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英語語源辞典通読ノート B (broccoli-buffalo)

研究社『英語語源辞典』(KDEE)を通読しながら見つけた語源の面白いネタをメモしています。Bから始まる単語、今回はp162からp170まで。


broccoli

broccoli”(ブロッコリー)の語源を遡ると、まずはイタリア語 broccoli からの借入だが、これは broccolo(キャベツ)の複数形である。さらに broccolo も brocco(芽)の指小形である。小さな芽がたくさん集まったもの、という連想はまさしくブロッコリーである。

また、イタリア語 brocco はラテン語 brocc(h)us(突起のある、突き出た)に由来し、その語源はケルト語にルーツがあるようだ。同じ brocc(h)us から派生した同根語には “broach”(焼き串、打ち抜き)と “brooch”(ブローチ)がある。ブロッコリーとブローチが同語源というのは気づきにくい関係だ。

bronze

bronze”(青銅)の語源を遡ると、フランス語 bronze からの借入であり、これもイタリア語 bronzo, bronzino からの借入である。これ以前の語源については不詳であり、KDEEではペルシャ語 birinj, pirinj(銅)からの借入であるとする説を挙げている。この他にも、イタリアの都市 Brindisi と結びつける説もあるらしいが、いずれにしても音韻的に無理があると書かれている。またかつては “brown” との語源的関連も想定されたらしいがこれも認められないようだ。

brown

brown”(褐色の)の語源を遡ると、古英語 brūn はゲルマン祖語 *brūnaz から発達し、印欧語根 *bher-(明るい、褐色の)に由来する。同根語には以前に取り上げた “bear¹”(熊)がある。

KDEEによると、中世ラテン語 brūnus や イタリア語・スペイン語 bruno 、フランス語 brun もまた、ロマンス語へ借入された ゲルマン祖語 *brūnaz に由来するらしい。ところが中英語では古フランス語 brun から派生した語が逆流している。その例が ”burnish”(磨く、光沢が出る)である。中英語 burnishe(n) は古フランス語 burnir(褐色にする)と -ish(動詞語尾)から成る。驚くことに “burn²”(燃える、焼く)とはまったく語源的関係がない。

ところで、印欧語根 *bher- は「明るい」を意味するが、この語の原義は「暗い色」らしい。Dr. Johnsonの辞書では「黒とその他の色を複合した色の名前」と定義されている。いったい「明るい」の意味はどこに行ってしまったのか。

brunch

brunch”(ブランチ、遅い昼食)は “breakfast”(朝食)と “lunch”(昼食)から混成された語である。こういう成り立ちはかばん語と呼ばれる。初出は1896年とのことで、かなり新しい造語だ。

Buddha

Buddha”(仏陀)との同根語が英語にあるとはまさか思っていなかったが、実は “bid”(祈る、命令する)と同語源である。語源を遡ると、サンスクリット語 buddhá-(知恵のある)は印欧語根 *bheudh-(気付かせる、知らせる)に由来する。インド・ヨーロッパ語族というスケールの大きさを感じる語源的関係だ。

buff¹, buffalo

buff¹”(淡黄色の)の古い意味は「水牛、野牛」である。英語に入ってきた語源はわかっておらず、KDEEでは古フランス語 buffle(水牛、野牛)に由来する説を挙げており、これはイタリア語 bufalo の借入である。もちろんこれは英語 “buffalo”(水牛、野牛)と関連している。語源的な関連があるのは間違いないだろうが、 “buff” という形になった経緯がわからないということだろう。

buffalo” の語源を遡るとポルトガル語 búfalo からの借入であり、後期ラテン語 būfalum からの発達である。これはラテン語 būbalus に対応し、ギリシャ語 boúbalos からの借入である。これ以前の語源は不詳のようだが、KDEEではギリシャ語 boûs から派生したとする説を挙げている。もしそうであれば “cow” や “beef” と同根ということになる。さすがにそれは出来過ぎではなかろうか。

“buff¹” は原義から転じて「揉み革」や「革の軍服」といった意味になり、そこから「揉み革で磨く」という動詞用法も生まれた。KDEEには掲載がないが、ゲーム用語の「バフをかける」という用法はアメリカ英語のスラングから来ており、その由来は革で磨くことから転じた「魅力的にする」や「筋骨隆々とした」といった意味にあるらしい。

ちなみに “buffer¹”(緩衝器)とはまったく語源的関係はない。


今回はここまで。いよいよ bu- に入り、残り10ページほどでBを読み終わる。英語史ライヴまでに最後の追い込みである。

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