ラマナ・マハルシ 不滅の光への旅
1 沈黙の聖者 との出会い
確かな日付は覚えていない。しかしその時の感触は、20年を経た今でも、まざまざと蘇ってくる。肉感的とも言える、至福に満ちた、不思議な、尊い、感覚と共に。
その時生まれて初めて、あの写真を、眼にしたのだった。
読み始めた本の、あるページを開いた瞬間、そこに現れた白髪の男性の顔から、突如として目が離せなくなった。さして質のよくない、コントラストの強すぎる、白黒の写真。しかしそこに映し出された表情は、まるで香り高い美しい花が、ゆっくりとこちらへ向かって打ち開いてくるように、やわらかく、そして、暖かかった。
自分の胸の中からも、何かが美しく開いていくような、そんな不思議な感覚を覚えながら、眼を見開き、私はその写真、そのお顔を見続けた。これまでにそんな経験を、したことはなかった。これ以降も、決してないだろう。そう断言できるほど、強烈で不可思議な、しかしとても心地良い体験だった。
キラキラよく光る眼の、幼子のような表情をしたその初老の男性の名が、南インド 沈黙の聖者 ラマナ・マハルシであることを知った。
それは私の一生涯の、最愛の人に、出会った瞬間だった。
不滅の光への旅は、その時にもう、始まっていたのかも知れない。
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