DIYで4.5畳の部屋をまるごと防音室に改造した話
将来、家を買ったら防音室が欲しいと思っていました。
気兼ねなくスピーカーで音楽を聞けたり、夜でも楽器が弾けるといいですよね。
中古の一戸建てを手に入れて、いざ調べてみると防音リフォームの相場は300万円〜。
さすがに手が出せない…と思いましたが、ネットで調べると自作している人がチラホラ。
頑張れば格安で作れそうだと思い、DIYすることにしました。
構想から1年。
苦労の末に完成した防音室の記録まとめです。
防音室でやりたいこと
1. 楽器を弾きたい
第一の目標は楽器を弾くことです。
僕はチェロという楽器を持っていますが、普通の家では弾けません。
騒音値で言うと約90dBで、これは電車が通過するときの音量と同じくらいです。
コンサートホールのような大きな会場でも通用する楽器ですから、家で弾くと隣からクレームが来るでしょう。
2. 丸ノコを使いたい
第二の目標は電動工具を使うことです。
DIYが趣味な僕は、丸ノコや集塵機を使うことがよくあります。
どちらも大工仕事で大活躍する機械です。
しかし、これもチェロに負けないくらいうるさく、使うのをためらっています。
つまり、チェロや丸ノコを使っても隣に迷惑をかけないくらいの防音室がほしいということです。
必要な防音性能は?
では、どれくらいの防音性能が必要でしょうか?
自宅がある地域は密集住宅街です。
環境省のウェブサイトによると、昼間の騒音上限は55dB、夜間で45dBとされています。
これはどれくらいの騒音なのでしょうか。
調べると騒音値の目安が書かれたウェブサイトがありました。
確かに、昼でも掃除機の音はうるさいですね。夜なら室外機でも少しうるさく感じそうです。
夜間に演奏するつもりは無いですが、多めに見積もって90dB→45dB、つまり-45dBくらいの防音性能があれば安心できそうです。
どうやって防音室を作るか
どれくらいの防音性能が必要かは分かりましたが、具体的にどう防音室を作ればいいか分かりません。
そこで防音室を自作した人のブログや、防音業者のウェブサイト、Youtubeの動画、書籍などで情報を集めました。
詳細は省略しますが、僕が得た結論は以下の通りです。
考えること多すぎ!
防音室のリフォームにお金が掛かる理由がよく分かります。
ただ、作ったあとだからこそ分かりますが、一つ一つは難しいことではありません。
完璧を求めずに何とかなる精神で取り組むことにしました。
設計図を書いてみる
必要な材料は分かりましたが、材料がどれくらい必要か計算する必要があります。
特に石膏ボードや防音シートは畳1枚ほどの大きさがあり、1枚で10kgから20kgあります。
あとから買い足したり、余りが出てしまうことは避けたいので設計図を書くことにしました。
詳細は省きますが、とにかく吸音材と遮音材を層にしています。
材料(1トンくらい)の買い出し
そうして割り出された材料が以下です。
ハイエースをレンタルし、ホームセンターへ向かいました。
実際に買ったものがこれです。
ホームセンターで「石膏ボード12.5mmを24枚、ラワン合板12mmを24枚……」と注文していると、店員さんが次々と集まってきました。
きっと爆買いする客だと察してくれたのでしょう。
リーダー的な人がスタッフ5〜6人に指示を出し、ほんの10分ほどで全て積み込んでくれました。
が、自宅での積み下ろしは一人のため地獄でした。
合計で1トンくらいの資材、ひたすら担いで車と自宅を往復。
1時間くらい掛かりました。二度とやりたくないです。
しかも、大きな資材のため置き場所がありません。
これらの資材の大半は玄関と廊下に押し込みました。
廊下はしばらく、人一人がやっと通れるレベルの細さでした…
部屋の解体
防音室を作る前に、まず床の解体をしなければいけません。
というのも、防音床は20cmほどの厚さになるからです。
もし既存の床に重ねると、階段のような段差が発生してしまいます。
床を作る
人生で初めて床を作りました。
構造自体は知っていましたが、実際に作るとなると苦労がありました。
計測したはずなのに、なぜか床が傾く。
というのも、基礎がデコボコしているため微妙な調整が必要だったのです。
防音性のために壁と接続しないことも不安定になる原因でした。
何度も調整を続けながら床作りを進めました。
骨組みが完成したら断熱材を充填します。
断熱材の上には合板を貼りながら水平になるように調整しました。
