ホラーに挑む2022 第9回:映画『呪怨』(ビデオ版) 感想と考察 ~人はなぜ恐怖するのか~

リング』と並ぶJホラーの巨頭『呪怨』を初めて観ての感想です。
とりあえず、めちゃくちゃ怖い

2000年にVシネマ(劇場公開されないビデオ用映画)として作られたという、この初代『呪怨』は作りだけ見ればかなりチープ。CGはほとんどなく、特殊メイクのクオリティも決して高くはありません。

そんな『呪怨』が怖くて印象に残るのはなぜか。

1つはやはり『呪怨』の代名詞である伽椰子と俊雄という2人の霊のビジュアルでしょうが、これについてはここで改めて語るまでもないでしょうから割愛します。

もう1つの『呪怨』の特徴はストーリーの作りにあると思います。この映画のストーリーは時系列通りに進むのではなく、特定の人物に焦点を当てた短いエピソードが、時系列を前後しながら少しずつ紡がれていくというスタイルになっています。

特に1つ目のエピソードと2つ目のエピソードの間には明らかな空白があり、2つ目のエピソードのオチに来るまでエピソード間のハッキリとした繋がりは見えません。2つ目のエピソードでは何か怖いことが発生しているのですが、それが何なのか、1つ目のエピソードとどう繋がっているのかが分からない。そして最後に悲劇が発生し、ネタばらしが多少行われるという仕掛けがあります。

さて突然ですが、人が暗い夜道を恐怖するのはなぜだと思いますか?危険に襲われても見えないから?何が起こるか分からないから?近くに誰もいないと心細くなるから?どれも当たってはいますが、完全な解答ではありません。

僕は、人が暗い夜道を恐怖するのはそこに「何か」があると想像を膨らませてしまうからだと思います。人によって想像する対象は違うと思います。ある人は通り魔を、ある人は幽霊を。確かに暗い夜道は現実的に危ないものではありますが、その恐怖を増大させるのは人間の想像力ではないでしょうか

映画『呪怨』の恐ろしさは、この人間の想像力に働きかけるところにあるのです。
例えばエピソード間の繋がりが分からないので、その間を想像しなければならないとか。どうやら悲劇が起きたらしいのだが、それがどのようなものか分からないので想像しなければならないとか。

エピソード同士の繋がりを一気に示さず、敢えてエピソード間に間隙を作って情報を小出しにすることで、観る人に想像を余儀なくさせる。これが『呪怨』の恐怖の最大の要因だと思います。

ストーリーの内容自体にも、胸糞悪い過去が明かされて人間の怖さを感じさせられるなど、日常に近い場で繰り広げられるからこその恐怖というポイントもありますが、まだ観たことが無い方にはネタバレ無しで観て欲しいので、これも詳細は割愛。

ともかく、この企画が始まって以来観た9本の映画の中ではぶっちぎりで1番怖い映画でした。記事を書きながらもう一度怖くなっているほどです。マジで怖い……。

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