「お掃除屋さんは見た！家の裏側はミステリー」第13話〜M様宅〜
本日のお客様はM様。
M様は、ちょっと不思議なご依頼内容でした。
「ウチに来るのは、50代以上の人にしてほしい」
お問い合わせのメールにそう書いてあったのです。
一人暮らしの女性の場合、
「女性スタッフに来てほしい」
というご希望は時々ありますが、年齢を指定されたのは初めて。
在籍している50代スタッフは、一通りのお掃除はできるけれども、ひとりでお見積りするのは難しい状況でしたので、
「初回のお見積り時のみ、私も同席してもよろしいでしょうか？」
そうご相談させていただきました。
「いいけど、ペットがいるのでそれには触れないで」
返信内容に了承の上、初回は私とパートさんの２名でお伺いしました。
M様のご依頼内容は、片付け&簡易クリーニング。
ピカピカにするというより、雰囲気キレイの日常的なお掃除をご希望でした。
M様のお住まいは、間取りは２DKで外観はかなり年季の入ったアパート。
でも、古アパートのドアから出てきたM様は、胸元が大きく開いたドレスを着た、とても華やかな方だったのです。
（アパートにそぐわない美しさ！）
そう思いつつ、名刺をお渡しして笑顔でご挨拶。
「お待ちしていました。どうぞ♡」
（声もめっちゃセクシー！）
パートさんと目で会話をしつつ、M様の案内でお部屋に入ると……
間接照明のみの薄暗い室内には、背の高いカウンター&イスが置かれ、壁にはカジュアルなポスターやネオンサインが飾られていて、まるでバーのような雰囲気。
（外観からは想像できないオシャレ空間！）
室内装飾を見て感激した様子のパートさん。
「夜のお店みたいですね！」
素直に感想を伝えてしまい、背中をツンツンしてやめなさいの合図。
「前のお店がつぶれた時、家に持ってきたの♡」
（やはり夜職をされている方なのですね）
お見積りのため室内を歩き回り、お掃除箇所をチェックしていると……
玄関からリビングにつながる廊下の途中に独立したお部屋があり、そのドアには外から鍵がかかっているのが見えました。
（外側に鍵って珍しい…）
M様はドアの鍵に気づいた私を察して、
「その部屋はペットがいるから開けないで。そこは掃除しなくて大丈夫♡」
セクシーな声でそうおっしゃるので、１部屋を除いた１DKの料金でお見積りをしました。
M様のご希望は、週に１回の簡易クリーニング。
毎週月曜日がM様の仕事の定休日らしく、ネイルやヘアサロンに出かけている間にお掃除してほしいとのご要望でした。
M様とクリーニングの内容と範囲を確認して、お見積書にサインをいただき、次回からはパートさんのみでM様宅に伺うことに決定。
そうして訪問３回目までは、順調にM様宅のクリーニングを終えたパートさんでしたが……
４回目のクリーニングの後、
「こわいからM様宅にはもう行きたくない」
パートさんから震える声で電話がありました。
その時、私は他のお客様宅のクリーニング中だったため、
「大丈夫？お茶でも飲んで休んでて。今取り込んでいるから、事務所に戻ってから詳しい話を聞かせてね」
落ち着くようパートさんをなだめて、急いで事務所に戻った私は、M様宅の話を聞いて衝撃を受けます。
パートさんがM様宅の廊下をお掃除中。
例の外鍵のかかっている部屋から、何か聞こえてきたそうです。
（ペットの鳴き声？音楽？）
パートさんがドアに意識を向けると……
「M様〜M様大好き〜〜〜！！」
そう繰り返す、男性の叫び声が聞こえたそうです。
「えぇ〜！M様のペットって、もしかして自称ペットの人！？」
世の中には、さまざまなペットを飼われているお客様がいらっしゃいます。
ご自宅はプライベートな空間ですので、私たちはお掃除に関係のないことは見ない聞かないで対応しますが……
さすがに軟禁状態の人間のペットがいるお宅はちょっと……
担当していたパートさんは、
「もう怖くて行けない」と言いますし、
他に年齢的に該当するスタッフもいないし、万一、スタッフがトラブルに巻き込まれると大変です。
「大変申し訳ありませんが、今後のご依頼はお受けできません」
M様には平謝りでキャンセルさせていただきました。
「ペットに手を出さないよう、50代以上の人って指定だったのかしら？」
M様の真意はわかりかねますが、自称ペットの人が落ち着いて過ごせていることを願っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございます🍀
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