見出し画像

英語語源辞典通読ノート B (bloom-book) #hel活

研究社『英語語源辞典』(KDEE)を通読しながら見つけた語源の面白いネタをメモしています。Bから始まる単語、今回はp135からp142まで。



bloom¹, blossom, blow²

bloom¹”(花、花が咲く)と “blossom”(花)は外来語と本来語の関係にある。”blossom” は印欧祖語からゲルマン祖語、古英語と発達してきた本来語だが、中英語期に古ノルド語から借入された blom(e) に取って代わられたようだ。どちらも印欧語根 *bhel-(花が咲く)に由来している。同じ語根から発達した本来語には “blow²”(花が咲く)もある。

印欧語根 *bhel- から “blow²” への発達を見たら、意味も綴りも似ている “flower”(花)との関連を当然疑うだろう。予想通り、”flower” の語源も印欧語根 *bhel- である。中英語 flour は古フランス語 flo(u)r からの借入で、これはラテン語 flōrem, flōs から発達している。印欧祖語の bh 音が、ゲルマン祖語では b に、ラテン語では f に変化している。グリムの法則のわかりやすい好例だ。

boat

boat”(小舟)の語源を遡ると、古英語 bāt はゲルマン祖語 *baitaz, *baitam(丸木舟、カヌー)から発達しており、印欧語根 *bheid-(分ける)に由来している。この語根は現代英語 “bite”(噛む)と共通である。おそらく「木を切って作った舟」ということから今の意味になったのだろうか。

body

body”(体、胴体)は古英語以前の語源が不詳らしい。古英語 bodiġ と関係すると見られているのは古高地ドイツ語 botah(胴体、死体)だが、現代ドイツ語では使われていない。かなり基本的な概念の語だと思うが、ここまで謎だとは意外だ。いったいどこで生まれて英語にやってきたのだろうか。

bone, bonfire

bone”(骨)の語源を遡ると、古英語 bān はゲルマン祖語 *bainam からの発達である。しかし、この語はゲルマン語派に特有で、他の印欧語族には対応する語が見られないらしい。”body”に続き、身体に関係する基本的な名称だと思うが、意外にもルーツが謎である。

ちなみに、”bonfire”(かがり火、焚き火)は中英語の “bone” + “fire” から成る。KDEEによれば、もともとは骨を集めて野外で火を焚く宗教的な行事だったらしい。1760年頃までは語源的綴り “bone-fire” が用いられていたが、”bonfire” が普及するに従って原義も忘れられた。1755年にはJohnsonの英語辞典で語形は “bon”(good) + “fire” だとされたらしい。

bonze

bonze”(僧)はてっきり日本語の「坊主」から英語に直接入ったものかと思っていたがそうではなかった。語源を遡ると、近代英語に借入されたのはフランス語 bonze またはポルトガル語 bonzo で、その語源は不詳であるがおそらく日本語「坊主」であるという説が書かれている。われわれからすれば明らかに日本語由来だが、英語に届くまでにたどった経路はよくわかっていないようだ。

book

book”(本)の語源を遡ると、古英語 bōc, bēċ はゲルマン祖語 *bōks, *bōkiz から発達しており、これは印欧語根 *bhāgo(ブナの木)に由来する。これは英語 “beech”(ブナ)の語源でもある。

KDEEではこの語の意味変化についての解説がかなり詳しく書かれている。ルーン文字がブナの樹皮に刻まれたことに関連するとし、同様の構造がギリシャ語(パピルス→ “bible”)、ラテン語(木の内皮→ “library”、木の板→ “codex”)でも見られる。文字に関する語はそれが刻まれるモノの素材から変化しがちであるということだ。

ちなみに意味変化もおもしろい。動詞用法「予約する」の意味で使われはじめたのは19世紀からとかなり新しい。動詞用法では古英語から19世紀までは「勅令状によって(土地を)授ける」という意味だったがこれは廃語義になり、1200年代以前に「書物に載せる、登録する」という意味が生まれている。その後19世紀以降は予約や予定といった意味に特化しているように見える。

また良く知られた熟語に “bookmaker” があるが、15世紀の初例では文字通り「本作り屋、編集屋」だったのが、19世紀から「馬券営業者、賭屋」の意味で使われ始めている。動詞用法は1800年代に一度生まれ変わったのかと思うくらい大幅に意味変化しているような気がする。


今回はここまで。"bo-" シリーズもけっこうなボリュームがある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?