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【PREP書評】行動経済学が最強の学問である【相良菜美香】
読書の世界をもっと楽しみたい、でも何を読めばいいのかわからない――そんなあなたのために、「PREP書評」をご提供します。
この企画では、私が読んで勉強になった本の概要やポイントをわかりやすく紹介し、皆さんの読書、noteやブログの執筆に役立ててもらうことを目指しています。
具体的には、PREP手法(Point(主張)・Reason(理由)・Example(具体例)・Point(再主張))を使って、本の魅力を分かりやすくお伝えします。
今回ご紹介するのは、相良菜美香さんの『行動経済学が最強の学問である』です。
■Point(主張)
行動経済学は、ビジネスパーソンが最も身につけるべき「非合理な意思決定のメカニズム」を解明する最強の学問である
行動経済学は、経済学と心理学が交差する新しい学問分野です。
近年、世界的なトップ企業やビジネスエリートがこぞって行動経済学を学び、人材獲得合戦まで起きています。
この本では、行動経済学の主要理論が「認知のクセ」「状況」「感情」という3つの視点から体系化されており、それにより「なぜ私たちは非合理的な判断をするのか」を読み解くことができます。
つまり、本書は行動経済学のエッセンスを一気に吸収し、そのうえで現実のビジネスや日常生活に応用できる「最強の入門書」になっているわけです。
■Reason(理由)
合理的とは限らない人間の行動原理を理解することが、ビジネスや生活の質を劇的に向上させるから
人間は常に合理的な判断を下すわけではありません。
むしろ、感情や過去の経験、周囲の状況など、目には見えにくい無数の「歪み」が私たちの意思決定に影響します。
本書は、その歪みを3つの柱で整理しています。
1つ目が「認知のクセ」。
脳が情報を処理する際のバイアスや思い込みによって、システム1(直感的な判断)とシステム2(熟慮した判断)の使い分けがうまくいかず、短絡的な決定を下してしまうケースが紹介されます。
2つ目は「状況」。
周囲の環境、音楽や天候、目に入る情報量、他人の存在といった外的要因が、私たちの購買行動等に影響している点を丁寧に説明しています。
3つ目が「感情」。
怒りや不安、あるいは「アフェクト」と呼ばれる淡い感情によって、選択や行動が想定以上に揺さぶられてしまう事実が示されます。
こうした理論を理解することで、自分がどれだけ環境や感情に左右されているかを客観的に捉え、ビジネス戦略や自己啓発に活かすことが可能になります。
■Example(具体例)
周囲のBGMがワインの購入先を左右する「プライミング効果」の例から、私たちの行動がいかに無意識下で操作されるかがわかる
特に「状況」が意思決定に与える影響として、本書で面白かったのが「プライミング効果」に関するワインショップの例です。
あるワインショップで2週間、店内BGMを週ごとに変えて、フランスワインとドイツワインの売れ行きを比較しました。
条件はほぼ同じ価格帯、同じ甘さや渋みのワインを用意し、唯一の違いは流す音楽だけ。
すると、フランスを連想させるBGMを流した日には、なんと83%がフランスワインを購入したのです。
一方で、ドイツを連想させるBGMを流した日には、65%ものお客さんがドイツワインを選ぶ結果となりました。
興味深いのは、「BGMに影響されてワインを選んだ」と自覚していた人がわずか15%ほどだったことです。
この一例からも、私たちが「自分の意思で選んでいる」と思い込んでいる行動は、実は無意識のうちに外的要因(状況)によって大きくコントロールされていることがわかります。
最近、私がX(旧Twitter)やnoteで見かけた、クロネコ屋@note作家さんの投稿にも似た話がありました。
有料noteは「この人からなら、この話を聞きたい」という文脈効果がかなり強い。例えば、私が恋愛講座を書いても売れないが、文章力の講座ならガンガン売れる。でも普段から恋愛について鋭いポストをしてる人は逆になる。このように「普段何について発信してるか?」の延長に有料noteの中身を置くべし
— クロネコ屋@note作家 (@NINJAkusokuso) December 20, 2024
発信者が普段どんな情報を発信しているかという「プライマー(ここでは、文脈効果)」が、読者の購買行動(有料noteの購入など)に影響を与える。
私たちは気づかぬうちに、目にするコンテンツや雰囲気によって意識や判断に影響が与えられているのだと、この例で改めて認識させられました。
■Point(再主張)
行動経済学を理解することで、非合理な意思決定の背景を明確にし、その知見を自らの行動戦略に生かすことができる
本書を読むことで、人間の判断がいかに不安定で、想定外の要素に揺さぶられるかを知ることができます。
そして、この理解はビジネスやプライベートで何をどう選ぶか、どのように他人や自分の行動を改善するか、明確な指針を与えてくれます。
行動経済学は単なる学問ではなく、実践的な「ツールボックス」です。
本書はそのツールをわかりやすく整理してあり、「行動経済学が最強の学問である」と言えるゆえんが詰まっています。
きゅうさんの本棚:さらに本書に興味をお持ちの方へ
この記事をお読みいただき、さらに『行動経済学が最強の学問である』に興味をお持ちになった方は、お近くの書店やオンラインストアでおすすめの本を手に取ってみてください。
きっと理解が一層深まることでしょう。
ぜひ一度お試しください!