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「赤しそジュース」「九州黒にんにく」「韃靼蕎麦(だったんそば)」など数々のベジフード(健康野菜食品)で話題に。SDGsプロジェクトも進行中。【ユワキヤ醤油株式会社(後編)】

九州の醸造メーカーを中心に構成される「九州ビネガー会」。各社のものづくりへの思いを紹介するシリーズ『TSUNAGUレポート』の第2回。今回は大分県大分市竹中のユワキヤ醤油。伝統的な醤油・味噌作りをベースに「かぼすドレッシング」や「赤しそジュース」など、地元の農産物を使ったロングセラー商品を次々と生み出しています。後半では、商品作りのエピソード、新たな活動について社長にお話をお伺いしました。

大分の「にんにく」を活用

「黒にんにく」も人気商品です。約18年前、大分県の推奨作物の会議があって、JAさんと野菜問屋さんから、「大分のにんにくが売れなくて困っている。数カ月で芽が出て廃棄になる。なんとかならんか」と相談を受けたのです。
そのとき頭に浮かんだのが「黒にんにく」。
 
自分も食べたことがなかったのですが、青森県の「黒にんにく」をお取り寄せして食べたら、甘くて美味しいんですよ。それで急きょ独学、試行錯誤して、工場に製造室を作り、温度管理もして。価格も分かりやすく1,000円(当時)に設定。道の駅に置いてもらったら、飛ぶように売れて…。にんにくはJAさんと個人契約農家さんから仕入れました。
 
当時、九州では「黒にんにく」製造者は、ほんのわずかでしたが、現在は、たぶん1,000を超える製造者になっていると思われます。にんにくの相場価格も当時の倍以上になり、にんにく農家さんも増えているようで、少しでも生産者のお役に立てたならば幸いです。


甘くないのがヒットの理由。「赤しそジュース」

そして、現在、ネット通販で大人気なのが、「赤しそジュース」。
これは約20年前、「九州ビネガー会」でもお世話になったキユーピー醸造の方に、“これから農業をやりたいんですけどいいヒントはないですか”と相談したことがきっかけです。
そうしたら、和歌山の紀州梅メーカーさんに知り合いがいるので、そこに行ったらどうかと。その結果、紀州梅用の赤しそを私・個人で栽培・加工することになったのです(2年間契約栽培・約20t)。和歌山県の農家さんに教えていただいて、大分市竹中の休耕田で赤しそ栽培しました。
 
いろいろ調べてみたら、赤しそは栄養価が高い野菜だと解りました。塩漬け加工品は低単価だったので、付加価値のある健康食品を模索していて辿り着いたのが「赤しそジュース」でした。
 
夏になると全国各地の家庭で「赤しそジュース」が作られていますが、これがおいしいんですよ。市販品のしそジュースは色も薄くシロップ味のものしかなかったので、無農薬栽培で見た目が赤ワインのように濃厚な天然色素ジュースを作ろうと思いました。
 
そこで、個人ビジネス(赤しそ塩漬け)は終了し、アグリコ㈱という農業法人を設立して「赤しそジュース」の製造を開始しました。商品化直後、大分銀行が主催した展示会(約100社が参加)に出店したところ、思いがけず最優秀グランプリを受賞。そのおかげで東京の大規模な食品展示会や百貨店のイベントに参加しました。
 
そこで、女性のお客様に言われたのが、「甘くないジュースが欲しい」ということ。これが「目からウロコ」でした。ジュースは甘いものという考えが覆され、女性の健康意識の高さに気付きました。さっそく、無糖タイプを商品化。今ではなんと売り上げの半分以上が無糖タイプです。


海外での評価も高い、進化系の調味料「金醤」

醤油作りの進化系が「金醤(きんじゃん)」です。これは20年ぐらい前、水産会社の社長が来社して、「白身魚の刺身につける醤油を探しているんだけど、全国のうすくち醤油を数十品試したが、どれも辛くて全然ダメ。刺身にかける、うすくち醤油を作ってくれ」と、頼まれたのがきっかけです。
 
うすくち醤油は、こいくち醤油より塩分が数%高いんです。しかし、うすくち醤油の塩分濃度を下げると保存性が低下してしまう。そこで研究を重ね、商品化したのがこの商品。金色に見えるので「金醤」(商標登録)という名にしました。
 
地道な営業活動や、いろいろな方々との出会いを通じて、全国各地に「金醤」のユーザーが増加し、現在、外国からのお問い合わせも。中国ではOEM金醤(オリジナルの容器・ラベル、味も中国人好みに調整)として年間契約を締結。コロナ下でも定期的に中国へ輸出しています。また、ニューヨークでの試食会では、「ゴールド・ソイソース!ファンタスティック!」と反響をいただいています。アメリカでは今後、輸出販売していくための認証の問題なども現在、勉強中です。


コロナの時代をサバイバル。次の一手は「韃靼そば」

今、ユワキヤ醤油で進めている新規事業があります。それが、韃靼蕎麦(だったんそば)。原種は中国やウクライナなどの乾燥地帯に育つ蕎麦で一般の蕎麦の約100倍のポリフェノール(ルチン)を含有、黄緑色で、風味豊かな希少な蕎麦です(農水省・農研機構開発品種)。ご縁により北海道の名店に師事し、農業、製麺、めんつゆ、調理までご指導いただきました。


2021年春、大分市内の老舗(創業1959年)カフェ・レストランを事業継承。
2022年春、隣接の古民家をリフォームして蕎麦屋「うさぎ乃」を新規開店しました。耕作放棄地を有効活用して、栄養価の高い健康野菜を栽培し、一次加工だけでなく付加価値加工し、自社レストランで消費。さらに農産加工品や調味料として商品開発し、地産外商で外貨を稼ぐ。これが、ユワキヤ醤油が目指す“6次化ビジネス”です。
 
2054年(ユワキヤ醤油創業200年)に、地域社会に必要とされる社会的企業として存続していることが、当社のSDGsの目標でもあります。


SDGsプロジェクト

未来を見据えた、新しい取り組みについてご紹介します。某大手量販店さんのSDGs事業の一つに、店舗から出る食品廃棄物を堆肥にする事業があり、その堆肥を活用して野菜が作られているんです。
 
そこでできたトマトを使って地元の高校生がレシピを考案し、商品化から販売まで行うというSDGsプロジェクトです。当社は「縁の下の力持ち」の立場で、トマト加工品の製造を担っています。
 
この一連のプロセスには当社の若手社員も関わっているので、社員のモチベーションも上がり、スキルアップにも繋がります。こうして、SDGsのような新しい活動にもチャレンジできる仕組みができました。
 
そして、“量り売り”のビジネスモデルを考えるプロジェクトも進行中。フードロス削減や容器リサイクルの視点からモノ創りを見直していきます。コロナの収束が未だ見えない現状ですが、明けない夜はない。ポスト・コロナの時代に向けて、新しい1ページが始まったという感覚です。
 
―後編 おわり―


(プロフィール)
門脇正幸 かどわき まさゆき
ユワキヤ醤油株式会社 代表取締役社長。1957年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、東京の大手量販店に勤務。1982年~家業を継ぎ、2003年社長に就任。
●ユワキヤ醤油㈱ホームページ
https://yuwakiya.net/   「ユワキヤ」で検索
 
公式インスタグラム
https://instagram.com/yuwakiya_official
 
●「洋食屋 ラパン」「そば処うさぎ乃」ホームページ
https://restaurant-lapin.com/
 
公式インスタグラム
https://instagram.com/usaginooka_oita