その上には防音性能を高めるためにゴム製の遮音シートを貼りました。
さらに床用の特殊な石膏ボード、合板…と何層にも重ねていきます。
遮音シートは1ロール20kg、床用の石膏ボードは1枚25kgあるので重労働です。
壁と天井を作る
床がある程度完成したら、同じように壁も作ります。
こちらも遮音シートや断熱材を層にして重ねることで防音効果を高めます。
床とはくっつかないよう、少し浮かせて施工していきます。
壁ができたら天井も作っていきます。
天井は隣の家と接しているわけではないため、壁や床ほど重厚にする必要はありません。
が、音が漏れると家族からクレームが来るかもしれないので、吊木で天井を浮かせ、断熱材はしっかりと入れていきます。
他にも空調、電気、インターネットなどの設備を仕込む必要があります。
写真でも換気ダクトや電気の配線が写っていますね。
さらに遮音性能の向上と仕上げのために、石膏ボードを貼って完成です。
ドアを作る
部屋を作り始める前は、市販の防音ドアを使おうと思っていました。
しかし、部屋の入口が狭いため市販のドアではサイズが合いません。
せっかくなのでドアも作ることにしました。
構造はシンプルで、木の枠と合板で断熱材を挟む造りです。
ですが、加工には細心の注意が必要です。
たった数ミリのズレがあるだけで、ドアがうまく閉まらなくなる可能性があります。
ドアの重さは30kgほどになります。
これでも防音ドアとしては少し軽いくらいですが、一人で持ち上げるのに苦労するほどでした。
最後にハンドルをつけ、表面にリメイクシートを貼って完成です。
仕上げ
ここまで終わればあと一息です。
いかにも工事途中という感じの写真ですが、あとは壁紙と床材を貼れば終わりです。
壁紙は一般的なビニールクロスを使いました。
床はフローリング仕上げのように見えますが、メンテナンス性を考えて塩ビ系の床材を貼りました。
完成した写真がこちらです。
リフォーム後の防音性能は?
さて、一番肝心の防音性能はどうなったのでしょうか?
これで普通の部屋より少しマシくらいだったら笑えません。
正確に測定するために騒音計を購入し、さまざまな音を計測してみました。
室内の音量
まずは室内で計測した音量です。
どちらもメチャクチャうるさい。
ここからどれだけ下がるかが肝心です。
が、せっかくなのであと2種類の音源を追加してみます。
追加音源1つ目は、床の防音性能を測るため「床ドン」にしました。
追加音源2つ目は、音の大きな曲代表として、オレンジレンジの「以心伝心」をスマホの最大音量で流します。
どちらも70dB少しですが、かなりうるさく聞こえました。
リフォーム前:屋外
つづいてリフォーム前に屋外で計測した音量です。
部屋から一番近い庭に立ち、窓やシャッターを閉めた状態で計測しています。
特に防音性能を高めていない住宅(部屋)では、室内→屋外でだいたい20dB下がることがわかります。
感覚としては、窓を開けて掃除機かけてるのかな?くらいの音量でした。
リフォーム後:屋外
そしてリフォーム後に屋外で計測した音量です。
部屋の中と比べ、およそ40dB下がりました。
無音とまでは言えませんが、どこか遠くで鳴っているのかな?くらいの音量でした。
ちなみに部屋の外は近くの家の室外機やテレビの音が聞こえており、常に40dBほどあったため、以心伝心は全く聞こえませんでした。すごい。
まとめ
なんとか防音室が完成しました。
心配だった防音性能も十分にありそうです。
ドラムのような大きな音がする楽器では物足りないと思いますが、僕の用途では問題なし。
エアコンも使えるので快適です。
そして気になるお値段ですが、掛かった費用は254,194円でした。
ホームセンター以外にも、モノタロウやAmazonで合計10万円ほどの資材を買っています。
意外と安く済んでよかったです。
この記事では軽く触れただけですが、小さな失敗はたくさんありました。
寸法が合わない、材料が足りない、配管が収まらない…
買い足した資材がある一方、なぜか余った資材も…。
一人では心折れていたかもしれませんが、家族が応援してくれ、そして手伝ってくれたため完成させることができました。
これから存分に楽器(+DIY)を楽しもうと思います。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
実際に防音室を作りたい人向け記事も後日公開予定です。
2024/08/24追記:公開しました!