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【PREP書評】国際教育開発への挑戦【荻巣崇世・橋本憲幸・川口純編著】

読書の世界をもっと楽しみたい、でも何を読めばいいのかわからない――そんなあなたのために、「PREP書評」をご提供します。

この企画では、私が読んで勉強になった本の概要やポイントをわかりやすく紹介し、皆さんの読書、noteやブログの執筆に役立ててもらうことを目指しています。

具体的には、PREP手法(Point(主張)・Reason(理由)・Example(具体例)・Point(再主張))を使って、本の魅力を分かりやすくお伝えします。

今回ご紹介するのは、荻巣崇世・橋本憲幸・川口純編著さんの『国際教育開発の挑戦』です。


Point(主張)

国際教育開発に新時代の風を吹き込む、挑戦的な一冊

私がまず強調したいのは、この本が「国際教育開発とは何か」を新しい視点から問い直していることです。

従来は「先進国」から「途上国」へという一垂直的な支援が中心でしたが、SDGsの流れを受けて、世界全体を対象にしたより水平的なつながりが求められるようになっています。

本書では、「誰が教育するか」「どう具現化するか」「いかに関わるか」という三つの大きな柱をもとに、国境を越えた教育のかたちを提案しています。

各章の論考やコラムを通じて、私たち一人ひとりが「教育する/される」の垣根を超えて、協力し合える可能性を示唆しているのがポイントだと感じました。

Reason(理由)

世界規模の学びが必要とされる時代背景と、本書の問題意識

なぜ本書が必要とされるのかというと、現代では教育の課題が一国単位で収まらなくなっているからです。

紛争や貧困などの社会問題は一見「途上国」に限ったものと思われがちですが、先進国でも教育格差やインクルージョンの問題は深刻です。

本書は、そうした複雑化する教育の課題をSDGsの枠組みで考え、世界で共有可能な解決策を探る姿勢を示しています。

「国際教育開発」というと、どうしても「支援する側(先進国)」と「支援される側(途上国)」という図式が浮かびがちです。

しかし、本書が掲げる挑戦は、その垂直的な関係を越えていくアプローチにあります。

第1部では「誰が教育するか」を問うており、難民や国籍を持たない人たち、そして新たに台頭している私立学校などが、公教育ではカバーしきれない領域を担うケースが紹介されています。

第2部では「どう具現化するか」という視点から、ユネスコやJICA、世界銀行など国際的な機関との“互恵的な連携”の重要性が提示されています。

そして第3部では、研究者や実務者として「いかに関わるか」に焦点を当てています。

そこでは、「わたし」の位置性(positionality)を意識し、支援の場で生まれる非対称な関係性をどう乗り越えるか、試行錯誤する研究者・実務者のリアルな声が語られています。

つまり、こうした多角的な観点から、世界規模での教育のあり方を見直す必要がある――それが本書の強い問題意識なのです。

Example(例)

互恵的な高等教育協力における具体的メリット

ここでは、第5章「互恵的連携を通じた高等教育協力に向けて」の事例を取り上げてみます。

従来の国際教育開発は、途上国を支援するために先進国が一方的にアプローチするイメージでした。

しかし、この章では、日本の大学や企業などが途上国に「支援を与えるだけ」ではなく、相互に恩恵を得ることができると考察しています。

たとえば、日本の大学が留学希望の学生を受け入れることで、途上国の教員育成に寄与するだけでなく、日本の大学側にもメリットがあるといいます。

具体的には、優秀な留学生を受け入れることで国内の研究環境が活性化され、新たな研究ネットワークが拡大する可能性があるのです。

また、日本企業が高等教育の分野で交流を深めることで、将来的に途上国へ進出するときに必要な産業人材の確保がスムーズになるという見方も示されています。

こうした例からわかるのは、国際教育開発を通じて「支援する・される」という従来の関係にとどまらず、互いの強みやリソースを掛け合わせることで、双方に利益をもたらす協力体制が整うということです。

これは、より広い視野で国際協力を捉える上でも大いに参考になりますし、本書が提案する「水平的な連携」の有効性を端的に示す実例といえます。

Point(再主張)

『これからの教育開発を担う全ての人に読んでほしい』

最後に改めて強調したいのは、本書が「私たち自身が教育開発にどう関わるか」を深く問いかけている点です。

国際協力と聞くと、大がかりなNPO活動や行政の支援を思い浮かべがちですが、本書の執筆陣は、研究者から実務者、さらには現地の当事者まで多様な立場を持っています。

その彼らが自らの体験や思いを語ることで、読者も「自分ならどう関われるのか」「自分の立場でできることは何か」を想像できるようになるはずです。

また、各世代を代表する専門家のコラムが要所に配置されているため、過去の国際教育開発が歩んできた道と、これから先に広がる未来への展望を行き来しながら学べるのも貴重だと思います。

「国際教育開発」という言葉を聞くと、少し敷居が高い印象を持つかもしれません。

しかし、本書は私たち一人ひとりが世界規模の学びや教育に興味を持つきっかけを与えてくれます。

だからこそ、これからの教育、あるいは国際協力に携わりたいと考えている全ての人に、本書を手に取ってほしいのです。

きゅうさんの本棚:さらに本書に興味をお持ちの方へ

この記事をお読みいただき、さらに『国際教育開発の挑戦』に興味をお持ちになった方は、お近くの書店やオンラインストアでおすすめの本を手に取ってみてください。
きっと理解が一層深まることでしょう。


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