寄稿詩人の紹介⑧ ~向坂くじら~
週に二度、詩誌ラ・ヴァーグに詩を寄稿している詩人を、一人ずつ、一問一答形式(10の質問)で紹介しています。
今回は、向坂くじらさんです。
それでは、向坂さんへの10の質問をどうぞ。
* * *
1)あなたはどうして「詩」を書いているのですか?
誰でも詩のひとつやふたつ書けるような世の中がいいと思っている以上、まずは自分が書いていないのはおかしいから。
2)「詩」とあなたに関する印象的なエピソードを1つ、教えてください。
小学校へ出張授業に行ったとき、教室のホワイトボードに「詩人の向坂くじらです!」と自己紹介を書いておいたら、子どものひとりがいたずらをして、「死人の向坂くじらです!」と書き換えられました。わたしはそんなに気にしていなかったのですが、ほかの子どもが良心からか(?)「詩人の向坂くじらです!」に直してくれ、するとまた最初の子が「死人」に戻し、直した子もヤッキになって「詩人」と書き直す、死人、詩人、死人、詩人……という攻防がくり広げられた結果、最終的になぜか「四人の向坂くじらです!」に落ち着いていました。
3)詩を普段読まない人に、詩集をお勧めするとしたら?
この頃、詩の出張授業のお仕事をいただいたときには、詩集を何冊か持っていくことにしています。対象が子どもか大人かによっても変わりますが、どちらにしてもまず
・橘上『複雑骨折』
が定番になっています。読むだけで、というかめくってみるだけでも、詩に対して持っていたステレオタイプから少し自由になれるような詩集だと思います。子どもも大人も、わからないところをわからないままに、好き勝手にぎゃあぎゃあ騒いで読めるのも魅力です。
加えて、子ども(未就学児〜小学校中学年くらいまで)向けだと
・谷川俊太郎『んぐまーま』
・灰谷健次郎(編)『たいようのおなら』
など、高学年〜中高生向けだと
・三角みづ紀『どこにでもあるケーキ』
・岩倉文也『傾いた夜空の下で』
など、大人向けだと最近は
・文月悠光『パラレルワールドのようなもの』
・多宇加世『さびていしょうるの喃語』
・シンボルスカ『終わりと始まり』
などを持っていくことが多いです。こう並べてみると、日常との接点が感じられ、かつめくったページがどこであってもつい続きを読みたくなってしまうようなものを選んでいるように思います。
4)詩集以外でのあなたの愛読書は? 好きな理由も教えてください。
森有正『思索と経験をめぐって』
はじめて読んだのは高校か大学のときで、ちんぷんかんぷんだったのですが猛烈に心惹かれるものがあり、定期的に読み返しています。いまでもわかっているかと言われるとまったく自信は持てませんが、しかし学生のときとは読み方が変わってきたのも感じます。ずっとそばに置いておきたい本です。
5)最も好きなことば・座右の銘は?
「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」(宮沢賢治)
6)子どもの頃、何になりたかったですか?
作家になりたかったです! 一瞬、動物行動学者になりたい時期もありましたが、数学が苦手すぎてあきらめました。
7)最近のマイブームは?
アイドルの眉村ちあきさん。すさまじいエネルギーで、魅力的な人間であるというのを飛び越えて、恐竜や火山の噴火を見たがるような気持ちで見てしまいます。歌詞もいいです!
ライブ映像↓
8)ご自身の代表作・自信作の詩を1つ読ませてください!(リンクも可)
「月子、ハズゴーン」
9)本誌でどんな詩を書きたいですか?
また、これから本詩誌をどんな詩誌にしていきたいですか?
自分の弱者性と強者性とをともに引き受けることができるような詩、音楽のような詩誌に。
10)そのほか、ご自由にどうぞ!
「みんなで考える」ということに対して基本的には疑いの気持ちを持って暮らしていますが、それでも他者の中で暮らす以上、ときにはそうしていかなければならない。「詩誌を作る」というのはそこに対する希有な良心的方策であるように思えて、そのことがすごくうれしいです。ピース。
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以上、いかがでしたでしょうか。この先も、詩誌に寄稿する詩人をお一人ずつ紹介していきます。
次回の更新もお楽しみに。