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英語語源辞典通読ノート C (camp-canvas¹)

研究社『英語語源辞典』(KDEE)を通読しながら見つけた語源の面白いネタをメモしています。Cから始まる単語、今回はp189からp191まで。忙しかったので3ページだけです。


camp, campaign, campus

camp”(野営地、キャンプ)と “campaign”(戦役、キャンペーン)、そして “campus”(学校の構内、キャンパス)。この3語は同語源である。

camp” は1525年の初出であり、語源を遡ると古フランス語 camp からの借入である。これもイタリア語 campo(野原、畑)からの借入であり、ラテン語 campum(戦場、試合場)から発達している。このラテン語 campum は単数対格であり、単数主格の campus が英語に借入されたのが英語 “campus” である。格の違いはあるが、これらは二重語と言っていいのではないか。ちなみに、”campus”の英語での初例は1774年で、KDEEによるとアメリカのプリンストン大学で用いられたのが最初らしい。

一方、“campaign” の初例は1628年で、語源を遡るとフランス語 campagne(田舎、農村)の借入であり、これもイタリア語 campagna の借入である。後期ラテン語 campāniam からの発達で、ラテン語 campus に由来する。英語 “campaign” も初めは原義に近い「平原」の意で使われていたようだが、1656年には「会戦、戦役」と意味変化している。これはKDEEによると、冬季は営舎にとどまり夏が近づくと軍隊を平原に進めるという、かつての戦闘形態にちなむという。

can²

can²”(…できる)の語源を遡ると、古英語 can(n) は cunnan の一人称・三人称単数現在形で、ゲルマン祖語 *kunnan から発達している。これは印欧語根 *gnō-(知る)に由来する。察しの通り、英語 “know” も同じ語根に由来する同根語である。さらには、”note”、”cognition”, “ignore” なども同根である。ちなみに、KDEEによると “can” と “may” はどちらも「…できる」を意味するが、”can” は精神的、思考的に可能であること、”may” は物理的に可能であることを指すようにもともとは区別されていたらしい。

Canada

Canada”(カナダ)はフランス語 Canada の借入で、これも北アメリカインディアン(イロコイ語)kanáda(村)の借入である。つまり、北アメリカの原住民族が単に「村」と呼んだところが、フランス人によって「カナダ」という地名であると誤解されたということである。いわゆる「ガヴァガイ問題」の例だろう。似たような話は俗説も含め時々聞くが、まさかカナダがそうだとは。

canal

canal”(運河)は “channel¹”(径路、通信路)と二重語である。語源を遡ると中英語 canal(e) は古フランス語 canal の借入であり、これもラテン語 canālis(導水管)の借入である。canālis は canna(葦)に由来し、ギリシャ語を介してセム語に遡るようだ。同じ語源から英語 “cane”(茎)、”cannon”(大砲)にも通じている。“cannon” の語源はイタリア語における canna に指大辞がついた cannone(大きな筒)である。

一方の “channel¹” も中英語期に古フランス語 chanel から借入しているが、これはラテン語 canālem から発達したもので、canal と違って借入語ではない。canālem は canālis の単数対格なので、同じラテン語から異なるルートで英語に入った二重語と言える。

KDEEによれば、はじめは “canal” と “channel” は区別なく用いられていたらしい。より原義に近いのは “canal” のほうだが、どのような流れで現在のように意味が分化したのかは気になるところ。

cannabis, canvas¹

cannabis”(大麻、カンナビス)は “canvas”(キャンバス)と二重語である。”cannabis” は1798年が初例で、ラテン語 cannabis(麻)に由来する。これはギリシャ語 kánnabis の借入だが、これは英語 “hemp”(麻)の語源でもある。

一方の “canvas¹” は中英語期から使われており初例は14世紀である。中英語 canevas は古ノルマン語 canevas の借入で、古フランス語 chanevaz に対応する。これは俗ラテン語を間にはさみ、ラテン語 cannabis に由来する。KDEEに意味変化については解説されていないが、おそらく麻から作った布、そこから画布に転じたということだろう。


ca- シリーズはおそらく次回でも読み終えられそうにない。ちょっと読むだけでもなかなか粒ぞろいのおもしろい語源が続いているので前途多難である。

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