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【PREP書評】戦後日本の開発経験【佐藤寛】

読書の世界をもっと楽しみたい、でも何を読めばいいのかわからない――
そんなあなたのために、「PREP書評」をご提供します。

この企画では、私が読んで勉強になった本の概要やポイントをわかりやすく紹介し、皆さんの読書、noteやブログの執筆に役立ててもらうことを目指しています。

具体的には、PREP手法(Point(主張)・Reason(理由)・Example(具体例)・Point(再主張))を使って、本の魅力を分かりやすくお伝えします。

今回ご紹介するのは、佐藤寛(編著)さんの『戦後日本の開発経験』です。


【Point(主張)】

戦後日本の経験が、今の途上国援助にも示唆を与えてくれる

戦後日本の歩みといえば、どうしても「敗戦からの奇跡的な復興」や「高度経済成長」という表面的なキーワードが目立ちます。

しかし本書では、戦後日本が「途上国」のように外部からの援助や指導を活用しながら近代化を進めていった実態を深掘りし、新しい視点を与えてくれます。

農村の再編、公衆衛生の強化、炭鉱産業の発展など、私たちが“すでに終わった昔のこと”として見がちな事柄を、世界の開発史・援助史の中に位置づけて振り返っているのが本書のユニークな視点です。

そして、とりわけ農村や公衆衛生における女性の活躍に注目している点が目を引きます。

私たちが特別なものだと思っている日本の歴史・開発経験が、「実は他国にとっても学びになるプロセスなんだ」と気づかされるはずです。

【Reason(理由)】

女性のエンパワーメントや社会変革の過程が、過去の日本の開発経験に詰まっているから


戦後日本の経済成長は、都市部の男性を中心としたサラリーマン社会だけが牽引したわけではありません。

本書では、例えば、生活改良普及員といった人材を通じて、農村部の女性たちが自ら地域を変えていく様子が描かれます。

さらに、公衆衛生の改革でも女性の力は大きかったとされています。

こういった外部介入を起点とした社会の変化が、のちの高度成長を支える土台となっていったのです。

そのノウハウこそが、いま発展途上にある国々が注目すべき本書のポイントだと私は感じました。


【Example(具体例)】

「協同農業普及事業」の導入が、今の途上国支援にも通じうるエピソードとして挙げられている。

日本人は自分たちにとって固有な極めて特殊な経験として記憶されている「敗戦~復興~高度成長」という一連の出来事を、今日の途上国が経験している開発(他者からの援助を利用した近代過程)の例として、第3章「協同農業普及事業導入時における“適応・再編成”――戦後日本における外部介入型の農村開発」(辰己佳寿子著)が一つの例になっています。

GHQの主導で、生活改良普及員を取り入れることで、農家の衣食住に関わる生活改善や資料収集を行い、女性のエンパワーメントを図った。

ここで重要なのは、アメリカ式のやり方をそのまま押し付けるのではなく、日本の農村の文脈に合わせて普及活動の内容を“適用・再編成”してきたことです。

この事例は、いま世界の途上国でもよく言われる「外部支援(日本などのドナーの支援)をいかに地域の文化や実情に合わせるか」という課題と通じています。

つまり、日本が戦後復興期に体験した外部からの援助と自助努力の組み合わせは、今の国際開発のモデルケースといってもよいわけです。

【Point(再主張)】

戦後日本を「開発途上国」として振り返る視点が、私たちの未来へのヒントになる。

本書は、私たちが当たり前に思っていた日本の高度成長をあえて“多くの途上国が経験する開発”として捉え直しています。

都市部の発展ばかりでなく、農村や炭鉱地帯、そして公衆衛生の分野で進められた試行錯誤を丁寧に紐解くことで、現代の国際援助の在り方にも学ぶところが多いのが面白い点です。

とりわけ1970年頃の日本は、豊かさを誰もがある程度享受し始めた時代でしたが、それは決して“自然に”そうなったわけではない。

多くの人々、特に農村の女性たちや炭鉱で働く人々が、外部介入と組み合わさりながら、地域の状況に合ったかたちで少しずつ未来を切り開いていったのだと改めて気づかされます。

私自身、こうした側面を本書で読むことで、「私たちの過去が、世界の未来にこんなに参考になるんだ」と、大きな発見がありました。

読み応えがあって、しかも視野を広げてくれる一冊だと思います。

きゅうさんの本棚:さらに本書に興味をお持ちの方へ

この記事をお読みいただき、さらに『戦後日本の開発経験』に興味をお持ちになった方は、お近くの書店やオンラインストアでおすすめの本を手に取ってみてください。
きっと理解が一層深まることでしょう。

ぜひ一度お試しください!


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