見出し画像

読んで観た気になる映画館#2 『哀れなるものたち』

【あらすじ】

舞台はイギリス。ベラ(エマ・ストーン)は見た目は美しい大人だが頭は幼児のまま。フランケンシュタインのような容姿の天才外科医ゴッド(ウィレム・デフォー)と一緒に大きなお屋敷でひっそり暮らしている。

ある日、教授でもある博士の男性生徒の一人マックス(ラミー・ユセフ)が、助手としてベラの行動の記録係としてやって来る。ベラの美しさと天真爛漫さに魅了されて行くマックス。

ベラとゴッドと共に時間を過ごして行く中、マックスはある衝撃の事実を知らされる。実は、ベラはかつて身籠った状態で川へと飛び降り、自ら命を落とし、その死体を偶然発見したゴッドが、その遺体を家へ持ち帰り、赤ん坊を取り出し、その脳みそをベラに移植し蘇生した。

ゴッドはマックスにベラとの結婚を提案する。快諾するマックス。まるで赤ん坊のようだったベラは少しずつ言葉を覚え、だんだんと成長して行く。そして性へも目覚めて行く。外の世界への興味も強くなる。

マックスとの結婚に向け、ゴッドは法的書類を準備する。その仕事を委託した男ダンカン(マーク・ラファロ)が書類を持って家にやって来るが、書面の契約内容から、ベラが余程特別な存在なのだと、彼女に興味を抱く。

ダンカンは彼女を見ようとこっそり窓からベラの部屋に侵入し、その容姿に惹かれる。ダンカンはベラにリスボンへの旅を持ちかける。

ゴッドとの生活で思うように外に出してもらえないベラは、ダンカンの誘惑に乗る。そしてゴッドに、ダンカンとリスボンへ行くと伝える。当然反対するゴッドだが、結婚前の一時的な旅行だということで、結局許す。

ダンカンとの性交渉に明け暮れるリスボンでの毎日。この性交渉を基軸に、ベラの世界は食べ物、お酒、見知らぬ人々との交流と、彼女の世界はどんどん広がって行く。

リスボンを後にした二人は船旅で今度はギリシャを目指す。

船上でも相変わらず性欲に溺れる二人だが、船で出会った老婦人と連れの黒人男性の影響から、ベラは読書や独学に興味が湧いてくる。それによって、ダンカンとの関係が少しギクシャクし始める。

ほぼ「性」に限定されていたベラの興味が別のことに向き始めたことから、ダンカンはギャンブルに走ってしまう。その間ベラは黒人男性に、丁度停泊していた豪華客船の外の街で起こっている貧困を目の当たりにさせられる。

その光景に居ても立っても居られないベラは、部屋に戻ると、たまたまギャンブルで大勝ちしたダンカンが酔い潰れて、大量の現金がばら撒かれたベッドで眠っているのを見つける。その現金をかき集め、外の恵まれない人々へと、大金を船員に託すベラ。

酔いから覚めたダンカン。お金が無くなっていることに気づく。一文無しになったダンカンとベラは、支払い不能として、船から下ろされてしまいパリへ。

無一文になり宿にも宿泊できず、ベラを罵り続けるダンカン。一方、お金を手に入れるべく、街を歩き回るベラ。そして、ある売春宿の前で、女主人に仕事を勧められる。性交渉してお金が貰えるなんて何て良い仕事だろうと、そこで働き、早速お金を稼ぐ。

稼いだお金で食べ物を買い、ベラはダンカンにも分け与える。しかし、その食料が売春により得られたものだと知ると、ダンカンは彼女を軽蔑し、再び罵り始める。

ベラは、思い出したように、出発前にゴッドが持たせてくれた非常時のお金を取り出し、これでイギリスへ戻ろうと提案する。しかし、ダンカンはそのお金を全額奪い何処かへ行ってしまう。

行き場のないベラは、また売春宿へ戻り、そこで正式に雇い入れてもらうことにする。

この頃、ベラはすでに脳みそも大人の女性になっており、政治集会へ参加したり、医学の勉強を始める。

一方、イギリスのゴッド達は、ベラが居なくなった寂しさから抜けられずにいた。ゴッドには大きな悪性腫瘍が見つかり、体も弱っていた。

ゴッドが亡くなる前に、もう一度ベラに合わせてあげたいマックスは、イギリスに戻っていたダンカンに無理矢理ベラの居場所を聞き出し、ベラに戻って来るよう連絡する。

イギリスへ戻るベラ。そしてそこで初めて、自分は元々はベラではなく、作り替えられた人間だという事実を知らされる。悍ましい手術をしたゴッドと、その事実を知りながらもベラに教えなかったマックスへの葛藤はあるものの、結局、ベラは予定通りマックスと結婚することに。

