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「お掃除屋さんは見た!家の裏側はミステリー」第25話〜Y様宅〜

本日のお客様はY様。
Y様はお掃除に伺ったお客様のご友人でした。

「あなた沖縄出身なの?私の友人にも沖縄の人がいるの!」
そう言って、その場で電話をかけ紹介していただいた方が、Y様でした。

Y様は数十年前にパートナーさんと死別し、本土で働いていた息子さんに呼ばれ、関東へ移住したそうです。

「沖縄の人と話すのは久しぶりだねぇ〜」
沖縄独特のイントネーションで話すY様と、一瞬で仲良くなりました。

Y様と私は祖母と孫くらいの歳の差がありましたが、私の子ども達もひ孫のように可愛がってくださいました。

Y様のご自宅に遊びに行った時、うんちをした子どものオムツを変えようとすると、
「拭くより洗った方がサッパリするさぁ〜」
そう言って、シャワーでささっと子どものおしりを流してくれたり。

「沖縄の孫に買ったけど、サイズが合わないみたいさぁ〜」
そう言いつつ、新品のお洋服をプレゼントしていただいたり。

Y様を関東の祖母として慕い、月に数回はお茶をするほど仲良くさせていただいていました。

そうして迎えた年末大掃除シーズン。
私たちのお店に、大手テレビ局より取材の申し込みがありました。

水回りクリーニングの映像が撮りたいそうで、お店の宣伝にもなるのでお受けしたいと思いましたが……
ご自宅に訪問OKのお客様がなかなか見つかりません。

「取材先、どうしよう…」
そうY様にお電話で相談したら、

「私の家を掃除して撮ればいいさぁ〜」
Y様にご快諾いただき、取材を受けることができました。

撮影当日。
大きなテレビカメラや資材が、Y様のマンションにセッティングされていきます。

(Y様、緊張されているかな?)

そう思って、お声かけすると…

「テレビに出るのは初めてでワクワクするさぁ〜」
と、鏡を見ながらメイクをされています。

(さすが戦後を生き抜いた沖縄のおばぁ。たくましい!)

その日はキッチンクリーニングと、浴室クリーニングの映像を撮りたいとのご要望でした。

めっちゃプライベートな場所ですが、
「キレイになるならどこでもいいさぁ〜」とY様。

「ありがとうございます!」

テキパキとクリーニングして、お掃除前後のビフォーアフターを撮影していただきました。

私たちがクリーニングしている間に、Y様へのインタビューもありました。
「手が届くところは自分でやるけどね〜 
難しいところは、プロに頼んだ方がキレイになっていいねぇ〜」

などなど。
Y様はテーブルや窓を拭きながら、きっとテレビ的にも好ましいお答えをしていただき、感謝の嵐。

こうして取材は順調に終え、Y様宅もキレイになり、私たちのお店も宣伝できて、三方よしのテレビ出演となったのでした。

取材の他、プライベートでもいろいろお世話になったY様。
私たちが東日本大震災の後、沖縄へ移住を決めた時にも応援していただきました。

「寂しいけど、お子さん達と力を合わせてがんばってねぇ〜
沖縄に行く時は連絡するからねぇ〜」

そう言って、涙ながらに送り出していただきました。

機上の空の上から、住んでいただろう付近を見下ろしながら、
(Y様と元気に再会できますように……)
そう願いつつ、関東に別れを告げたのでした。

それから3年ほど経った後。
法事で帰沖したY様と、那覇で再会することができました。

「お子さんも大きくなったねぇ。今はお掃除の仕事はしてないんだねぇ。」
久しぶりのY様とお茶をしながら近況を伝えあい、写真を撮った後、
「また会おうねぇ!」
と約束してお別れしました。

その数年後。
Y様と一緒に住んでいた長男さんが定年退職をし、お二人で沖縄へ戻っていらしたのですが、コロナが流行っていた時期でなかなか会えず。
その間は手紙をやりとりしたり、時々お電話したり。

「○○テレビに出た時の映像。孫が録画してくれて何度も見てるさぁ〜」
そう話すY様と、昔の思い出話に花を咲かせたりしていました。

そんなY様と楽しいやりとりをしていましたが、ある時から連絡が取れなくなり。
Y様の携帯電話におかけしたら、Y様のお子さんのお嫁さんという方が出て、
「義母は、足を悪くして認知症も始まって施設に入っています」
とのこと。

家族もコロナの感染対策でなかなか面会できないそうなので、私はY様のご実家に手紙を書いて、渡していただきました。

Y様、こんにちは!
元気にお過ごしでしょうか?

私は6人目の子どもを出産した後、働かない夫と別れました。
今はスクール運営やライター業をしながら一人で子ども達を育てています。

関東に住んでいた時には、沖縄に戻って来るなんて思ってもいませんでしたが……
Y様がお話されていた通り、人生ってどこでどうなるか分からないものですね。
状況が変わっても、Y様のようにいつも笑顔で過ごしたいと思います。

前にお会いした時にY様と撮った写真も同封します。
また一緒に美味しいお茶を飲みましょうね。
その日まで、どうぞお元気で。

お手紙を出した後、Y様よりお電話をいただきました。

「お手紙ありがとうね〜
年取っていろいろ忘れてしまって、あんたは…誰だったかねぇ……?」

Y様は認知症が進んでしまい、ご家族の方の名前も忘れてしまったそうです。
(あんなにしっかりしていたY様でも……)
寂しさもありますが、今でも季節ごとにお手紙を書いています。

お世話になったY様。
私のことは忘れてしまっても、私は覚えていますので〜
いつも感謝の気持ちでいっぱいです。
ありがとうございます!

Y様へのお礼の気持ちで締めくくります。
最後まで読んでいただいた皆さまも、どうもありがとうございます!


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