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どうする日本:覇権国家不要論

覇権のない米国と中国

前回、米国は覇権国家として終わりが見えつつあると書きました。

戦争や戦乱によって勝利した国が、新たなリーダー国家として台頭し、それに逆らいたくない国々が沈黙するため、平和と安定が生まれ教育によって国富が増強され繁栄します。さらに強力な軍隊が睨みを効かせてその国の通貨で取引しろと迫ります。これがさらに繁栄を補強します。これは覇権国家サイクルの前半戦です。しかし、そのうちその国の中でも貧富格差が生まれます。それを埋めるために、財政刺激策や紙幣増刷などの金融緩和策が取られバブルになります。その頃が波のサイクルの頂上(ピーク)です。その後はバブルが崩壊して経済が破綻します。すると好景気で誤魔化されていた貧富格差が再び鮮明になり、国内に不満が蓄積します。これが内乱や内戦に発展します。そして、そのリーダー国家は転落していることに気づきます。

米国は「国内に不満が蓄積して内戦一歩手前の状況なので『覇権国家としての終わり』が見えつつある」と書いた次第です。

それでは次の覇権国家は中国なのでしょうか

2003年にWTO(世界貿易機関)に加盟して世界と自由に貿易ができるようになってから中国は高成長を続けてきました。安い労働賃金で人口も多い「世界の工場」として各国企業が工場を設置し、海運などの物流も整備されました。不動産価格は高騰し各省都は急速に現代都市に生まれ変わりました。貧富格差は広がりましたが、それは不動産バブルによるものでした。中国経済は諸外国にくらべて国内消費が脆弱でGDPの4割程度しかありません。残りを3割ずつ輸出と不動産(固定資産投資)が占めています。

共産国なので土地は共産党の所有物で民間は使用権を購入します。土地の使用権が売れればそれは政府の収入です。実際には地方政府の収入です。地方政府は銀行と結託して不動産融資の企業を設立し、資金を貸して不動産開発をどんどん奨励しました。企業が入居する工業団地や高速道路や高層マンションやショッピングモールなどなんでもです。その事業が採算に乗るか、街が将来的に発展するかは関係ありません。とにかく土地使用権が売れれば、手っ取り早く地方政府の収入になるからです。そもそも中国のGDPはかさ上げされていて信用できない、という声は昔から根強くありました。

最近、米中貿易摩擦や不動産バブルの崩壊がGDPの6割に逆回転の作用ももたらしています。恒大集団や碧桂園などの大手が破綻し、不動産バブルが崩壊しました。民間だけではありません。数ある地方政府の不動産融資企業は地方政府が信用保証しているので不動産融資企業の借金は地方政府の借金ということになります。NHKの番組で推計していましたが、地方政府債務残高のそのGDPに占める比率は天津で1000%を超え、ワースト10都市はすべて400-500%以上になります。日本の政府債務残高は先進国の中で最悪で260%程度です。日本の2倍から4倍もヒドい状況です。北京政府は、公務員も民間企業も強制的に賃金カットし、給与未払いも10倍に激増しています。外国企業は次々と中国から脱出、中国国民も米国や他国に逃亡する者が続出しています。

つまり、中国は覇権国家を狙っていたけれど、その嘘のカラクリがバレて転落していったという状況です。

そもそも覇権国家とは?

覇権主義 hegemonismの定義は「影響力を拡大させるために一つの大国が軍事面・経済面・政治面で自国より弱い他の国々に介入し、その国の主権を侵害し続けること」です。つまり、
目的:影響力の拡大
目標:他の国の主権を侵害すること
手段:軍事面・経済面・政治面で自国より弱い他の国々に介入
介入事例:他国での軍事基地、共通領域での軍隊(海洋や空域)や核兵器、兵器等の販売、内政干渉や政府転覆

ということになります。

歴史的に覇権国家として言えるのは、オランダ、英国、米国です。
オランダは1600年くらいから1820年くらいまでの220年間で、アムステルダムが中心で通貨はギルダーでした。
英国は1850年くらいから第二次大戦の1940年くらいまでの90年間で、ロンドンが中心で通貨はポンドです。
一人当たりGDPをオランダと英国で比較すると、1700年(元禄13年)ではオランダは英国の1.49倍の所得を享受していました。1820年(文政3年)では1.07倍と拮抗します。さらに50年後の1870年(明治3年)には0.87倍と英国が逆転します。そして、米国は第二次対戦後からなので1945年から78年間です。

日本人にはピンとこないなあ

江戸時代に始まった欧米の覇権国家という考え方。鎖国していた日本人からすればピンとこないですよね。「へぇ、そんなことがあったの?」という感じです。

何で欧米各国が覇権国家を目指すのか?その理由は何でしょうか?

  1. こちらからやらないとやられるから

  2. 影響力を行使しないと自国民を養えないから

これくらいしか思い浮かびません。1については「みんなで一斉に平和主義に転換して、一斉に軍縮すればいいんじゃない?」と思うわけです。2については「自国民を養うのに植民地や奴隷が必要なの?産業構造を転換すればいいんじゃない?」と思うわけです。
米国のディープステートであるロックフェラー、デュポンや国防総省のネオコンは戦争をすることが米国経済の維持に欠かせないと考えているようで、そんな発言をした要人がいました。確かに軍需産業がなくなれば300万人の労働者が失業します。米国人口の1%程度です。でも、「産業構造を転換して失業しないようにすればいいんじゃないの?何も他国で人殺しをしなくても!」と思うわけです。

江戸時代を生きてきた日本人からすれば、歴史の浅い欧米政権が言い出した覇権主義なんて「くだらない!」と一笑に付したいという感じです。


日本はと言えば、以下のような立ち位置になるべきなのです。
影響力の拡大:特には狙わない。自然体で受動的(手本を示す)。
他国の主権:侵害しない。ただし、強力な自衛戦力は保持する。
他国への介入:しない。請われれば是々非々で協力。
経済面:
①自由貿易は支持し、その枠組みは維持する。
② 通貨:特定の国々との交換価値に依存しない。基本的にすべて国内資源で生産を賄えるのであれば対外為替レートには何ら影響を受けない。食とエネルギー、希少物質を含む資源の自立が急務。

ということになります。なので、私九兵衛が考える「日本の政財界や国民をあげて主張すべき日本の主張は『覇権国家不要論』」なのです。
そして米国の覇権に終わりが見え、中国の覇権も志半ばで挫折した今こそ、正しい世界に軌道修正する好機だと思えるのです。



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