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英語語源辞典通読ノート B (berserk-bible) #hel活

研究社『英語語源辞典』(KDEE)を通読しながら見つけた語源の面白いネタをメモしています。Bから始まる単語、今回はp120からp123まで。


berserk, berserker

berserk” または “berserker”(狂戦士、凶暴な)は古ノルド語 “berserk”, “berserkr” からの借入である。語形成は “björn”(クマ)と “serkr”(上着)から成り、原義は「クマを被ったような」といったところだろうか。“björn” はもちろん英語 “bear¹”(クマ)と同根で、“serkr” は英語 “sark”(スコットランド北部方言: シャツ、肌着)と同根である。

ちなみに、“berserker” の形は古ノルド語 “berserkr” における格語尾の “-r” を、動作主を表す “-er” と誤解して生まれたものらしい。

best

best”(最もよい)は “good”-”better”-”best”の最上級だが、原級の “good” と語源的つながりはない。語源を遡ると、古英語 “best”, “betst”, “betest” はゲルマン祖語 “*batistaz”、“*bat” からの発達で、印欧語根 “*bhad-”(よい)に由来する。この語根は比較級の “better” と共通する。

“better”、”best” に対応するはずの原級の語はゲルマン語には存在せず、別語源の “good” が原級として代用されている。これは補充法と呼ばれる言語現象である。逆に “good” の比較級・最上級もゲルマン語に存在せず、不思議な噛み合わせで成り立っている。

bet

bet”(賭け、賭ける)の語源は、”abet”(扇動する、けしかける)の頭音消失らしい。KDEEにはこれを一般的な定説として記載しているが、断言するにははっきりしない点が残るらしく、次のように注釈されている。

上記が一般的に採用されている語源説だが、ほかにME “bete(n)”(<OE “bētan)「改良する; 償う」の発達とする説などもある。また、名詞と動詞のどちらが先かも確定しがたい。(p121)

どちらにせよ、英語での初出は1592年とのことで、こんなに短い綴りなのにかなり新しい語なのは意外だった。

beyond

beyond”(〜の向こうに)の語源を遡ると、古英語 “beġ(e)ondan” は “be-” 接頭辞と “ġ(e)ondan”(一番遠いところから)から成る。“ġ(e)ondan” からはゲルマン祖語 “*jandana”、”*jend-” と遡り、英語 “yond¹” と共通の語根にたどり着く。

yond¹” はかなり古い語で、今では方言として「〜の向こう側へ、そこで」のような意味が残っているらしい。古英語 “ġeond” は印欧語根 “*i-” に由来する。同じ語根からこれも古い英単語 “yon”(あそこの、あちらの)も生まれている。”yon” は古語で、詩や方言に残るのみのようだが、「遠いが視野内にあるものを指す」のに使われていたらしい。今だと “that” が近いだろうか?現代英語で目にするのは “beyond” の中だけしかないかもしれない、古い英語の痕跡である。

bias

bias”(斜めの、歪んだ、斜線)は語源不詳らしい。古フランス語 “biais”(斜め)からの借入だが、それ以前の語源ははっきりしていない。KDEEでは後期ラテン語 “bifacem”, “bifax”(二股)に由来する説を挙げつつ、古プロヴァンス語経由でギリシャ語 “epikársias”(斜め)に由来する説にも触れている。

ラテン語由来であれば “bi-” 接頭辞は「2」を意味するが、ギリシャ語由来となると “epi-” 接頭辞ということになるので「上に」を意味する。短い綴りながらかなり距離のある異説に分かれている。

Bible, bible

Bible”(聖書)の語源は地名に由来するらしい。中英語 “bible” は古フランス語、後期ラテン語を経由したギリシャ語 “biblia”(本; 複数形)からの借入である。”biblia” は “biblion”の複数形で、これは “biblos”(巻物、本、巻紙)の指小形である。”biblos” は “Búblos”(ビブロス)に由来し、ビブロスはギリシャがエジプトからパピルスを輸入したフェニキアの港町である。今でもレバノンに残っている地名だ。

「本」から「聖書」への意味変化は、ギリシャ語にて “tá biblia tá hágia”(”the holy books”)という形で旧約・新約聖書を指して用いられたことから。転じて ”biblia” だけで「聖書」の意味になったようだ。2つの聖書がセットだったから複数形で呼ばれたわけであり、もし聖書が1つしかなかったら “Bible” の語尾が変わっていたかもしれない。


今回はここまで。進みが遅いがようやく "be-" 地帯を抜けたので加速したい。

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