2023年夏ドラマ感想①
2023年夏クール、16本のドラマを見ました。
Twitter(もうこの名前ではないけど……)でも見るたびに感想をつぶやいていましたが、もう少し長い文章で感想をまとめておきたいと思い、この記事を書くことにしました。
※ネタバレを含みます。ドラマによっては否定的な意見も述べますのでご注意ください。
曜日順に! まずは平日(月~木曜)の帯ドラマと、日・月曜のドラマ。
【わたしの一番最悪なともだち】
(NHK・月~木曜22時45分~・主演:蒔田彩珠)
個人的評価:3.5/5
主人公・笠松ほたる(蒔田彩珠)の、主に就活の時期から就職して3年目までの日常を描くドラマ。ほたるの日常のところどころに、彼女と小学校から大学まで同じ学校に通う鍵谷美晴(髙石あかり)=「一番最悪なともだち」が登場し、美晴との関係を一つの軸にして物語が進みます。
会話の密度が濃いドラマでした。初回では鍵谷美晴とのこれまでが描かれて、物語は比較的緩やかに動き出すのですが、その後、ほたるの大学の友人をはじめ、ほたるの両親、バイト先の同僚、就活で出会う学生や面接官、就職先の上司、恋人などが次々に登場して、物語が加速していくとともに、たくさんのやり取りがなされます。
ほたるはそれぞれの人に対して、自分の異なる面を見せながら、少しずつ違う言葉を使って話します。それぞれの相手との会話は、テンポも中身の硬さも違っていて、新たな人と出会うたびにほたる自身も少しずつ変わっていくようでした。
多様な側面から成り立っていて、しかも変化していくほたるを、蒔田彩珠が見事に演じていました。
個人的には、物語の着地には少し物足りなさを感じました。
東京での仕事と恋人との関係を一旦休んで地元の関西に戻ったほたるが、鍵谷美晴と改めて向き合ったうえで、この後どう暮らしていくのか。東京に置いてきた仕事と恋人はどうするのか。そこを見てみたかったです。
【CODE-願いの代償-】
(日テレ系・日曜22時30分~・主演:坂口健太郎)
個人的評価:1.5/5
婚約者を亡くした刑事の二宮(坂口健太郎)が、願いをかなえるアプリ「CODE」に出会い、「CODE」を利用して婚約者の死の真相を探ろうとするうちに、このアプリの闇に巻き込まれていく話。
長年の推しが主演(しかも2クール連続)なので頑張って最後まで見たけれど、最後までハマれなかった……。
ハマれなかった理由は、おそらく大きく分けて二つ。
一つめは、登場人物たちの主体的な行動が見えなかったこと。
予測不能の出来事が次々に起こるのですが、二宮をはじめとするメインの登場人物たちはそれにあたふたして後手後手で対応するばかりで、何がしたいのかという意思が見えない。何だか気づいたら大きな敵が現れてバチバチしてました、という感じでした。
二つめは、善悪の基準がやや恣意的に見えたこと。
大きな流れとしては二宮とその仲間たちが、「CODE」の開発者に立ち向かっていくという筋書きで、大雑把に言えば二宮たちが正義、開発者側が悪というような構図でした。
が、二宮たちも「CODE」を利用する過程で犯罪のようなことをしているし、そもそも二宮は刑事なのに、犯罪に加担することに対して良心の呵責はないのか?という点が気になってしまって……(というか二宮、本業の仕事ちゃんとしてる?)。
別にドラマの主要人物皆が清廉潔白である必要はないですが、自分の罪に対してはもう少し自覚的でいてほしいなと感じました。
一応、「全て片が付いたら罪を償ってもらう」というようなエクスキューズも作中で何度かあったものの、警察がそんなに恣意的な運用をして良いのか?と思ったり。結局二宮は捕まらないままエンド。
【真夏のシンデレラ】
(フジ系・月曜21時~・主演:森七菜・間宮祥太朗)
個人的評価:2.5/5
主演2人をはじめとする男女8人が湘南の海辺の街を舞台にくっついたりくっつかなかったりする、夏の月9の王道!という感じのドラマ。王道とはいえ、月9のラブストーリーは久々なので、ようやく戻ってきた王道、という感じもありました。
森七菜・間宮祥太朗の二人を筆頭に、メインキャスト陣は神尾楓珠・吉川愛・萩原利久・白濱亜嵐・仁村紗和・水上恒司と、ここ数年の連ドラで印象的な役を演じた若手俳優ばかりなので、画面が華やかですし演技も安心して見られるのは良かった点でした。
とは言え、SNSで100万回指摘されていた通り、ストーリーのがたつきがすごくて、中盤以降はなかなか物語に入り込めず。
