変幻✨꒰꒱✨音声配信アプリ③
🐶陽だまりの柴犬🐶
24歳の男性で、柴犬のアイコンにした人の配信によくいくようになった。
名前は、柴犬だ。
声が男性のなかでは高い方で、話すテンポが軽やかだ。
分け隔てなく人に接しているような印象で、陽だまりのような青年だ。
インターネットでの交流も慣れているようで、うさみみに様々なことを教えてくれた。
また、柴犬君は様々なことをうさみみに聞いてきた。
柴犬君は、お話の返し方などが上手で参考になった。
柴犬君自身はコミュ障で、あまり学校には通っていなかったと言っていたが、リア友(リアルの友達)もリスナーとして参加していた。
おすすめの映画や本の紹介などもし合ってみたり、料理の話などもした。
次第に、柴犬君自身の身の上話もするようになってきた。
両親が、中学生の時に離婚して、祖母に身の回りのことをしてもらったこと。
離婚原因は父親の酒癖の悪さと言っていた。
ただ、柴犬くん自身もよく深酒している。
その点はすごくうさみみは気になったが、そのことを指摘は出来なかった。
いつも朗(ほが)らかで、優しい雰囲気な柴犬君だけれども、お酒を飲むと泣き上戸になる。
寂しがり屋さんで、彼女がいないとだめそうな雰囲気なのだ。
聞くところによると、就職をきっかけに別れたようで、引きずっている雰囲気だ。
今は彼女どころか、好きな子もいないとのこと。
大学生の時には、同棲のようなことをしており、朝起きた時にお味噌汁とご飯ができていたことが嬉しかったと話してくれた。
若い男性らしい恋愛と性の話もしてくれたし、意見も求められた。
通常の生活では話しづらいことも、柴犬君とはよく話が出来た。
「うさみみさんも配信を始めてみたら?」
柴犬君から提案された。
柴犬君の監修の元、うさみみも配信を始めることになった。
柴犬くんはうさみみにとっての配信の師匠になった。
初めて配信してみると、柴犬君のすごさを思い知った。
コメントを書き込まれて、それに対して返しているつもりでも会話が成り立っていない、と。
なるほど。
誰がどのコメントを書き込んでいるのかということと、そのコメントに対して、どのように、うさみみが考え、感じたかということを添えて返せということか。
理解した。
うさみみ自体がそのコメントを目視をして、コメントの返答だけしていても、聞いているひとには分からないのだ。
誰がコメントを書いているか、なんと書いているか読み上げる必要があると。
みんながみんなスマホやデバイスに付きっ切りでもないし、画面から目を離して楽しんでるひともいるしな。
コメントが停滞すると、なぜか焦った。
スマホの画面にコメントが埋め尽くされて、どこまで読んだか分からなくなるのだ。
コメントがずっと書き込まれて、流れているほうが楽なのだ。
また、このアプリは配信時間が決まっており、その終了時間も意識しなければならない。
途中で切り上げることも、もちろん出来る。
多くの文書に紛れ込ませると、人は自分の胸の内を打ち明けたくなるのであろうか。
段々と胸の内を打ち明けてくることが増えてきた。
人は秘密を知られたくない生き物だ。
でも、胸にしまい続けることが出来なくなり、少しずつ小出しに、漏れだしてしまうものだと思った。
不思議なもので、リスナーの名前を読み上げ、コメントを全て読み上げながら、自分の見解を話すと喜ばれることに気づいた。
リスナーとしても、人は話したいものだ。
一人一人がコメントしやすいように話をふったり、疑問を投げかけたり。
思わず出た一言には、本音が詰まっていると、うさみみは考えている。
その一言をとくに意識することが出来るのも、音声配信アプリの良さだなと思った。
コメントの履歴も遡ってみることが出来るからだ。
自分の話していた内容など忘れがちになってしまうけれど、コメントは残り続ける。
うさみみも柴犬くんのような陽だまりの空間を作りたいと思った。
*全部で20話あります!オムニバス形式ですが、順に読んでいくのがオススメです!*