見出し画像

アイデンティティが崩れて気付いた「他律」と「自律」のバランスを取る大切さ 〜めざせ!KyunJoyマスター 中村真広師範【前編】〜

押忍!Kyun株式会社の代表・teruこと、奥本照之であります!!

なぜ僕がこんな道着に身を包み、ハチマキをしているのかというと……(断じてふざけているわけではありません!)。

「KyunJoy your life 〜一人でも多くの人が自分の心にキュンとした人生を〜」というミッションのもと、ウェルビーイングにまつわる事業を手がけていますが、僕自身がもっとウェルビーイングな生き方について理解を深める必要があると感じたのがキッカケです。

「KyunJoy」という言葉は、自分の心がときめく「Kyun」と、喜び・楽しむ意味の「Joy」を足した造語で、Kyun株式会社の代表として世界にKyunJoyすることの大切さや素晴らしさを普及していくために、僕の生き方を見て「KyunJoyしている漢だ!」と思ってもらえる人間になる必要があると感じました。

そこで、僕目線で「KyunJoy道」の先達と思うリスペクトしている方にインタビューする連載を立ち上げることになりました。
出演者の方(=師範)との稽古(=インタビュー)を通じて「KyunJoyマスター」を目指す所存であります!

今回訪れたのは、東京から車で走らせること1時間半、神奈川県藤野。今回の師範である中村真広さんは、僕が以前働いていたツクルバの共同代表として上場させた後は代表を退任し、現在はここ藤野に移住して「虫村(バグソン)」の村長や株式会社KOUの代表取締役をしています。

虫村とは?なぜ東京から藤野に移住したのか?ツクルバ共同代表を退任して村長になったのか?中村さん稽古をつけてもらいながら、「KyunJoy」に生きるためのヒントを探ってきました。

中村真広 師範
2011年株式会社ツクルバを共同創業し、2019年東証グロース市場に上場。2023年10月に取締役を退任し、事業の一部をバ・アンド・コー株式会社として引き受ける。
株式会社KOUを創業し、2019年より代表取締役。世の中の会社をもっと幸せな居場所にするべく、組織活性化サービス「emochan」を展開。
https://masahiro-nakamura.com

社会からの求めと「他律」に偏って生きていることへの気付き

teru:本日は、稽古よろしくお願いいたします!

中村:よろしく。気合いがすごいね(笑)

teru:押忍!!!

中村:(苦笑)。

teru:中村さんと最初に会ったのはツクルバの選考面接でしたよね。ちょっと諸事情あってTシャツにコーヒーとレッドブルがかかった姿だったのに、中村さんが「いいじゃんそれ」みたいに褒めてくれたのが記憶に残っていて。
どんなことでもポジティブに捉える人なのかも、と思いました。

中村:teruは当時ツクルバが運営していたco-ba shibuyaとつながりを持っていたから、すごくうれしかった記憶がある。co-ba shibuyaに入っていた会社でインターンしてたんだよね。

面接のときから、自分が経験したことに対して真摯に向き合っているという印象があって、課題意識とか自分が人生でやりたいことを話していたよね。今はキャリアの領域でやりたいことを貫いていて、teruの強さはそこだと思っています。
葛藤しながら真摯に自分の内側に向き合ってる人。不器用ではあると思うけど逃げてないというか。

teru:KyunJoyマスター第1弾として中村さんに稽古をお願いしたのは、僕自身とても影響を受けているからで。
ツクルバでの僕はロジック人間で数値にコミットしていたし、組織が数値や計画へのコミットが強くなっているときに、中村さんは数値には結びつきにくい「エモ」を大切にしてオフィスに砂場を作ったり、社内でのコミュニティ活動に力を入れたりしていて、なぜこんなことしてるんだろうと思っていたんですけど(笑)
起業してみて、答え合わせというか、社会実験として経営をしていたのかなと思って。

teru:ツクルバではロジックが強くなっている中で逆サイドに立ってバランスを取っていて、今は「虫村の村長」と「株式会社の代表」と、反対側の選択をしているところにKyunJoyに生きるためのヒントがあるんじゃないかなと思っています。どのように今の選択肢に行き着いたのか、まず聞いてみたいです。

