見出し画像

DIYで防音室を作りたい人へ。役に立つかもしれない話


「DIYで4.5畳の部屋をまるごと防音室に改造した話」では、自宅に作成した防音室の概要について執筆しました。
ここでは、防音室の設計・素材選定を中心に、前記事で冗長になるため省いたことをまとめています。
専門的な内容も含みますが、これから防音室を作る!という人にはきっと参考になると思います。

前記事はこちらから。


僕の防音室の構造。どうやってD値を高めるか

防音室の性能を測る指標としてD値があります。

もともとの部屋は、居室と外でのD値が20~25程度でした。
せめてD-45程度はないと楽器の演奏に不十分だと思い、ここを目標としていました。

専門業者でもないので、何をすれば防音性が高められるか今でもはっきりとは分かりませんが、以下の構成であればD-45に近い性能になりました。


床の構造

  • 仕上げ:フロアタイル(3mm)

  • 1層:ラワン合板(12mm)

  • 2層:ゴム製遮音シート(3mm)

  • 3層:タイガースーパーハード(12mm)

  • 4層:ラワン合板(12mm)

  • 根太:根太+防振ゴム(45mm+10mm)

  • 大引:杉大引(90mm)

  • 束:鋼製束

  • 基礎:コンクリート布基礎

さらに、根太と大引の間にグラスウールを敷き詰めています。
グラスウールは垂れないように薄い木の板で支えるような構造になっています。

合板の接着は防音用の接着剤(サウンドカットなど)を使うべきなのかもしれませんが、手抜きをしてビス留めやブチルゴムテープ、通常の根太ボンドなどで接着しています。

また、壁との隙間は一般的なコーキングを充填しています。

上記は戸建て1Fの場合なので、2Fに作る場合やマンションの場合は構成を変えたほうがいいと思います。

壁の構造

壁は東西南北すべて作ったのですが、すべて違う構造です。
既存の壁と合わせて20cmほどの厚みがほしかったのですが、ただでさえ狭い部屋がさらに狭くなってしまうため、重要でない壁(外と面していない壁)の厚みを減らしました。

外に面する壁だと、室内側から順に以下のような構成です。

  • 仕上げ:ビニールクロス 

  • 1層:タイガースーパーハード(12mm)

  • 2層:ラワン合板(12mm)

  • 3層:遮音シート(1.2mm)

  • 4層:グラスウール(90mm)

  • 5層:ラワン合板(12mm)

  • 内壁(既存):石膏ボード(12mm)

  • 壁内(既存):グラスウール(90mm)

  • 外壁(既存):金属サイディング+構造合板(合計20mm程度?)

一方、屋内(別の部屋)に面する面は多少層を減らしており、合板やグラスウールの厚みも異なります。

  • 仕上げ:ビニールクロス

  • 1層:石膏ボード(12mm)

  • 2層:遮音シート(1.2mm)

  • 3層:グラスウール(45mm)

  • 既存の壁

天井の構造

天井の構造は以下の通りです。

  • 仕上げ:ビニールクロス

  • 1層:石膏ボード(12mm)

  • 2層:遮音シート(1.2mm)

  • 3層:グラスウール(50mm)

  • 既存の天井

上記で省略していますが野縁と野縁受けも施工しています。
また、野縁受けは防振吊木で吊りました。

ここは家の構造によっても異なってくると思うのですが、僕の家は天井裏の余裕が殆ど無かったため既存天井を上げて余裕を作ることは不可能でした。
そのため、防音効果よりも天井の厚みをなるべく増やさないことに重点をおいています。

扉の構造

前記事では触れていませんが、扉は2枚作っています。
2枚目に作ったものの方がスマートにできたのでそちらを解説します。

扉本体の構造は以下の通りです。

  • 仕上げ:ダイノックシート

  • 1層:ラワン合板(12mm)

  • 2層:ゴム製遮音シート(3mm)

  • 3層:木枠+吸音ウール(23mm)

  • 4層:ラワン合板(12mm)

ここにグレモンハンドルをつけて完成です。

扉を既存の壁に合うようにつくるのは大変なので、ドア枠も一緒に作っています。
ドア枠はパイン集成材をカットし枠を作っただけですが、そこにダイノックシートを貼ったり、丁番をつける加工はしています。

ちなみに丁番はモノタロウでセルフィールドア用のものを使いました。

https://www.monotaro.com/g/05137203/

どう考えても防音ドアにつけるためのものではありませんが、(1)安い、(2)ドアを取り付けしやすい(旗蝶番なので)、(3)ネジで前後左右の調整がしやすいという利点がありました。
取付用の彫り込みが少々面倒ですが、すごく良い丁番です。

防音室に必要な設備をどうするか

換気システム

防音室に必須の設備の一つに換気システムがあります。
普通の部屋はある程度の隙間が開いているため、換気を厳密に考えなくても大丈夫ですが、防音室は気密性が高いためしっかり検討する必要があります。
その上、換気するとそこから空気(≒音)が漏れるという問題があるので、様々な工夫が考えられてきました。

