動くギプス?
~運動家_ヤスタの運動簿vol.2~
前回の「アイシング」に引き続き、これまたスポーツ現場でよく見かける「テーピング」について記していきます。
※主に足関節についての…
「動くギプス」(flexible cast)
と表現されるテーピング。
動く?ギプス?動かすのか?動かさない(固定)のか?どっちなんだ?と二元論に偏ってしまう天の邪鬼な私です。
今回も専門学校時代に使用していたテキストから、
テーピングとは…
怪我に対応するためのテープを用いた方法のことで始まりは軍人さんに行った足関節への処方らしい…
テーピングの目的
主として怪我の予防としての用途が強いが、再発予防での使用が、
「テーピングの目的の中で最もよく用いられる…」
テーピングの効果
4つある中でも1)の「関節の特定の動きを任意に制限する」ことがテーピングを求める一番の効果かと思われますが、私が初めて(授業で)足関節のテーピングを施された際の感想は…
「こんなに動きが制限されるんだ!?」
でした。
競輪選手※ であったから?球技(減速・停止・方向転換動作を多く含む)を経験してこなかったから?か、「テープを巻いてまでプレーするということ」に違和感を覚えました。
と、同時に外傷・再発の予防は解るが、可動域を制限してはいないか?可動域を制限するということはひいては安定性を失うのでは?いくつもの?が浮かんできました。
※競輪の外傷は…打撲+擦過傷若しくは鎖骨骨折』(稀に肩鎖関節脱臼も)が主
テーピングの有効性
と、テキストには載っておりますが実際の研究ではどういった考察がされているのでしょうか?
可動域とパフォーマンスへの影響
「テーピング(※クローズドバスケットウィーブ(CBW)法)が運動パフォーマンスに関与する底屈・背屈を含んだ6方向の可動域を減少させる」
※足関節のテーピングでより固定力を高めたい場合にスターアップホースシューを交互(この形が籐や竹で籠を編む方法に似ていることから…)に行う
「テーピングをする以前(No-Taping)とテーピングをした以後の運動前・後(Taping Before Practice・After Practice)の可動域について測定」
「テーピングをした以後での運動後の可動域が、テーピングをする以前の可動域に最も近かったのは、肘関節と足関節の『背屈』であった。これは運動や関節に加わる外力が可動域を広げたものと考えられる。しかし、それでもテーピングをする以前の可動域よりも、制限されていた。」
~足関節の機能性テーピングが運動パフォーマンスに及ぼす影響~
「足関節に機能性テーピ ングを行い、運動機能に及ぼす影響を検証」
対象:健常成人(20人)
スターアップとヒールロックに伸縮性テープ(幅50mm)
ホースシューとアンカーに非伸縮性テープ(幅38mm)
〔テスト項目〕
・Yバランステスト(動的バランス)
・片脚垂直跳び(ジャンプ力)
・反復横跳び(敏捷性)
「テーピン グによって内反・外反角度が有意に制限されたが、底屈および背屈角度に差は無かった。Y バラン ステストでは、テーピング群が前方、内側後方、外側後方とも裸足より有意に低下した。ジャンプ力に差は認めなかったが、反復横跳び回数はテーピング群が有意に少なかった。」
「機能性テーピングによってバランス能力と敏捷性が影響を受ける可能性がある。」
「最近では、外傷予防や活動中の応急処置としてだけでなく、怪我をした選手を早期に競技復帰させるツールとしての役割もも求められている。」
「足部テーピング伸縮性の有無が、運動パフォーマンスに与える影響について比較検討」
非伸縮性(38mm幅)テープ群:コントロール群と比較してパフォーマンスが低下
伸縮性(50mm幅)テープ群:各項目でパフォーマンス低下傾向を認めなかった
「ホワイトテープを用いた足部テーピングによって、運動パフォーマンスは低下する傾向がある」
【論文まとめ】
・足関節全体の可動域は制限ありだが、中でも内・外反は有意に制限(底・背屈の制限はわずか)
・テーピングによってバランス能力と敏捷性が影響を受ける可能性がある
・非伸縮(テープ)はパフォーマンスが下がるが、伸縮(テープ)は変化なし
「そもそもテーピングをしてまでプレーしなければならないことなのか?」
上記の論文中にもありましたが、「~怪我をした選手を早期に競技復帰させるツールとしての役割も求められている。」
疼痛、不安定性、etc…が残存している状況で早期に復帰しては、対症療法であり根本的解決になっていないのではないか?
リハビリを完了しないままテーピングして復帰、疼痛+固定で可動域減少、可動域が狭いから安定性が出ず、それを補うため過剰な筋緊張、疲労・不良動作等により再受傷といった流れが予想されます。
「筋肉ロックがなければテーピングは必要ない」
人體研究家の方の考察
~「テーピングが常識なら、そりゃダメだろ。」筋肉ロックがなければテーピングは必要ない。必要ないどころかテーピングは一つ間違えば大怪我の元なのだ。狩猟採集民だった先人はテーピングをしない。タラウマラ族もテーピングはしない。子どもでもテーピングはしない。ヒョウやライオンもテーピングはしない。私は、つい四年前まではテーピングをしていた。二〇年来のヘビーユーザーだった。しかし、筋肉の本質を学び、筋肉ロックこそが怪我や痛みの原因だとわかってからは、筋肉を緩めて本来あるべき姿に戻すことに専念した。筋線維が伸縮自在の柔らかさを維持していればそれが緩衝材になる。捻挫や着地での負荷に耐えられないのは伸縮しない筋繊維が多いからに他ならない。現に私は、チューニングが進捗してからは一切捻挫はしない。サッカーのゲームでもランニングでもテーピングもバンテージも一切しないのだ。筋肉の伸縮性こそが予防策であり、それ以外にはあり得ないと断言する。テーピングをしなくても良い状態を作り出せば、人はいくらでも走れるし、たとえ怪我をしたとしても軽傷ですむ。靭帯が断裂することはめったにないだろう。
テーピングすれば痛みが消えるならそれは根本原因から目を逸らしているだけなので、いつか大怪我をするか、もしくは日々血流が悪化しているのを放置していることになる。また、物理的にも股関節屈筋群が硬くロックしている選手が(現代のほとんどのアスリートが)足首をテーピングで固定していれば、不意にニーインした時に前十字靭帯を断裂してしまうリスクは相当高いと言わざるを得ない~
前回同様興味深い考察
【ヤスタの見解】
極論ですが、そもそもそれほど體(からだ)を酷使してまで(※職業としている人は例外もある)やらなければいけないのか?その後の長い人生を思えば、少しでも満足な體で競技人生を終えてほしいというのは余計なお世話でしょうか?「最終学年だから…。」とか指導者の「次、この選手使いたいんだよな…。」等はスポーツが勝利至上主義(欧米では部活動が存在しておらず、代わりにクラブチームが存在しているためかどちらかというと、勝ち負けよりも「遊びの一環として楽しむ」があるとのこと)の一端であると考えられます。
なんでもかんでも否定したいわけではないが、対症療法に頼ることなく人間に本来備わっている體(からだ)の機能を発揮出来る環境を整えるのが優先ではないか?と思われます。
軟部組織(伸縮性のある筋、弾力性のある腱、強固な靭帯など)に本来の役割を果たさせるためには、余計な保護はしないほうが得策と考えます。
(※あくまで私見であり、医療従事者、トレーナー、各々多様なアプローチがあるため悪しからず)
【処方】
・基本的に、外傷・再発の予防としては行わない
(※アメフト、ラグビー等のコンタクト競技は要相談)
・応急処置として行う場合あり
・栄養とケアで血流促進