【のほほん音楽閑話Vol.8】おそれながら申し上げます
アマチュアオーケストラに在籍して27年。おこがましくも名曲を演奏する機会をいただき大変光栄であります。しかし、絶望で心が折れそうなことも。おそれながら、大作曲家先生に「そりゃないわ~」と申し上げます。
ベートーヴェン先生。曲の第一印象で「怒涛のタンギングや無理ゲーな連符はなさそう」と安心したら大間違い。張り詰めた集中力が必要でべらぼうに疲れます。悠久の時を超え、演奏者に降りかかる「気を抜いたら殺す!」という呪い(?)。音楽室に飾ってあった威圧感満点の肖像画がちらつきます。合奏のたびにいつもヘロヘロ。どうか本番まで生き残れますように……。
ブラームス先生。メロディアスなフレーズに潜むトリッキーな罠。まさかの仕掛けに「何が起きた⁉」と青ざめ、現在地を見失って取り残される焦燥感。後生だから拍の頭に音符をください。
マーラー先生。長大で難解、容赦のなさに泣かされます。一瞬の油断が命取り。遭難したら最後、生還の望みはありません。さらに残酷なことに、「管楽器の見せ場だぞ、さあ喜べ」みたいな軽いノリで「ベルアップ(※)」の指示書きがあります。そんな余裕はありません、追い打ちをかけないで~。
伊福部昭先生。一拍少ない。一拍多い。予想を裏切る独特なリズム。最初は戸惑うのに、じわじわ効いてくる麻薬のような中毒性。身体に覚えさせるとは卑怯なり。嗚呼、今日もどこかで新たなる犠牲者が!
無礼者め、そこへ正座しろ説教してやる? あっそろそろ練習しなくちゃ、さようなら~。
※ベルアップ:楽器のベルをあげること。通常の構え方よりも音が浮き上がって聞こえる効果がある。しかし同時に、恥を捨てる勇気も求められる。
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