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龍を祀る⑴|虎の怪談

昔から龍が好きだった。
龍の置物、龍の絵本、龍の雑貨。

昔、祖母の家で見た時から一目で惹かれた。
祖母の家にあった龍の置物は、水晶玉の上に手を置きじっとこちらを見ていた。
目が離せない程に。

「ばぁちゃん。これちょうだい」

祖母におねだりすると、
「あんた何を言ってるの。価値わからんだろう」
と笑いながら断られるのを毎度毎度行っていた。
価値なんてわからなくても、それが僕は欲しかった。

その日以来祖母の家に行くたびに龍の置物に話しかけ、タオルで埃を払う。

「いつか僕の元に来て欲しい」

なんてプロポーズみたいな事を呟きながら。

ある日、僕は熱にうなされていた。
母は仕事で家には1人。
作ってくれたお昼ご飯を食べる気力もなく仏壇が飾られている部屋の真ん中で布団の中にこもっていた。

また熱が上がったのだろう。
ぐっちょりとした服が気持ち悪い。
重たい掛け布団に包まれながら、ぼーっと目線を動かす。

その時、天井が動いた気がした。
ぼやけた目を頑張って凝らしてみる。

そこにあったのは鱗に覆われた身体。
そして蛇のような腹。

龍だ、と思った。

全部は見えなかった。
だがしかし、そこには龍がいた。
直感でそう思った。

ズズズ、と龍の身体が動き、自分の部屋の上で蜷局を巻いているのがわかる。

恐怖なんてものはなかった。
ただ、安心した。
そのまま目を閉じて眠りに落ちる。

その日以来、僕の周りでは変な事が起きるようになった。


龍を祀る|虎之助
BGM:神札城の踊り子

TOP画像:yosei
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