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第二章 意志と選択性 おわりに

主体は、その行為や所有によって統一整合的な〈生活世界〉を形成している。しかし、この〈生活世界〉は、完結したものではなく、つねに外界の影響を受け、また、未来への可能性に開かれている。ここにおいて、主体は、その〈生活世界〉の統一整合性を維持するために、外界の影響に対して、未来への選択を繰り返していかなければならない。しかし、この未来は、現存するものではなく、脈絡を派生していく物事の〈意義〉としてのみ理解することができる。したがって、主体の選択は、未来の選択ではなく、未来への脈絡の選択である。その選択における幸福や災禍としての〈価値基準〉は、文化的に規定されているものもあるが、しかし、希望という形式は、主体の人格の一部となっている。

以上によって、はなはだ簡単ながら、主体の〈生活世界〉の基本構造とその経営の方法があきらかになった。しかし、本章でもしばしば言及したように、このような〈生活世界〉の再調整の必要性は、その内部よりも、他の主体との交渉によって発生することが少なくない。この意味で、主体の〈生活世界〉の経営は、その内部調整だけでなく、その外部交渉をも問題として採り上げなければならない。したがって、次の章では、複数の主体の〈生活世界〉がどのようにして調整されるか、について考察してみたい。そこでは、本論考で提起された多様な所有関係とそのそれぞれの主体の選択の干渉が中心課題となる。

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