僕は、施工の簡便さから吸気は自然吸気、排気は換気扇で行う方式を採用しています。
これは第3種換気と呼ばれる方式だそうです。

使った換気扇は天井埋め込み型の換気扇で、吸音ダクトを繋いで排気しています。

防音ダクトの配管の様子
石膏ボードを取り付けたあと、換気扇を取り付けました。

吸気は隣の部屋から行っています。100φのダクトにグリルを繋いだだけのシンプルな構造です。
一応、ウレタン消音材もダクトにつけています

ダクトの配管途中の様子。電気やCD管も映っていますね。

一方、防音室の換気システムといえば「ロスナイ」も有名だったりしますね。
https://www.monotaro.com/g/04979218/
スペースの問題から多分取り付けられないだろうと思っていましたが、全然余裕で取り付けられた気がしています。
次やることがあれば採用したいです。

エアコン

ごく短時間だけ防音室を使用するのであれば不要だとは思いますが、今やエアコンは部屋に欠かせないでしょう。
ただ、エアコンのためには配管穴が必要で、そこから音が漏れるという問題も…。
本編の記事のために防音性能を測定したとき、なんとなくエアコンの配管穴から音が漏れていた気がしています。

根本的にエアコン配管から音漏れをなくしたいなら恐らく隠蔽配管にするべきだと思いますが、メンテナンス性が低いため採用したくありませんでした。

結局、後でなんとかするという方針で愚直に配管穴を開けました。

あとで配管を隠すつもりなので配管カバーをつけていません。

この記事を書いている時点でまだ完成していませんが、後付のカバーを部屋内につけて防音性能を上げるつもりです。
合板と吸音ウールで取外し可能なカバーをつければ、防音性能もよくてメンテナンス性も上がるんじゃないかと期待しています。

ブース型の防音室であればエアコンの取り付け方法は分かりますが、部屋全体を防音にするタイプであればどのようにエアコンを取り付けるのが正解なのでしょうか…?

電気設備

コンセント、エアコン、換気扇、照明など部屋にはたくさんの電気設備が必要です。

もともとの部屋にはコンセントが二箇所、照明が一箇所、エアコンコンセントが一箇所ありましたが、位置を変えたかったため電気工事の必要に迫られました。

近い位置に移設するだけであれば簡単ですが、コンセントや換気扇を増やしたいなら大掛かりです。天井裏にVVFケーブルを通すことになりますので、天井を施工する前に位置や本数を確定させる必要があります。

電工二種を持っていれば、作業自体はそれほど難しくないと思います。
資材もネット、ホームセンターなどどこでも手に入りやすいです。

ちなみに柱に電線を取り付ける作業でさえ資格必要なので、早めの取得をオススメします。

吸音材に何を使うか

吸音材は密度や厚みによって吸収できる周波数が異なります。
基本的に高い密度で厚い方が効果が高まります。

比較的手に入りやすい3つのタイプを紹介します。

(1) 断熱材を吸音材として使う

吸音材の候補の一つが断熱材です。
グラスウールやロックウールのようなふわふわした断熱材は吸音性能があります。
https://www.monotaro.com/g/00272526/
一方でスタイロフォームなど発泡タイプの断熱材は吸音効果がない(もしくは非常に低い)ため使うべきではないです。

断熱材を使うメリットは価格でしょう。
ホームセンターにいけば20枚入り5~6000円くらいで買えます。

ただ、ホームセンターでよく見かけるグラスウールは10Kくらいの密度だったりするため、吸音材としての性能は低いといえます。
※Kは立米あたりの重さ。10Kはかなり軽い方です。

そもそもグラスウールすら売っていないホームセンターもあります
あるだけマシともいえるでしょう。

こだわるのであれば、店員さんに相談すればお目当ての断熱材を取り寄せてもらえるかもしれません。

(2) 軟質ウレタンフォームを使う

こちらも王道の吸音材といえます。
Amazonなどの通販サイトで「吸音材」で調べると、真っ先にこれが出てくるので見たことがある方もいるでしょう。
黒いデコボコした製品が多く、特徴的な見た目をしています。

比較的コストも安く、入手性も良いのが特徴といえます。
僕は実際に使ったことがないためどのようなメリット・デメリットがあるのか正確には言えません。

不燃材ではないため基本的に壁の中に使うことは避けたほうが無難です。
部屋の中で使うなら問題はありませんが、個人的にはホコリが被りそうだなとか見た目がちょっと好きではなく…。

(3) 吸音ウールを使う

こちらも吸音材としてはメジャーだと思います。
フェルトのように繊維が重なった板状の吸音材です。
https://www.monotaro.com/g/04564217/

若干割高感はありますが変形させたりといった加工性が良いのが特徴です。
僕はこれをドアの中に詰めてみたり、カラー不織布を被せて壁に掛けたりして使いました。

性能としてはウレタンフォームに比べて劣る傾向がありそうですが、また違ったメリット・デメリットを持っています。

遮音材に何を使うか

ある意味、重いものであればたいてい遮音材になってしまうため種類はたくさんあります。
入手性がよく代表的なものを挙げます。

(1) 遮音シート

遮音材としては手軽な部類で、通販サイトでも入手可能なものです。
遮音効果ははっきり言って他に紹介するものと比べて高くはないですが、薄い割に効果が感じられるのが最大のメリットでしょうか。

