具体的なカラーマネジメントの手法について書く

これ書くのすっげえ時間かかかるので都度加筆します。

カラーマネジメントと聞くと非常に響きがいいですが、まず前提としてカラーマネジメントは動詞であってシステムの名前ではありません。
それを理解した上で体系的に理解していく必要があるかと思います。
具体的に言うと、画像と動画では全くカラーマネジメントの方法が異なります。画像にはカラープロファイルを埋め込むことができますが、動画にはカラープロファイルを埋め込むことができないからです。
写真、映像、印刷、CG、これらはまあまあバラバラの手段でカラーマネジメントが行われています。その理解の一助になればと思います。


カラープロファイルとは?

主に画像で用いられる色域の情報データです。マックに組み込まれて一般化したため、ICCやICCプロファイルと呼ばれることが多いです。画像に埋め込むことでその画像の色域を示したり、最低限の色変化で異なる色域へ変換することを可能にしたりします。
カラープロファイルは大きく入力と汎用と出力の3つに分けることができると思います(捉え方次第かも)
カラーマネジメントとカラーマッチング|濃度計のツボ|楽しく学べる知恵袋|コニカミノルタ
これを読めば話が早いのですが、例えばR70G30B70という色があったとして、それはsRGBとadobeRGBでは色味が異なります。
なぜなら、プロファイルの色域をパソコンが扱いやすい各色256階調に分けただけだからです。
真に正しい色の数値はLabやXYで示されますが、これはパソコンにとって扱いにくい数値となります。これを解消するために、R70G30B70がLabでどういう数値になるかというのがICCプロファイルに格納されています。だからプロファイルの変換というものが可能なのです。

  • 入力プロファイル
    カメラやスキャナなど入力機器のプロファイルです。
    IT8やカラーチェッカー(CC)などの画像化し、i1 profilerなどのソフトウェアを使用することで、入力機器の色域をプロファイル化することができます。基本的にはRGBです。
    これを作成することで、同一環境下での入力機器の個体差による色差や、経年変化による色差の修正や、チャートに準じた色変換をすることができます。
    特にスキャナーなどは作業前に必ずit8かカラーチェッカーSGをスキャンし、プロファイルを作成することをお勧めします。
    また、入力プロファイルを使用した変換はトーンや彩度に飽和や崩壊をもたらすことがあります。
    経験上、スキャナの場合は誤差やチャートの色ズレが激しいのでメリットがありますが、カメラの場合はさほど画像と実物でチャートの色が激しくズレる訳でもないので、異なるメーカーのカメラの色味をマッチングさせるなどの理由がない限りは、カメラで入力プロファイルを運用するメリットは感じません。

  • 汎用プロファイル
    sRGB、adobeRGB、prophotoRGB、japancolor2011、P3など、その画像の色域を示す汎用的なプロファイルを指します。RGBだったりCMYKだったりします。ある意味出力プロファイルでもあるのですが、もはや便利に使われすぎてそういう感じでもないです。
    これらのプロファイルは極端に色域が広かったり狭かったりしますが、それは用途に合わせて利便性を重視した結果です。大きな理由がなければ、最終的にはこの状態のプロファイルに変換して画像を保管することになるかと思います。
    国内で最も信頼されて使用されているのはadobeRGBとjapancolor2011かと思います。

  • 出力プロファイル
    プリンター、印刷機、プロジェクター、ディスプレイなど、画像を出力する機器の色域を示すプロファイルです。RGBだったりCMYKだったりします。
    この出力プロファイルを使用することで想定した規格に合わせた色味で印刷したり、画面に表示したりできるわけです。
    ディスプレイであれば、想定する色空間と個体の組み合わせごとに作成します。
    プリンターであれば、プリンタと紙種の組み合わせごとに作成するのが一般的です。

  • カラーチャート
    指標となるカラーパッチや画像がレイアウトされたものをカラーチャートと言ます。
    ただ評価や画像処理するためのものや、プロファイルを作成するためのものがあります。
    入力用カラーチャート
    it8
    安いが手に入れるのが面倒。ちょっと古典的だがパッチ数まあまあ多くプロファイル作成には便利。ただプロファイル作成ソフトがバンドルされてないので別途必要。フィルムスキャナ用の透過チャートはほぼこれ一択かと思われる。
    スタンダードサイズがまあまあデカくて写し込むには不便だし、画処理の指標にも使いにくい。
    Q-13
    安いしまあまあ手に入る。印刷用のチャートなので古典的過ぎて無意味だが、こいつの20段グレーチャートは画処理の色転び把握にかなり使える。
    カラーチェッカー(CC)
    安いし手に入れやすいがプロファイルを作るには色数が少なすぎる。
    画処理の指標にはとても便利。
    カラーチェッカーSG(CCSG)
    高いが手に入れやすく、作成したプロファイルの品質も高い。

