ナマ書店員のひとり本屋大賞
街の書店で、知人が働いている。息子の同級生のお母さんだから、ママ友? 子供どうしが仲良しなのは知ってるけど、お互いの家を行き来したことはないし、ランチも一回しかご一緒したことがないので、ママ友と言っていいのか?
4年前にその書店にふらりと入ったら、彼女が働いていた。「あら〜お久しぶり」「〇〇ちゃんは元気?」と、お互いの子供の近況報告なんぞを、しばし。
せっかくなので、「何かおもしろい本があったら紹介して」と頼んだら、「これ、いいよ」「とくに男の子のお母さんが読めば、おもしろいと思う」と勧めてくれた文庫本が本当にすごく良かった。
「へえ、『羊と鋼の森』を書いた宮下奈都さんね。この人のエッセイは読んだことないなあ」で、購入。
のちに、この作品の舞台になった北海道のトムラウシを訪ねることになって、作中に出てくる人物に実際に会ったりして、『これって一種の聖地巡礼だよね。ここで宮下一家は一年を過ごしたのか・・・』と、感動しました。この本を読んでいた時は、まさか自分がこのような最果ての地(失礼?)を訪れることがあろうとは夢にも思わなかった。
その後、この書店で知人と会うことはなく4年、今回また4年ぶりにお仕事している彼女と会えたので聞いてみた。「何かいい本があったら、教えて。前に紹介してくれた本、気に入ったんで」
彼女が平積みされている本たちを紹介してくれようとしたので「あ、これは読んだ」「これは今、図書館に予約中」「この辺の本は、だいたい知ってる」と却下していき「文庫本がいいな」と、わがままな私。
そうこうするうち、「これ、文庫本じゃないから少々値がはるけど」(お気遣いありがとう)「すごくいいのよ」と、棚から取り出してくれたのがこちら。
「あ、コレめっちゃ気になってた。そそられるタイトルだから読もうと思ってたんだ!」と私。いい機会だわ、読もう読もう。
「勧めた本、何でも買ってくれるね♪」と、にこにこ笑顔でレジをする彼女。いや、貴女からまだ2冊しか買ってないんですけど。
彼女のお勧め本は、間違いなかった。感想を言いたくてメールしようと思ったら、アドレスを知らなかった。携帯番号はスマホに入ってたんで、ショートメールを送った。彼女からの返事に、LINEのお誘いが。
私はLINEの交換を自分から言い出すのに躊躇する人間です。だって私には教えたくないと思ってる人だっているだろうし、断られると地味にショックなので。断られたことはないけど。こちらからは聞かないようにしてるから。なので、彼女のほうから聞いてくれて嬉しかった。
「知人」「ママ友」の彼女のことを、これからは「友人」と書こう。書店で働く友人が勧めてくれただけあって、【家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった】は、期待を裏切らないおもしろさでした。
それにしても、書店員さんに勧められた本を買って読むって、なんか良いですね。それのスケールを大きくしたのが本屋大賞ですが、ナマ書店員に対面で私に、私一人のために勧めてもらうリアルな体験が、良いですね。嬉しいな。