
Photo by
sinh11
『脂肪と人類』Fatは常に悪いものだったのか
珍妙なタイトルの本書、どういう本かというと、人間が脂肪をどうやって食べてきたかという本です。
動物の骨髄をすすっていた狩猟採集の時期から始まり、豚や牛の脂肪を貴重なエネルギー源かつ調味料として使っていた中世近世、健康を害するとして攻撃された現代にいたるまで、脂肪と人類の歴史を描いています。
本書は一貫して脂肪には肯定的で、脂肪が忌み嫌われて食卓から排斥されたことには否定的です。
確かに、栄養素としては体を作るために必要であり、飢餓状態に耐えるには適しています。
味付けの面から言っても、脂肪の少ない鶏肉だけで作った料理はどうしてもパンチに欠けるところがあり、コクを求めると豚肉か牛肉が欲しくなるところです。
途中、ココナッツオイルがアメリカに輸入されようとしたとき、アメリカの大豆業界がココナッツオイルを集中攻撃して排斥してしまう描写があり、世の中に出回っている健康情報にはこのようなバイアスがかかっていることもあるのだなと知りました。
全体的にエピソードの羅列のようでストーリーに欠ける部分はあるのですが、健康オタクブームが来る前に人類が脂肪をどのように扱っていたのか、どのような脂肪食文化があったのかを知ることができる興味深い一冊です。