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データ可視化後のモニタリングの仕方


はじめに

以前の記事でフロント側のマーケティングファネルはBIなりで可視化しておくと便利と書きました。

では実際可視化できたとして、いったいどのようにデータを見るのか。多くの会社ではダッシュボードを作ったは良いけど、お決まりの週次変動や季節変動がわかったらだんだん飽きてきて惰性で数字を報告するだけになりがちです。実際に活用するやり方をこれまでの経験から取り出してみました。

やや期間を長めにしてトレンドを見る

一つ目は、前回の記事にも書きましたが、期間を長めにして長期トレンドを見ることです。

昨日や先週あたりと比べていると変化に気づきにくく、気づいたとしてもそれは足元の活動の結果であったり、たまたま何かイベントがあったためであったりということが多いです。

しかし、例えば2年や3年くらいで引っ張ってみると、思わぬトレンドに気づくことがあります。しかも、自社で何かやったことよりは、市場の変化や構造上の変化であることが多いです。

例えば、アドテク企業で広告impあたりの単価がずっと下がり続けていたり、社内の部署別人数を可視化したら営業の人数が減っていたり。

前者はいろいろと解釈があるデータです。質の悪い媒体にたくさん出稿するようになってしまったのかなとか、技術部門や営業部門と話してみて定性情報を取りに行く必要がありますね。

後者は実際にあった出来事で、どうも売上が伸びない、予算に届かない、というときに、会社の数字をトレンドで出してみたら何のことはない営業の人数が減っていて、一人当たり売上は変わっていなかったのに前線の火力が落ちていたなんてことがありました。新卒や中途を企画部門に配属しすぎたんですね。

相場を知っておく

これは可視化とモニタリングを開始した後に初めにやると良いです。今まで闇に包まれていた事業の構造が可視化されると、それぞれの数字のだいたいの相場が見えてきます。

「あー、この事業の客単価ってこれくらいなんだ」とか、「お客さんはだいたい●日おきに来るんだな」とか。

その上で、前のセクションで書いたように定点観測していると、異常値に気づくことがありますね。

これは事業のモニタリングではなくてずっと昔の話ですが、新聞のスポーツ欄を毎日見ていたら、「なんか毎日2安打以上してる選手がいるなあ」と気づいたことがあります。その選手は、あれよあれよという間にその年「NPB史上初の4割バッターなるか」と騒がれ、最終的に当時の最多安打記録を210安打で塗り替えました。

アセット稼働率を優先して見る

これも以前の記事で少し触れました。中小・ベンチャーによくあるITサービスやコンサル、店舗ビジネスだと、営業スタッフの生産性や稼働率が見るべき指標になるでしょう。お店の場合、席の稼働率や人員配置率なんかも見ておくと良いです。

なぜこういった指標を優先して見るのかというと、「明確に会社の意思で数字を動かしやすいのでリターンが良いから」です。あと、現場では権限がなくて動かせないことが多いですから、本社で見とかなきゃですね。

どういうことかというと、例えばある店舗の席の稼働率がパンパンの場合、少し改装して席を増やせばそれはもうほぼ99%間違いなく売上が増えるわけです。雑居ビルだったら上下の階も借りてみるとか、近くに2号店を出すとか。

こんなに楽で打率の高い意思決定があるでしょうか。同じ予算でまったく新しいエリアに出店するよりよっぽどマシです。

人についてもそうで、スタッフの稼働率の繁閑を見て、ヒマな店舗から忙しい店舗に異動できればそれだけで売上高/人件費が上がります。

「資産運用のパフォーマンスはアセットアロケーション(資産配分)でほぼ決まる」そうですが、同じことが事業にも言えます。カイゼン活動は現場でやります。本社の仕事はアセットアロケーションとカイゼン活動の設計(単価上げたいからお客さんに声かけてね、とか、セットメニュー考えてね、とか)です。

定量と定性のあいだ

次に、定性情報の大切さです。私は基本的に計数管理屋なので数字の信奉者ですが、人の話を聞くのも好きなので、仲のいい店長さんやエリアマネージャーさんの話をよく聞いていました。

こちらは数字でだいたいの様子をつかんでいるので、「最近忙しいでしょ」とか話しかけると「なんでわかるんですか!」とか言いながらいろいろ話してくれます。

数字でおおむね仮説は立てているわけですが、それの裏取りのような形で定性情報を聞きます。「席もう一つ欲しくない?」とか「人足りてる?」とか。

もっと大きなレベルだと、市場の様子も捕まえるときがあります。

美容系の事業にいたとき、スタッフと席の稼働率がかなり高いとあるサービスがありました。店で話を聞くと、「お金持ちのお客さんがスタッフに『お金出すから独立しないか』と言っている」(美容系だとわりとある)、「競合他社からスタッフに引き抜きがかかっている」と。

これは、製品ライフサイクルでいうと成長期、一時期のタピオカ屋みたいに「出せば儲かる」状態になっているのではと思い、当時コロナ禍で青息吐息の中、手持ちの現金を投資して出店攻勢をかけたら大当たりしてキャッシュマシーンになってくれたことがあります。あれは気持ち良かった。

現場とも数字で話して仲間を作る

やや番外編になりますが、現場にもなるべく数字を見せて話すと良いです。

数字だけだととっつきにくいので、「これはつまり・・・」とか説明を交えながらですね。

そうすると、中に勘のいい人がいて、数字に目覚める人が出てきます。

今でも覚えているのは、専門学校卒のネイリストさんで、PLの説明をして何年分かの数字を渡してあげたら、翌月に「計算してみたら、一人●万円売り上げないと黒字にならないんですね」と言ってきて、そこからグイグイ数字が伸びて、事業が黒字化したことですね。あれは本当に感動しました。

それこそ、私の好きなアセットアロケーションも何も変えていなくて、コスト構造もそのままですし、本当に「目標がはっきりして気合が入った」だけです。それで数字って伸びるんだなと。

他にも、生産性と稼働率のダッシュボードを作って公開したらそれをずっと見ていて、時間当たりの売上高を見ながらメニューの施術時間と料金を調整したり、お店の稼働率が上がってきたら値上げをするAIみたいなエリアマネージャーさんもいました。

ストリートスマートってこういうことなんですねえ。

まとめ

以上、いろいろと書きましたが、事業の構造を頭に入れて、相場をつかみながら定点観測し、定性情報も取ってくると意思決定の精度は上がるんじゃないかなという話でした。

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