6話で主人公の夏海(森七菜)の弟の彼女が妊娠したという話が突然出てきたと思ったら、7話以降全くその話には触れられないし、終盤の8話で急にもう一人の主人公・健人(間宮祥太朗)の会社の同期が登場して、夏海に突っかかる恋敵ムーブをはじめるし……。
「話題になりそうな展開を入れておけば良いだろう感」を感じてしまいました。それよりは、メインキャスト一人一人が抱える悩みや葛藤をもう少しきちんと描いてほしかったなという思いがあります。
このドラマ、序盤の回では、夏海が健人に瓶の蓋の開け方を教えるくだりとか、「半径3メートル」のプロジェクションマッピングのくだりとか、脚本家の独自性が詰まっていそうな場面や台詞があって、それが好きだったのですが、後半は上述の急展開の回収に追われるばかりであまり目を引く場面がなく……。
おそらくこの月9では色々な事情でなかなか独自性を発揮できなかったのだと思うので、次回作を楽しみにしたいです。
【転職の魔王様】
(フジ系・月曜22時~・主演:成田凌)
個人的評価:4/5
「魔王様」と呼ばれるキャリアアドバイザー・来栖嵐(成田凌)が、毎週求職者からの相談を受けて、彼らを新しいキャリアへと導くドラマ。
夏ドラマの中でもかなり好きなドラマでした! 好きだと感じた理由は大きく分けて三つ。
まず最大の魅力は、来栖の人物造型。
「魔王様」と呼ばれるだけあって、来栖は求職者に対して厳しいことも言いいますが、その厳しさは、求職者に寄り添っているからこそ。毎回求職者の言葉の裏に隠された真の思いを読み取って、筋が通っていて的を射たアドバイスをします。
ズバズバと物を言う人は、ドラマではしばしば感じの悪い人物として描かれますが、来栖にマイナスイメージを抱かせないのは成田凌の演技力の確かさゆえと感じました。
この来栖、可愛げがあります。部下の未谷(小芝風花)の発言を受けて目が泳いだりほんの少し表情が緩んだり、成田凌の台詞以外の部分での細やかな演技が、来栖に人間味を与えていました。
また、このドラマでは「魔王様」になる前の過去の来栖も描かれます。過去と現在の来栖は別人のように言動が異なるものの、成田凌の演技は過去と現在を繋ぐようで、風貌や語り口は変わっても来栖嵐という人間の根の部分は一貫していることがしっかりと感じられるものでした。
二つ目は、求職者が抱える悩みのリアルさ。
パワハラ、新卒で就職した会社とのミスマッチ、プレイヤーでいたいのに年次が上がるとマネージングポジションにならなければいけないことへの葛藤、産休・育休の皺寄せを被る社員の苦労。
今まさにここにある問題を、切実さを持って描いてくれているように感じました。現実ではこのドラマほどは綺麗な解決は望めないでしょうが、特に20~30代の人が見れば、必ず何かしら刺さる部分や救われる部分があるように思います。
3話の「合わない仕事は自分の心を殺し、他の誰かを殺すこともある」という来栖の言葉は、胸に常に抱えておきたいと感じました。
三つ目は、来栖と未谷の関係性。
未谷は1話で来栖に転職相談をした後、結局来栖と同じ会社「シェパードキャリア」で、来栖の見習いとして働き始めます。
まず良いのは、来栖と未谷の対等さ。指導役・見習いという関係ではありますが、未谷は必要な場面では来栖に意見をするし、来栖も(軽くあしらっているようではありつつ)何だかんだで未谷の言動を尊重し、互いの間で次第にリスペクトも生まれます。バディものとしてこの上ない関係性。
そして何よりも、二人のうちの一方が知り合ったと認識するタイミングよりも実ははるか前に二人が出会っていたという設定は、オタクが大好きなやつ。来栖と未谷の最初の出会いが描かれたうえで迎える最終回、特にラストシーンはたいへん心が盛り上がりました。
好きな理由が三つと言いつつ少しはみ出しますが、実力のある若手俳優をレギュラーやゲストでたくさん起用していたところも良かったです。
レギュラーでは藤原大祐や前田公輝、白洲迅など、ゲストでは渡邊圭祐、曽田陵介、葉山奨之、西垣匠、飯島寛騎、小関裕太などなど。とりあえずこのドラマを見ておけば旬の俳優を一挙に把握できるのでは?
「転職の魔王様」の感想がやたらと長くなってしまいましたが、今回は以上です! お読みいただきありがとうございました。
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