    出力用カラーチャート
    プロファイラーで自動生成することが増えたので、規格のものを使う機会は減ってきてます。あえて挙げるなら、
    RGBプリンタはTC9.18
    CMYKプリンタはECI2002
    が使い勝手がいい。

具体的な運用方法

プロファイルについて理解はできたけど、じゃあどうやってどんなソフトで運用する訳??ということになるかと思うので、フォトショップとi1profilerを使用したマネジメントを提示します。

画像の色を統一する


スキャナとカメラを使って、2人がかりで複写を同時進行した場合

  1. 作業開始直前にit8をスキャン、カメラでit8を撮影
    作業中も常にCCを映し込ませる。

  2. it8の製造メーカーのサイトで、it8記載のシリアルナンバーと同じリファレンスデータをダウンロード(リファレンスとは、チャートの各色パッチの数値が記載されたもの)

  3. i1プロファイラーのスキャナプロファイル作成フローにチャート画像と適合するリファレンスデータを読み込ませ、カメラ用プロファイルとスキャナ用プロファイルを作成する
    シルバーファストなどを用いてもいい。

  4. 作成したプロファイルをインストール(マックならプロファイルのフォルダに格納しwinならダブルクリック)

  5. スキャナでスキャンした画像に、フォトショップのバッチでプロファイル変換をかける。
    画像にプロファイルが埋め込まれていなければ、作成したプロファイルを指定し、adobeRGBなどの汎用プロファイルにAdobe方式相対的黒点補正ディザにチェックで変換。
    埋め込まれていればそのまま作成したプロファイルにAdobe方式相対的黒点補正ディザにチェックで変換し、再度汎用プロファイルに変換。

  6. 写し込んだCCに応じた調整レイヤーを作成し、全ての画像に重ねる。色変換のバッチに組み込んでおくとスムーズ。

  7. 以上のフローで、カラーチャートとソフトウェアを用いて、異なる機器の色をマッチングさせつつ汎用プロファイルに変換することができた。あとは目的に応じて印刷用に色調整したり、ウェブ用に調整したりする。

画面と印刷の色味を合わせる


  1. 色評価環境の構築
    まず、照明を買います。印刷学会やJAGATやジャパンカラーが定める光の色、演色性、明度のもの。
    具体的にはD 50=約5000KかつD50のXY値から乖離しないものであり、明るさが2000lxになる照明。
    エコリカなど直管タイプの高演色LEDをコンセントに繋げたり、京セラの生き物電球を使う、カラーメーターと色温度GM補正可能なLEDを組み合わせる、色味台を買うなど、やりかたはいくつかある。
    また、壁や床の色もニュートラルであるほうが良い。

  2. キャリブレーション環境の構築
    ハードウェアキャリブレーションモニターとキャリブレーションセンサーとキャリブレーションソフトを用意する。

    モニター
    是非一枚だけでもEIZO買ってください。ディスプレイ側の設定で色域変えたらOS上のプロファイルも追従する素晴らしい機能を持ち、ムラの少ない素晴らしい製品。

    センサー
    CCstudioかi1pro3 publishくらいしか手っ取り早い選択肢がない。
    最高のものを揃える気があるならi1 isisとCC Display Pro HLを買ってください。

    キャリブレーションソフトウェア
    色々選択肢あるけど、買うには高すぎるのでセンサーにバンドルされているものを使うのが良い。
    例えばエプソンの5V2や1VLはRGBプリンターと呼ばれるが、これをキャリブレーションするにはCCstudioやi1pro publishにバンドルされているソフトが必要。
    余談だがCMYKプリンターとはすなわちオフセット印刷機やそれに準ずるプリンタを指す。