中村:最初の変化のキッカケは、ツクルバの上場前後のときだったかな。経営者として数値や目標にコミットしないといけない、代表として「こうじゃないと」というプレッシャーが強くなって、笑えなくなっちゃったんだよ。
誰も俺にそうして欲しいなんていってないのに、自分の枠を規定してとらわれて窮屈だと思い始めちゃったんだよね。そのときに子どもも生まれて、家族との関係もギクシャクすることもあって。

teru:そんなことがあったんですね。

中村:そんなときにあるワークショップを受けて。「自分は活動家である、コトを起こして社会に仕掛けて、社会を前に進めていくことに存在意義がある」って、そのときまで思い込んでいたんだけど。
実際は他律的な自分で、社会からの期待に合わせていただけで、活動家が自分の存在意義じゃないかもって気付いて。自分のアイデンティティが崩れ去ったんだよね。

そのときに、他律的な「こうじゃないと」ではなく、自律的な「こうありたい」にシフトしようと思ったんだけど、1回や2回乗り越えただけでは変わらなくて。
少ししてからまた他律的なスイッチが入ってしまった。上場するために数値やロジックが強くなっているなかで、自分は楽しさとかコミュニティ感とかエモ側を補完しないといけないってなって、空回りしてプロジェクトが失敗して。同じ過ちを繰り返していた。

中村:上場後、何年か経ってツクルバがより会社らしくなって、周りの人と「経営者はこうあった方がいいよね」という話をすることも増えて、「本当に自分はそういう経営者になりたいのか」と自問自答したら、そう思わない気がするな、と。
肩の荷が降りたというか、「こうじゃないと」ではなく「こうありたい」に気付くことができたんだよね。

teru:僕も去年、大きな転機がありまして。経営者に向いてないんじゃないかと思ったんですよね。自律的に生きていると思っていたけど、生きられていなかったことに気づきました。
一番はいわゆるスタートアップ界隈に洗脳されて、XやForbesで資金調達のニュースとかを見て、周りにあこがれを持ったり、成長しなければいけないと思ったりしてしまっていたんです。
そこで、改めてコーチングや経営知識を学んだりして、自分が「こうなりたい」に向き合えるようになりました。それからは経営も好調になって、メンバーにも1on1や日々の会話でも柔らかくなったといわれるようになりましたね。

社会にはさまざまな価値観の物差しがある

teru:ただ、今まで数百人とキャリア面談をして来て、それこそ自分・上司・家族といった他律的な存在に期待をされたり、いわれた通りにしないといけなかったりすることもあって、なかなか自律的だけでは生きられない。仕事は他律的に、他は自律的に、と割り切れるわけではないなと思っていて。

中村:自律的に生きるのも気持ちいいけど、人間は他人との相互関係の中で生きてるから、100%自律的に生きられるわけではないんだよね。
だから、時間軸とか社会全体の中でバランスを取るというか、他律に偏りすぎている自分を自覚したり、自律に偏りすぎていたら周りの期待に答えてみたり、時期によって自主的に変えてみたり揺らいでいくものなのかなと。

虫村とツクルバはまさにそういう存在で。
俺は全体として中庸(極端に偏らず、また過不足なく調和が取れていること)を目指しているというか、ツクルバでやっていた上場企業を作るというのは資本主義の中枢のようなものだと思っていて。
それを経験した俺があえて逆サイドを今作ろうとしている。それってバランスを取る順番、俺だからこそ作れるバランスの取り方だなと。

teru:僕は自律的な生き方を尊重した組織を経営していますが、社会を変革するとか社会に必要な会社にするためには、他社との競争や他律的なところもやらないといけない、そのバランスで葛藤していますね。

中村:Forbesとかスタートアップの調達額ランキングとか、一歩外に出たら誰も興味ないんだよね。藤野にはForbesはほとんど売ってないし(笑)。それよりも倒木したときに最初に駆け付けて道を通れるようにする人の方が、ここではヒーローになる。

社会にはいろいろな物差しが存在するけど、ひとつしか持っていないと思うと辛くなるから、違う物差しがあることを認識することが大切なんじゃないかなと。
例えば、相撲部とサッカー部って違うルールだけど、俺は相撲部にもサッカー部に入っている。社会って資本主義ゲーム、つまり生徒全員サッカー部だから、サッカーが嫌いだったらここにいられないってなってる気がしていて。その中で自分は相撲部を作りたいんだよね。

後編につづく


Photo/IKKI FUKUDA Interview & Text/外山友香 Design/ハヨン Edit/篠原泰之

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?