしまうのはどうして? 【雑学】

みなさんは「ターキー」という単語について、どのようなことを思い浮かべますか?

日本人の方であれば、「ターキー」と聞いて「トルコ」を思い浮かべる方は少ないと思います。おそらくみなさんが思い浮かべるのは、「七面鳥」のことでしょう。

アメリカではクリスマスの定番にもなってますしね。

元々ご存知の方も多いと思いますが、英語では七面鳥も、トルコのことも、”Turkey"と言います。

では、なぜ同じになってしまったのでしょうか?
本日は、そのようなちょっと面白い雑学をご紹介したいと思います。


◻︎Turkeyが七面鳥を意味する理由

実は、16世紀ごろの当時のトルコ(オスマン帝国)では、

1、広い領土を持っていること
2、ヨーロッパとアジア、アフリカを結ぶ立地であること

を生かして、貿易が盛んに行われていました。
その貿易品の中には、七面鳥とよく似た動物「ホロホロ鳥」が含まれていました。

当時のヨーロッパではその「ホロホロ鳥」が人気だったようで、イギリスではその鳥のことを「ターキーコック(トルコの鶏)」と読んでいたそうです。

そして時は変わり、17世紀ごろになると、大量のイギリス人がアメリカ大陸に移住するようになりました。

すると、なんとそこにも「ターキーコック」が居るではありませんか。
だから、そこにいる鶏のことも「ターキーコック」、”略して”「ターキー」と呼ぶことにしたのです。

しかし、そのアメリカ大陸の「ターキー」は、実はターキーコック、つまりは「ホロホロ鳥」ではなく、七面鳥だったのです。
つまり、よく似た別種でした。

それで、その勘違いが訂正されることなく現代になり、いまだ七面鳥を「ターキー」と呼んでいるのです。


◻︎貿易品が国名そのものになるのはどうして?

このような疑問を持った方は多いのではないでしょうか?
つまり、「どうして七面鳥(ホロホロ鶏)を『ターキー』と呼ぶのか?」ということです。

これは、確かによくよく考えるとおかしいのです。
なぜなら、この輸入品に国名をつけるというのは、例えばアメリカから輸入した小麦を「アメリカ」と呼ぶことと同じだからです。

普通に考えれば、「そんなわけなくない?」って思いますよね。


では、「ターキー」以外にこのような事例があるのかどうか見てみましょう。


例えば、JapanやChinaはもちろん、「日本」と「中国」を意味する言葉ですが、それ以外にも意味するものがありました。
それは、

Japan=漆器
China=陶磁器

です。つまり、日本は漆器を、中国は陶磁器を輸出していたため、それを買う側の海外の国では、漆器のことをJapan、陶磁器のことをChinaと呼ぶことにしてしまったのです。
当時のヨーロッパでは、極東の国の主要な貿易品は、その国の名前そのもので呼ばれ管理されていたのですね。

これは、英語圏であるイギリスのみで起こる現象ではありません。


日本でも同様の現象が起こっています。

例えば、トウモロコシ。
そもそも、トウモロコシの語源をみなさんご存知ですか?

ということで、クイズです。
トウモロコシの語源はなんでしょう?

多分知らない方がほとんどだと思います。

ヒントは、唐辛子と似たような語源、ですかね。






答え行きます。
トウモロコシは「トウ」と「モロコシ」に分けられます。

「トウ」は、甘いから「糖」? って思った方、多いのでは? でも、実はそうではありません。

「トウ」は「唐」。つまり、中国のことです。

じゃあ、「モロコシ」は? というと、それも「唐」です。

つまり、トウモロコシって、「中国中国」なんですよ。変な名前だなって思いませんか? でも、今の私たちは、普通に生活していれば「トウモロコシ」を変な言葉だなんて欠片も思わないわけです。

それが、今回のです。

みんな、「トウ」のことも、「モロコシ」のことも、中国のことだと認識していないんです。
それが、言葉、つまり単語の変化を引き起こしました。

ここからがとても面白いので、詳しく解説しますね。


モロコシキビ→モロコシ

まず第一に、日本には昔から「黍(キビ)」という植物がありました。
しかし、中国にも似たような植物があり、それらも日本に持ち込まれたため、その「中国のキビ」と「日本のキビ」を区別するため、中国のキビを「モロコシキビ」と呼ぶことにしました。

