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Interview 中村大史(音楽家)

7名のダンサー講師を招き、障がいを持った方々、地域の方々、小さな子どもから大人まで多様な参加者が、深川の街を舞台にダンス映像作品を共創する『LAND FES DIVERSITY 深川 2022』。昨年に引き続き、ダンスの振付に使用される音楽を制作されているのが、音楽家の中村大史さんです。ピアノからアコーディオン、ギター、ブズーキ、マンドリンなど多彩な楽器を操り、ケルト/アイリッシュ系のバンド活動を中心に、舞台への楽曲提供やダンサーとの共演など、幅広いフィールドで活動されている中村さん。その創造力の源と、LAND FESとの関わり、そして『LAND FES DIVERSITY 深川 2022』楽曲制作の秘話についてご紹介します。

中村 大史 / Hirofumi Nakamura
音楽家、作曲家。1985年、北海道生まれ。幼少期より親しんだピアノや、その後出会ったギター、ブズーキ、アコーディオン、マンドリン、バンジョー、ハープ等様々な楽器を用いて、演奏・作曲をする。tricolor, John John Festival, O’Jizo 等のケルト・アイルランド音楽バンドでの国内外の演奏活動、アコーディオンデュオmomo椿* での創作活動、様々なライブサポートや録音参加、演劇・コンテンポラリーダンス・映像の音楽を担当する等、活動は多岐に渡る。東京芸術大学音楽環境創造科卒。

北海道東部の本別町で生まれ、十勝で育った中村さん。音楽家としての原点、アイリッシュ音楽との出会い、そして自己のスタイルを確立するに至るまでのプロセスについて、まずは聞いてみました。

いまに生きる北海道の風景

街の子供達にピアノを教えていた祖母の家で、いろんな子供のピアノレッスンを聞いていたのが、覚えているいちばん古い音楽についての記憶です。母が街のコンサートホールに行くのが好きで、少年時代はそこによく連れていってもらいましたね。十勝はどんな音楽もコンサートホールでやるんですよ。クラシック、バンドもの、コーラスグループまで。ホールで演奏が始まる直前、会場が暗くなって静かになっていくときの感じとか、演奏者が出てきて拍手が始まる空気感みたいなものは、子供心にもよく覚えています。まあ、実際の演奏のときは寝ちゃってたりしたんですけど。部活帰りとかだったんで(笑)。

育った家のあった十勝平野はすごく広大で、日高山脈が北と西に連なっていて、空が広い。大人になって東京に来てから感じたことなんですけど、土地が平らで高い建物があんまりないと、遠くの音がすごくよく聞こえるんですよ。大学に入って東京に出て、初めての夏休みで久しぶりに実家に帰ってきたときに、こんなに遠くの音が聞こえたんだなと改めて気づいて。ずいぶん後になって、tricolorというバンドで初めて地元で演奏したときに、メンバーの中藤さんが「中村くんの地元に来て、中村くんの音楽がちょっとわかった気がする」と言ってくれて。自分で紐解くのはちょっと野暮かもしれませんけど、余韻の長さとか、間の取り方、演奏が始まる前の静けさ、そういうところは育った土地の風土が影響している部分があるのかもしれません。

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