  3. 標準的なキャリブレーション
    ディスプレイ
    日本印刷学会やJAGATに従ってキャリブレーションする。
    すなわちEIZOの場合、50D 80cd ガンマ2.2グレイバランス重視 色域ネイティブである。
    画面の色温度は環境光と統一し、紙と見比べて違和感がない明るさ(80-120cd)まで下げるのが一般的。
    パッチは最も細かい設定でとって、検証でデルタEが0.2を超えない結果が出るまで繰り返す。
    キャリブレーション周期は半月に一回。

    RGBプリンター
    用紙メーカーが配布しているプロファイルでカラーチャートやテスト画像を出力して、問題がなければそれで良い。
    マイナーな紙やプリンターであったり、公式プロファイルに不満があればキャリブレーションを行う。
    この際、事前に用紙設定はよく吟味し、ノズルチェックやグレーグラデーションのRGB画像を出力したりして、プリンタに問題がないかどうかを良く確かめておくこと。
    キャリブレーションソフトでカラーチャートを作成し、プリンタドライバの色補正をオフにして印刷する。ソフトで作成したカラーチャート画像にはプロファイルが埋め込まれていないが、そのままでOK
    パッチ数を選ぶ場合は3000以下でよい。パッチ数が多すぎてもどこかでトーンジャンプが起こって破綻する。
    自動測色機があれば楽だが、なければ手でセンサーを動かして測るしかなく、自動的にパッチ数もかなり少なくなる。
    具体的なパッチ数はhttps://forum.luminous-landscape.com/index.php?topic=118987.0を参考。多分815パッチとかビジュアルチャートに落ち着く。

    ただ、ここまで調整しても色味が合うのはプレーンな紙だけであることがほとんど。

  4. 実際のプリント作業
    ソフトウェアの環境設定
    プリント作業は兎にも角にもプリントに使用するソフトのカラーマネジメント設定が大事。
    https://iwashi.org/archives/4024
    アドビ製品に関しては基本的にこのサイトが詳しくて正しいので、この方の言うとおりにしてください。
    また、アドビ以外の製品を使う場合にもこの考え方がベースになります。
    色調補正
    いい感じに補正してください。
    フォトショップやLightroomにはプリント時の色味を再現する機能があるので、それを道筋にするのも手。
    拡大縮小や解像度の変更はインク密度の変化で色味が微妙に変わってしまうので、ころころ変更するのはあまりおすすめしない。
    一般的に大きくなればなるほど濃度が薄く感じると言われる。

    また、Photoshopで画像を編集する場合、ざっくり色調整した画像をプリントプロファイルに変換して微調整するのもアリ。
    ただ、特定のプリンタと用紙の組み合わせでしかプリントできなくなるので、一長一短。オフセットの時はよくそうする。
    RGBプリンタに関しては基本的に相対でいいかと思うが、ぜひ知覚と相対で比べて良い方を選んでみてほしい。

    プリント時の設定
    汎用プロファイル画像をプリントする場合
    プリントのフローで出力プロファイルへの変換が必要。
    Photoshopで色管理してプロファイルを選ぶ。
    プリンタドライバ内の用紙設定等はプロファイル作成時のものや指定のものを選び、色補正はオフにする。
    色域の広いプリンターと紙の組み合わせは、基本的に色味を維持する相対変換が定石。相対で不満があれば知覚を使用するか、両方試して良い方を選ぶべき。
    知覚変換は広い色域から狭い色域へ変換する際に階調を維持するために使うと言われているが、これはすこし注意したい。プロファイルは作成時に知覚変換時の彩度や中間色の方向性を設定することができるので、知覚変換にどんな味付けがされているかというのは一定のものではない。両方試すことを薦めるのはそのため。
    出力プロファイルに変換済みの画像をプリントする場合
    Photoshopならプリンターで色管理にして、実質機能しないが相対変換。プリンタドライバ内の用紙設定等はプロファイル作成時のものや指定のものを選び、色補正はオフにする。

    ディスプレイとプリントの色味が合わない時のトラブルシューティング
    ディスプレイプロファイルを修正する
    EIZOの場合、紙とプリンターの組み合わせごとにディスプレイのプロファイルを作成できるので、多用する紙はその機能で追い込んでおくのがおすすめ。
    画面上で印刷結果を再現するような調整レイヤーを作成する
    プリントとディスプレイの色が同じになるような調整レイヤーを作成して、プリント時にその調整レイヤーだけオフにするとやりやすいことがある。そうでないときもあります。



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