津軽海峡をはさんで(2022.10.14-17)②
翌日もいい天気!ホテルの朝食がものすごく豪華で、朝から日本酒をひっかけたいようなメニュー。ホッケの刺身というのを初めて食べた。
土曜の朝なので、これから仕事っぽい人は皆無。少し余裕を持って宿を出て、市場の方まで散歩してから市電に乗って仕事へ。
その日は函館ドックで屋外イベントの出店だったのだが、仕事をしている場所から大股5歩くらいで海で、すごい出張だな、、、と思ったものだ。
クライアントである北海道支店の方々がみな和気藹々と優しく、休憩時に有名なスイーツ屋さんのチョコを車でひとっ走りして買ってきてお裾分けしてくれたり、終わった後もなぜか塩辛屋さんに誘って下さってあり得ない量の試食を一緒にいただきビールをおごってくれた。
ちょっと何しに来たのかわからなくて、この日も実質半分休みくらいの体感だった。
みなさんと別れ、わたしは函館でもう1泊。
マークしていた飲み屋があったので通りがかってみたのだけれどピンとこず、「どこでもいいから飲みたい」と思うほど元気でもなかったので五稜郭近くの有名なラーメン屋さんでご飯を済ませる。そこでビールは飲んだけれど…!
以前函館に来た時と決定的に違うこの感覚、なんだろうと思ったら、今のわたしは『ゴールデンカムイ』の五稜郭での戦いを読んだ後なのだった。道理でソワソワすると思った。
今日のホテルは安宿なのでユニットバスしかついておらず、1日の締めに温泉へと向かう。
行き先は湯の川温泉…ではなく、市電を逆方向に乗っていった終点の谷地頭温泉。普通観光客は湯の川に行くと思うのだが、写真で見てみた外観の気取っていない感じがなんとも良さそうで、谷地頭に行ってみることにした。
そしてここが、まあ良い温泉だったこと!九州をはじめとして旅行が多いこと、それから登山をしていることから人より温泉にはよく行っている方だと思うのだが、その中でもトップ5…いやもしかすると3に入るくらいよい温泉だった。
何が良いって、浴場の作りがいい。完全に地元の人向けの大衆浴場で、シャンプー類は一切なくて、シャワーもホースがついているやつではなくガチッと固定された昔ながらのタイプという銭湯的設備なのだけど、とにかく浴槽が広く、洗い場も豊富にあり、わたしみたいなよそものもまったく居心地が悪くないのが素敵だった。それでいてちゃんと「地元のお風呂感」が出ていて、地域の人に混ざって入浴している一体感も確かにあるのだ。そこがいい。
お湯は硫黄系の色の濃いお風呂で、さらに露天風呂までついていて430円。レベルが高い。
夜になると市電の本数が減ってしまうので、市電に合わせてほんの15分のクイック入浴だったのだがかなり癒された。
函館に来た際は、湯の川もいいけど、ぜひ谷地頭へ!
〜後編〜(ここから、オフの日)
翌日、いよいよ津軽海峡を渡る。今日も今日とていい天気!
自腹でとった安ホテルの朝食が思いのほかよくて朝からご機嫌である。40年前の様相であるレトロな「喫茶室」と書かれたスペースでゆっくりコーヒーを飲んだりしていたら、電車の時間を10分遅く勘違いしていたことに気づいて券売機前でめちゃくちゃ慌てる。
スーツケースを転がしながらダッシュで乗車。まだ10月だというのに北海道の電車が暖かすぎて、着ていた上着を脱ぐ。
そもそも津軽海峡フェリーの出航する函館フェリーターミナルは、基本的に車で行く想定でできているようだ。
いつどうやって移動しようかと事前に悩みに悩んで、夜行便もあったので宿泊代を浮かせることもできたのだけど、港へアクセスする術がなくて(いや、タクシーを使えばあるんだけど、だったらホテルに泊まった方がいい)、いさりび鉄道の始発に乗れば7時台のフェリーに間に合い青森で昼食を取ることができる、というわけでこの時間設定にしたのだった。
しかし北海道の地図の縮尺の罠、駅からフェリーターミナルまでが思っていたより距離がある。
一応最寄駅?の七重浜駅から、歩いて20分。ほんのちょっと線路を海側にしてくれたら、せめて徒歩15分になったのに…と思う。
初めての道南いさりび鉄道の旅情を味わう間もなく、数駅で慌ただしく下車し、ターミナルへ急ぐ。
WEBサイトには「出航時刻の40分前までに乗船手続きがお済みでない場合、予約が取り消されることがあります」と書いてあるが、駅に着いた時点でその40分を切っている。
まあ、身一つなのでおそらく大丈夫だろう…とタカを括りつつも小走りで向かう。朝から走ってばっかり!
出航の10分前に窓口で受付を済ませ、無事乗船。わたしが乗船すると、背後で係員の方が「ラスト女性一名乗船しました」と無線を発報していて、ああ〜スイマセン、と恥ずかしくなった。
年末に乗った佐渡汽船は出航の15分くらい前にようやく乗船開始だったのだが、フェリーでも全然乗り方に違いがあるのだなあと思ったものだ。
それにしても飛行機やレンタカーもけっこう滑り込みのことが多いわたし、どうしていつもこうぎりぎりになってしまうのだろう、そしてどうしてなんだかんだで間に合うのだろう、と不思議である。いつも間に合ってしまうから、ぎりぎりを攻める癖が抜けないのだろうけど。
日曜朝のフェリーは空いていて、天気は拍手したくなるくらいの快晴で、デッキにずっと出ていても寒さはまったくなく、惚れ惚れするほどのフェリー日和だった。
大学生くらいの男女と両親という、家族旅行っぽい4人組がデッキで景色を指差しながら話していて、それも含めて良い光景だった。
今回函館で「子供が大きくなった家庭の家族旅行」を見かけることが多かった気がする。お互い家族に優しくできるようになった後で、みんな少しはにかみながら、穏やかに時を過ごしているのがよかった。
そういえばわたしもつい3年前に両親と札幌や小樽に行ったのだった。その時のわたしたちもやっぱり少しはにかんでいたと思う。
つづく。