
読書感想文 2022
2022.02
『落語―哲学』
-中村 昇-
落語の噺を哲学観点から分解する、という発想が興味深く、手に取った本だった。
2022.04
『中原中也 沈黙の音楽』
-佐々木 幹郎-
私の好きな詩人中原中也についての本。中原中也の詩の解説と彼の生活史との関連がとても分かりやすくまとまっており、詩集と合わせてまた読みたいと思っている。
「歩く」というのは、京都時代以降の中也にとって、たんなる散歩ではなく、友人に会いに行くことであり、そこで詩や文学について語ることであった。路上を歩く、ということも含めて、それが彼の精神のリズムになっていたということである。他人と会い、論争をし、喧嘩をし、気に入った人間に出会うと、その人物が住んでいる家の近くに引っ越しをする。毎日でも話し合いたいからである。
作者は、自らの詩篇を誤読する自由を持っている。いや、詩集が生まれたとき、誰よりも最初に誤読の自由を享受するのが作者であると言えるだろう。そのことによって作者は、その詩集の最初の読者になる。
2022.07
『心淋し川』
-西條 奈加-
時代設定が江戸ということで、落語好きとしては馴染みやすい世界観であった。
「おれの弱気もおめえの勝気も、世間さまじゃ疎まれる。ここはそういうはみ出し者ばかりが吹き溜まる。世の中って海を上手に泳げないまま流されてきた。灰汁が強かったり面倒な者もいるが、少なくともあたりまえを楯に、難癖をつけるような真似はしねえ」
2022.07
『ニワトリ ―愛を独り占めにした鳥―』
-遠藤 秀紀-
ここ数年で一番影響を受けた本といっても過言ではないかもしれない。ニワトリは身近な動物の一種だ。身近すぎて”空気化”してしまっている。そんなニワトリの魅力についてこれでもかと筆者の先生が語ってくれている。
文化と農の営みとして長く培ってきた家畜の標本を、博物館は大量に蓄積し、未来へ引き継がなくてはならない。だが、そうした学問の活動に対し、不要不急であり税金の無駄遣いだという暴論が日本ではどこからか湧いてくる。九〇年代からの構造改革に痛めつけられ、自治体の博物館などは、学問や文化を進めるところというよりは、催事場として切符を売っていればよいと命じられる風潮が一般化した。博物館の成功の尺度を、遊園地やエンターテインメントパークと混同する実に愚昧な行為だ。
ただ、このオールドイングリッシュゲームと数多のアジアの闘鶏用品種とを見比べるとき、誰もが気づくことだろう。品種の意味を語ることは、心のエネルギーの文化間の違いにふれることなのだ。それは、ときに死生観や生命観の相違を比較することにまでつながっている。
2022.08
『SQLアンチパターン』
-Bill Karwin、和田 卓人、和田 省二、児島 修-
普通にお勉強。次に挙げる引用箇所がとても示唆に富んでいて好き。
21.5.3 最も重要な問題
この章では、疑似キー列の番号を再割り当てすることの問題点と、それを回避するための解決策について学びました。しかし、もう1つ、解決すべき大きな問題が残っています。それは、疑似キーの欠番を埋めろという上司からの要求を、どうやって断るのかという問題です。これは技術ではなく、コミュニケーションの問題です。とはいえ、データベースのデータの整合性を守るために、あなたは「上司を管理する」必要があります。
・技術について説明する
(中略)
・コストの見積もりを提示する
(中略)
・自然キー(ナチュラルキー)を使用する
(後略)
2022.09
『同志少女よ、敵を撃て』
-逢坂 冬馬-
豊島晋作さんのロシア情勢解説のなかで紹介されていたことが、購入のきっかけだった。白熱の冒険小説だった。
2022.10
『羊皮紙に眠る文字たち』
-黒田 龍之介-
ウクライナ語・ロシア語を中心にスラヴ諸語について歴史的背景やその研究方法を学べる本。
2022.11
『掃除機探偵の推理と冒険』
-そえだ 信-
ここから3作品は『同士少女よ、敵を撃て』に続いてアガサ・クリスティー賞を受賞した作品として購入。
斬新な設定、読みやすい文体、かつ緊迫したシチュエーションでいい作品だった。
2022.12
『ヴェルサイユ宮の聖殺人』
-宮園 ありあ-
舞台がフランスとその王朝ということで、その世界観に馴染むのに時間がかかった(固有名詞等々)。しかし、慣れればそこからはキャラクターに愛着が沸き、ミステリーとして楽しく読むことができた。
2022.12
『そして、よみがえる世界』
-西式 豊-
こちらは『ヴェルサイユ宮の聖殺人』とは対照的に、脳科学とか、仮想現実とか、そういった世界観設定は馴染みがある分野だったので、入り込みやすかった。前半モヤがかかったような状況から、後半一気に謎が明かされていくシーンは激アツ。
激アツなので、人におすすめしたいのだが犯人の心理描写がグロテスク過ぎて、僕自身読み返すのをためらうレベルなので、読まれる際はご注意を。