ホラーに挑む2022 第10回:映画『ゲット・アウト』と『アス』感想
観てから感想書くまでにそこそこ間が空いてしまったのですが、今回はジョーダン・ピール監督の2作品『ゲット・アウト』と『アス』の感想です。
まずは『ゲット・アウト』の話から。
ホラーが苦手なのを克服するために当企画を始めたホラー苦手人間な僕ですが(第1回参照)、『ゲット・アウト』はそこまで怖く感じませんでした。この映画でそこまでビビらずに済んだ要因として、ジャンプスケア(急に大きな音が鳴って何か起こる演出)がほぼ無いという点が挙げられます。これは非常にありがたい。
ではこの映画の怖い要素はどこにあるかといえば、『呪怨』と同じくそのストーリー性にあるのだと思います。
黒人の主人公が訪れた、何やら不気味な白人の家族パーティー。黒人の使用人の様子など、明らかに不審な点があるのだが、それが何かはハッキリ示されないという不気味な空気。
この映画も一体何が起こっているのか、観る人に想像させることによって怖さを生み出しているのではないでしょうか。
そこまで怖くは無かった『ゲット・アウト』ですが、話がどういう方向に転がっていくか分からない面白さはあり、1本の映画として楽しむことができました。後の展開のヒントが随所に散りばめられているため、ストーリーが後半に進んでいくと、パズルのピースがハマるような気持ち良さが得られます。
これに対し『アス』はストーリー展開が雑な作品。ストーリー上の基本的な設定についてすらツッコミたくなる点がたくさんあり、物語上の展開にも気になる矛盾が何個もあります。
さらにオチについても、露骨なヒントを何度も見せられるせいで物語の中盤くらいには展開が読めてしまい、何ら意外性がありません。
その代わり『アス』はアクション面で怖さを与えてくれる作品です。ジャンプスケアこそそんなに無いものの、敵がどんな手で襲ってくるか分からない恐怖はあり、怖さでいえば『ゲット・アウト』よりも上でした。
それでもやはり矛盾の多いストーリーと中盤からの風呂敷の広げっぷりが気になってしまい、『ゲット・アウト』ほどには楽しめなかった作品です。
ジョーダン・ピール作品には風刺映画としての側面もあります。『ゲット・アウト』は分かりやすく人種差別問題を扱っており、『アス』は貧富の差を皮肉っています。
こういった面を考えると、ジョーダン・ピール作品はアメリカ人が観るのと、日本人や他の文化圏の人間が観るのとではまた感じ方が大きく異なるのだろうとは思わされました。