結婚式当日、幸せに包まれた式の最中、見知らぬ軍服を着た男、アルフィー(クリストファー・アボット)が乱入して来る。アルフィーはベラを「ヴィクトリア」と呼び、彼女は自分の妻で今まで探し回っていたと言う。

その男を見つけて来たのは、やはりダンカン。まだまだベラへの怒りは収まっていなかった。アルフィーの話を聞き、ベラはマックスとの結婚はやめ、アルフィーの元に戻る事を決意する。

アルフィーの家は、執事やメイドのいる立派な大邸宅なのだが、何となく様子がおかしいことにベラは気づく。よくよく観察すると、アルフィーはメイドや執事に四六時中嫌がらせをして、それを何よりの楽しみとしている。

何故かつての自分ヴィクトリアが、身籠りながらも自ら命を絶ったのかを理解したベラ。やはりこの家を出たいとアルフィーに伝えるが、当然出してもらえない。

そして偶然、アルフィーが、家を訪問していた医者に、ベラの性器を切り取らせる手術を依頼しているのを聞いてしまう。

ベラを眠らせて手術しようと、クロロフォルム入りのカクテルを勧めてくるアルフィー。無理矢理飲ませようと、片手に銃を持って脅してくる。

ベラは隙を見て、カクテルをアルフィーの顔にかけ、銃を奪い、彼の足を撃ち抜く。ようやく家に戻ったベラ。そして最後に、たくさん冒険したけれど、ここが自分にとって一番幸せな場所なのだと気づく。

【筆者感想】

まず、美術や衣装が目を見張るほどに美しい。私して、エマ・ストーンの少女から大人へと成長する過程の細やかな演技が素晴らしいとしか言いようがない。映画冒頭では、当時35歳だったとは到底思えない少女っぽい瑞々しさが溢れ出ている。

エマ・ストーン演じるベラ・バックスターは、劇中での性交渉シーンがかなり多く、この作品は18禁。だが、不思議と気持ち悪さは無い。

「性」というものが大々的なテーマだと思うが、そこから人間が生きるとは一体どういうことなのか?真の幸福とは何か?が見えてくる作品。この作品を観て強く感じたのが、人間は何が何でも生きて幸福になろうとする生き物であるということ。

この作品の一番最初のシーンは、ベラになる前のヴィクトリアが橋から飛び降りて、自ら命を落とすところから始まるが、このとても悲しい行動ですら、彼女なりの、不幸から脱出して幸せを勝ち取る手段であり、現実ではあり得ないけれど、きっと彼女の潜在意識の中にあった生まれ変わってでも絶対に幸せになってやるんだという気持ちが、ゴッドという天才外科医との出会いに繋がったのだと思う。

そしてゴッドの手術によって奇跡的に新たにベラという人間に生まれ変わったヴィクトリア。彼女の行動は、もし一人の人間が世間的な常識やルールに囚われることなく、教育というバイアス無しに、100%自分の欲望に従って生きたなら、こう生きるのは自然なことなのかもしれないと思う。

生きる為に娼婦になって、本人はそれを不幸だとも何とも思わず、とても楽しんで椅子。世間一般的に娼婦になるというのは良くない事だけれど、それを自分が嫌々ながらではなく望んでやったのかが、もはや大事なのかもしれない。

結局ベラの選択は正しく、自分の欲望に従って生きた結果、最終的に彼女は幸せに辿り着いている。彼女の行動は一つのメッセージで、自分がやりたいと思った道に進むのが一番の正解であり、その先に本当の幸福が待っている。

そして、ベラは家の外にはもっと素晴らしい世界が待っているに違いないと、自分がまだ体験したことのない感動や幸福を探し求めて旅に出たけれども、結局自分が幸せを感じる場所や自分の事を本当に愛してくれる人は、ずっと自分の一番近くにいた。まるで童話「青い鳥」のようなエンディングだが、私たちの生活に置いてもそうで、本当に大切なものはきっといつでも自分の隣にある。

まだこの作品をご覧になっていない方、アマゾンよりレンタル可能です↓

https://amzn.to/3Xnu1wu

因みに、原作はアラスター・グレイさんの「哀れなるものたち」だそうです↓

https://amzn.to/3BbzIpD

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?