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英語語源辞典通読ノート B (beetle¹-bequest) #hel活

研究社『英語語源辞典』(KDEE)を通読しながら見つけた語源の面白いネタをメモしています。Bから始まる単語、今回はp113からp119まで。


beetle¹

beetle¹”(甲虫)は古英語 “bitela”, “bitula” に由来する。語源を遡ると古英語 “bītan”(噛む)から派生したらしい。これは英語 “bite”(噛む)の語源でもある。KDEEを読む限りではこの意味変化についてのヒントはない。甲羅があるかどうかにはあまり関係なく、噛みつく虫のことを素朴に指していると思っていいだろうか。

beg

beg”(請い求める)の語源の記載は少し特殊である。中英語 “begge(n)”, “bigge(n)” 以前の語源についての説を(ⅰ)と(ⅱ)に分けてあり、それぞれについて解説が加えられている。これまでにない扱いである。

第一の説は、アングロフレンチ語 “begger”からの借入であるとし、古フランス語 “begart”, “begar(d)”(ベギン会修道士)に由来するというものである。これに対して、第二の説は古英語 “bedecian” に由来し、ゲルマン祖語 “*beð-”(英語 “bid” と関連)から派生したとするものである。主流なのは (ⅰ) のようだが決定的な根拠に欠けるらしい。ここまではっきりと2つの説に分かれて説明されているのは初めてだ。

begin

begin”(始まる、始める)は古英語 “beginnan” に由来する本来語であるが、語源不詳である。ゲルマン祖語 “*bi-ȝinnan” から発達しており、前半の “be-” 接頭辞はさておき、後半の “*ginnan” 部分が謎に包まれている。

古英語には “āginnan” や “onginnan” など同じ「始まる」の意の語があったようだが、どれも前置詞とくっついた形であり、“*ginnan” 単独の語形は見られず語源もわからないらしい。この語幹はどこから来たのか不思議だ。

belief, believe

believe”(信じる)は中英語 “bileve(n)” に由来するが、古英語での形は “ġelīefan”, “ġelēfan” であった。KDEEでは ∽(交替)の記号を使っており、古英語形から発達した形が中英語期において別の形に置き換わって一般化したことを示している。14世紀までは “ileve”、15世紀までは “leve” という形で残っていたようだが、どういうわけか “bi-” 接頭辞がついた形が一般化したようだ。KDEEではこれ以上はわからない。

古英語 “ġelīefan”, “ġelēfan” はゲルマン祖語 “*ʒalauƀjan” から発達しており、”ʒa-”(“y-”接頭辞)と “lauƀ-” から成る。これは印欧語根 “*leubh-”(大切にする)に由来し、英語 “love” と同根である。

名詞形である “belief”(信じること)も、古英語形は “ġelēafa” であったが “believe” と同様に交替が起こっている。

below

below”(下に)は中英語 “bilooghe” から発達し、”be-” 接頭辞と “loȝ”, “lou”(”low¹”)から成る。しかし同じ意味の本来語 “beneath” があり、中英語期の使用はまれだったようだ。KDEEによれば、”neath” > “beneath” に倣う形で、以前から存在した “alow” に対応する(”afore” と “before” のように)類義語として “below” が使われるようになったと推測している。

bequest

bequest”(遺贈、遺産)はあまり馴染みのない語だが、この綴りをしていて “quest” や “request” とは語源的にまったく関係ない。

中英語 “biquest(e)” は “be-” 接頭辞と “*quiste” という語根から成り、”*quiste” は古英語 “-cwiss” に由来する。これはゲルマン祖語 “*kwessiz”、”*kweþan” から発達しており、英語 “quoth”(古語: 言った)の語源である。よく知られている “quest” のほうは古フランス語からの借入語で、まったく関係しない他人の空似である。


今回はここまで。"be-" 接頭辞は似た語形成が多く、おもしろい語源の収穫が少ない。

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