ここでいうモロコシとは、「唐土」のことです。つまり、「中国の」という意味ですよね。
また、現代でも、唐土は「もろこし」と読まれます。


しかし、「モロコシキビ」って名前、長くないですか?
だから、「モロコシキビ」をモロコシキビとして認識していた当時の人々は、まさか「モロコシ」が形容詞(?)だとは夢にも思っておらず、頭の4文字だけでいいんじゃね? ということでそれを「モロコシ」と呼ぶことにしました。

「いや、勝手に略すなよ!」って思いますよね。笑
でも、この「勝手に略す現象」は現代でも起こりやすい言葉の変化です。

例えば、「携帯電話」って呼ぶの長いですよね。
だから現代では「携帯」と言うのが普通です。

しかし、携帯って、本来は「身につけること」を言いますよね? なのに、それが名詞になっちゃうって、おかしくありませんか?


でも、それが言語です。その自由に形を変えるところに、言語の面白さがあるのです。なので、「モロコシ」のことも、古代の日本人のことも許してあげてください。

話は脱線しましたが、まあそう言うわけで、「キビ」と言う本体は消滅して、いわば形容詞(?)である「モロコシ」だけが残る形となってしまいました。


モロコシ→トウモロコシ

時は変わり、江戸時代になりました。
当時海外から輸入されるものは、「唐」という接頭辞がつけられていたらしく、スペインなどの海外から輸入された「コーン」もその例に漏れず、「唐」が頭につけられました。

しかし、唐コーンとは呼ばず、そのコーンに似たもの(モロコシ)が日本にあったので、「海外(唐)バージョンのモロコシ」という意味で「トウモロコシ」って名前で呼ぶようになりました。


はい。これが原因です。
つまり、

  1. 中国版のキビという意味で、モロコシキビという単語ができる

  2. モロコシキビという名前が長いので、キビを除いてモロコシと呼ぶことになる

  3. ここで、中国という意味だったモロコシが、今度はキビを意味することに変化した。

  4. その後、海外から進化版のモロコシ(キビ)が登場したため、それをトウモロコシと呼ぶことになる

  5. 結果、「中国を意味するモロコシ」と「中国を意味するトウ」が合体した言葉「トウモロコシ」ができ、しかもトウモロコシそのものには全く中国が関与していないという謎の現象が発生してしまった

こういう流れで「唐唐」というわけの分からない単語が出来上がってしまいました。


では、本題に戻りましょう。
「貿易品の名前が国名そのものの名前と一致するのはどうして?」ということの答えです。

それは、「長いから勝手に略しちゃおう」ってする人が昔から多く存在するからです。
しかも、それが全世界のどこでもみられる現象なのです。


とても不思議で、面白いですよね! 日本の場合「トウモロコシ」というバグも発生してしまいましたが、そのバグもまた言語の面白いところ。


また、この話のネックは、先ほど「肝」と言った通り、言葉には語源があるのにそれを誰も認識していないということです。
それに加え、新たな言葉を作るとみんなそれを「固有名詞」だと認識してしまうことも理由の一つとして挙げられるでしょう。もちろん、その「みんな」の中には私も含まれます。

固有名詞として認識してしまうからこそ、その固有名詞を省略させる動きが生まれてしまう。
そして、みんなその語源を無視している。だから、「貿易品が国名の名前そのものになる」というバグが発生するのです。


最後に

ちなみに、トルコ語では「ターキー(七面鳥)」のことをHindi(ヒンディー)と言います。つまり、インド人です。笑

インディアン(アメリカ原住民)といい、ヒンディー(七面鳥)といい、何かとインド人は勘違いされやすいのはなんでなんでしょうね。笑

考えられるのは、当時の「アジアと言えば」がインドだったからなんでしょうね。細かい理由は調べてないのでわからないですが、これを考察してみるのも面白そうです。今回はやめておきますけどね。


最後まで読んでいただきありがとうございました。
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