若者を育てることが、環境を守る第一歩
スリランカで、ヒョウを守るための農園内の若者の教育プログラムについてご紹介しました。
https://note.com/landscape_1/n/nd3b6fa5ea433
もう少し詳しく説明しましょう。
スリランカでは、ブラックパンサーが罠に掛かって死んでしまったことから、農園マネージャやNGOを中心として、ヒョウを守る活動が始まりました。
キリンはそのうち、農園に住んでいる若者の教育プログラムを支援しています。
このプログラムが、結構本格的なんです。
まず、茶園の中で、若者は2日間の座学を受講します。
そのうえで、ヌワラエリアにあるホートンプレインズ自然保護区の中で、3泊4日のフィールド学習を行うのです。
講師の先生は、紅茶研究所という、スリランカの国立の研究所の研究者が担っていて、無償で対応します。
さらに、国立公園での宿泊(ちゃんと宿泊施設があるのです)については、ホートンプレインズ国立公園が若干の支援をしているようです。
とはいえ、その他諸々費用が掛かるので、その一部をキリンが負担している訳です。
多民族国家のスリランカでは、この手のワークショップも簡単には実施できません。
紅茶農園の中のピッカーさんはタミール人。農園内の子供も、タミール語が公用語です。ところが、スリランカでは多数派がシンハラ人で、そのため高等教育を受けている人の多くがシンハラ人になっています。
紅茶研究所の研究者もシンハラ人なので、講師の話をタミール語しかわからない若者に通訳することが必要になります。
黒いカーデガンでジーンズをはいている女性が、通訳になります。
実は、この2023年夏のスリランカ訪問で出会った、この女性こそが、教育プログラムの第一期生だったのです。
彼女の話では、以前はまったく環境に興味がなかったと言うことですが、このプログラムを受講することで環境の大切さを理解し、その後、学校を卒業した後に、このワークショップを開催しているNGOに就職したとのこと。
学業も優秀なため、タミール人ですが、タミール語の他に、シンハラ語と英語が堪能で、その能力を買われて、ワークショップでの通訳役をしているのでした。
更に、この写真に写っている若者(青年)は、同じく教育プログラムの第一期生で、彼も受講して環境に目覚め、今はホートンプレインズ国立公園の事務所に勤務をしています。
ということで、すでにアウトカムが生まれている訳です。
このプログラムは年に数回行われており、1年で200名近くが受講するそうです。
毎年、1週間もの長い間、座学とフィールドで研究者の科学的な根拠に基づく教育を受ける若者が200人もいるというのは凄いことですね。(数年やっているので、すでに延べ1000名が受講済みという計算になります)
日本にも色々頑張ってい人たちはいるのですが、講師となるべき科学者、フィールド学習のできる場所が揃っている、合計1週間もの環境プログラムと言うのは見たことがありません。
スリランカは、政治が混乱し、経済も疲弊していますが、それでも選挙が混乱なく機能し、大統領がちゃんと変わる民主主義の国です。そのベースには、このような、手弁当で若者を教育する意思を持った大人と、その教育プログラムに手を挙げる若者という、しっかりしした意思を持つ人たちと文化があるように思います。
このプログラムも、最初から支援要請があったわけではなく、あくまで農園マネージャとNGOなどが危機感を持ち、自主的に立ち上げたプログラム(農園マネジャーは無給どころが財政支援もしています)の、足りないところだけを相談を受けた形です。
10年ほどスリランカに関わるなかで、色々な場面で自助の精神を見ることできました。こういうところも、スリランカの大きな特徴であり、良さだと思っています。
ちなみに、この日も国立公園でヒョウが出没していたそうなのですが、残念ながら私たちは足跡しか見れませんでした。