そして、材質によって値段、重さ、加工性が変わります。

  • 塩ビ系遮音シート

    • 一番見かける。厚さ1.2mm程度のものをよく見かけ、切りやすいし貼りやすい。

    • 壁と天井には大体これが入っているくらい多用した。

  • ゴム系遮音シート

    • 2.8mm厚のゴム系遮音シートも通販で入手可能。

    • 床とドアに使用した。結構重いため壁に貼るのはつらそう。

  • 鉛シート

    • 密度が塩ビやゴムに比べて高いので検討した。

    • 廃棄することが難しいのと価格で断念。

(2) 石膏ボード

ホームセンターで山積みにされているのを見かけられる建築資材。
壁材として頻繁に使われますが遮音材としても優秀です。

なんといっても価格が安い。3尺6尺の12.5mmで600円あれば買えるので、一部屋丸ごと石膏ボードを貼っても1万円しないくらいです。そしてホームセンターであれば置いてあることが多いので、入手性もとてもいいです。
厚みと重さもそれなりにあるため遮音性能も悪くありません。

しかしデメリットも大きいです。
まず重い。DIYでこれを使おうというのは結構根性が必要だと思います。
あとは周りを汚すことです。切れば石膏の粉が飛び散るので広範囲を汚します。割れやすいので床材としても使えません。

そして余ったときの廃棄がとても面倒です。
産業廃棄物の陶磁器くずに分類されるため、家庭ごみでは捨てられません(捨てられる地域も稀にあるらしい)。
産廃業者に回収を依頼するか、持ち込みを行う必要があり、処理費用は高いです。もし5,6枚丸ごと捨てたいなら軽く1万円は超えるでしょう。

僕は別件で石膏ボードを捨てることがあったのですが、1.5立米で合計3万円ほどかかりました…

(3) 特殊石膏ボード

正式名称を何と呼ぶのか分かりませんが、通常のボードより遮音性が高く、床材としても使える密度を持った石膏ボードです。
具体的な製品名を挙げると、吉野石膏の「タイガースーパーハード」、チヨダウーテの「ゼナジーボード」が該当します。
それぞれ公式サイトでも遮音性を謳っているほどです。

僕もタイガースーパーハードを床全面と、一部の壁に使用しました。
通常のものに比べておよそ2倍ほどの重量があり、持ち運ぶだけでも大仕事ですが、あまり厚みを増やしたくない場所にはうってつけだと思っています。

メリットは厚さあたりの密度でしょう。これより高密度となると鉛や金属系の素材になると思います。価格も、通常のものに比べると3~5倍程度しますが比較的廉価だと思います。

デメリットとしては施工性と入手難度だと思います。
まず施工性ですが、カッターでは切りづらいです。僕は丸ノコで切りました。ビスも入りづらいため、あらかじめ下穴を開けたうえでビス止めしていました。
そして一般のホームセンターではまず間違いなく置いていないです。
僕の場合はコーナンPROで店員さんに相談し、お取り寄せで注文してもらいました。

(4) 合板

一口に合板といっても様々な種類があります。
ホームセンターで手に入りやすいのは針葉樹合板、OSB合板、ラワン合板あたりでしょう。
基本的に針葉樹合板は加工性が良いですが軽く、密度が低いです。
ラワン合板は比較的重く、合板の中では防音性が良い方でしょう。
他にも構造用合板やOSB合板も一般的に売られていますが、素材によって性能は異なります。

そして厚みも気にするべきポイントです。
12mmであれば一般的に売られているため、こだわりがなければその程度の厚みで問題ないと思います。
根太レス工法に使われるような24mmも売っている場合がありますので、そちらを使用するのも手です。

(5) 有孔ボード

学校の音楽室などで使われている有孔ボードは遮音材/吸音材として使用することができます。
https://www.monotaro.com/g/02605338/
共鳴を利用して音の運動エネルギーを吸収することで防音性を発揮するというなかなかややこしい理屈で成り立っています。
そして、共鳴させるためには壁に貼り付けるだけではなく、有孔ボードの裏に空気層を設ける必要があります。

そして吸収する周波数の特性は空気層の厚さによって変わります。
楽器によって発する周波数は変わるため、ある意味カスタマイズしやすい防音材と言えるでしょう。
ただ一方で、穴の大きさが何mmでどのくらいの空気層にすれば良い、というのを明確にすることは素人には難しいです。

僕も有孔ボードの採用を考慮しましたが、どの程度の厚みをもたせればよいかわからず見送りました。

おわりに

防音室を実際に作っていくうえで、防音室特有の困りごとは少なくありませんでした。吸音材や遮音材に何を使えばいいのか、構造をどうすればいいのか?
このようなことに触れられている記事は少なく、作る人向けの記事をいつかは書きたいと思っていました。

本記事の内容も僕が作成した一例を載せているだけではありますが、防音室を作りたい人にとって多少の参考になれば幸いです。

ありがとうございました。




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?