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お遍路ウォーキング日記(231:七十七番道隆寺へ)

【2024年8月23日(金曜日) Day 231】

 今日は歩数こそ少ないけど札所七十六番金倉寺を打つ。金倉寺まで来ると善通寺は遠く離れた感じがするがそんなに遠いわけでもない。

 今日は昨日打った札所七十五番善通寺について簡単に書こうと思う。とはいえ善通寺と言えば四国八十八ヶ所の中でも最大のお寺である。そう簡単にまとめられないと思う。

 このお寺は弘法の父、佐伯田公さいきのたぎみによって創建され、弘法が唐から帰って来た後、唐で学んだ青龍寺を自分の生まれ故郷に再現させたと言う。かつては今ほどの大きさではなく、善通寺と弘法の生家である佐伯家の屋敷があった。

 善通寺の名は弘法の父、田公のいみな(死語の呼び名)が善通よしみちだったことから付けられたという説がある。尚、諱というのは生前から用いられるが生きている間は稀に用いられる名前の事。

 山号は五岳山といい、これはこの地方にある五つの山のことをさしている。屏風浦と呼ばれ屏風のように連なる様からこの名が付いたとみられる。先にも紹介した我拝師がはいし山も含まれていてトレッキング愛好家にも人気がある。

 佐伯家の屋敷はまさにここで佐伯真魚まお、後の弘法大師が生まれた場所だったので「誕生院」という名の寺となり、最初は別々の寺だったものがひとつになる。なので山号、院号、寺号を正確にいうと、

五岳山誕生院善通寺

 と呼ばれている。尚、誕生院と善通寺が一つの寺となるのはそのずっと後、明治時代の話である。

 弘法誕生の地ということもあり厚い信仰をうけ多くの寄進を受けて寺は大きくなるが、こんなお寺でも兵火で焼けたことがある。

 とは言えやはり弘法大師の生まれた場所で真言宗三大聖地(善通寺、高野山、東寺)の一つということもあり華々しい寺歴は今に至る。

 明治以降は近くに軍の拠点ができた事もあって今も善通寺市には陸上自衛隊の駐屯地がある。宗教都市としても大きく成長をし、寺の名前がそのまま市の名前にまでなっている。四国札所では観音寺とここ善通寺だけだ(町名は他に数カ所ある)

 今となってはお寺を中心に大きな町となりお寺の付近の路地にはすぐ近くでも商いがあり生活の匂いがする。善通寺はお寺を中心に何世紀にも渡って人が生き続けて来たその息遣いを身近に感じることができる。

 本堂から大師堂へ向かう道すがらの路地を右に外れたところに熊岡菓子店という古い店構えのお店がある。この菓子店で売っている「かたパン」はあまりにも有名。名前の通り本当に硬い焼き菓子だが素朴な味わいがたまらず、善通寺に行けば忘れずに買う。誰もが認める硬さで、不注意に囓ろうとすると歯が欠けてもおかしくないくらいの硬さ。

 おそらくこのかたパンを楽しみに善通寺にやってくる人は相当数いる事だろうし、何度となく善通寺を打っているお遍路さんの間でも楽しみにしている人は自分も含めて相当いるのではないだろうか。

 個人的な思い出をもうひとつ書くとライダー遍路時代、善通寺は三日に一度の「宿泊日」(残りの二日は野宿)にいつも当たっていてここでいつも宿に泊まっていた。

 独りっきりが落ち着くのでビジネスホテルを好んで利用していた。チェックインすると杖を洗う場所がありさすがにお遍路さんの需要の高さとちゃんとそれに応えるホスピタリティを感じたものだ。まず曼荼羅寺か出釈迦寺で買った無花果を冷蔵庫に入れ、風呂に入り衣類を洗濯し、さっぱりしたところで街に買い出しに行く。そしてよく利用したのが駅の近くにあった「山小屋」というらぁ麺のチェーン店だった。

 山小屋は九州を中心に展開されるお店で関東では君津に一店舗しかなかったと思う。それだけ貴重な存在だった。

 ここで食事をした後で今度は琴平へ行く。バイクなのでとにかくフットワークが軽い。琴平の街に入る手前にジョイフルがあり、そこでサラダとドリンクバーをたのむとあとはお札書きをしていた。サラダはとにかく巡礼中は贅沢品だったし、何か食べるのであれはサラダは優先度が高かった。


 こうして善通寺では滅多に食べられない山小屋の昭和むかしらぁ麺を食べた後ジョイフルで思う存分サラダを食べてドリンクバーでお店に残りながら眠たくなるまでお札書き。これが楽しみでもあった。

 そして宿に戻ると冷やしておいた無花果を食べながらPCを開いて明日のシミュレーションをし、眠たくなったら寝てしまう、なんとも贅沢な時間を過ごすことができた。テレビはつけなかったがラジオはよく聴いていた。善通寺の夜ブラでラジオを買った思い出もあった。そのラジオは今でも現役で使っている。

 話を実際のお遍路シミュレーションに戻す。アプリでは善通寺の次の札所七十六番金倉寺も今日打てた。明日は金倉寺について書くつもりだ。今日はこのまま善通寺の夜の思い出に浸りながら寝ることに■

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