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白昼堂々、暴言

先日、エネルギーを持て余した息子を連れて近所の複合商業施設の中にあるプレイスペースを利用してきた。
屋内の広々としたスペースに、全キッズが泣いて喜ぶ刺激的な遊具が所狭しと並んでいて、入場料を払えばどの遊具も使い放題。

飲食物の持ち込みも自由、時間内なら入退室も自由と、子連れ家族に大変嬉しい激甘な仕様。

屋外で過ごすには過酷過ぎる灼熱の真夏を始め、真冬や雨の日にも大変重宝する施設である。

というか、夏場は屋外の遊具は物理的に利用出来ないのだ。滑り台もブランコも太陽熱で焼けたフライパンのようになってしまうから。触れると文字通り火傷してしまう。

しかしキッズの小さな体にうず巻く強大なエネルギーは、外気温や大人の事情に頓着しない。

だからこそ、さあ豆台風よ、このユートピアで思う存分に暴れ給え。

そう言って子供を送り出し、親たちは中央に設置された休憩スペースで優雅に持参した水筒のお茶など啜れれば良いのだが、いかんせんうちの息子は大変な怖がりで慎重派。

ギャオンギャオンと叫びちらしながら走り回る他所の子たちを尻目に、石のように固まり、警戒心と猜疑心の入り混じった瞳で周囲を窺っている。

走り回るどころか、果たしてこの地面は本当に信頼に足る強度であろうか、心を許し地に足をつけても良いものだろうか甚だ懐疑的なご様子。

抱っこの体勢を解こうと四苦八苦する私に全力でしがみつき、意地でも離れようとしない。

よいのだよいのだ。
野生動物は本来このように慎重で臆病であるべきなのだ。
その臆病さが危険を早期に察知し、慎重さが危機を遠ざけ、結果的に個体の生存確率を高める。

つまり我が息子は生物的に理にかなった大変優秀な個体なのである。

良い良い。

それは良いのだが、現実問題、やっとこさ迎えた週末、私は疲れている。一緒に来た夫も疲れている。
出来れば我々も他の親御さん同様に休憩スペースに腰を落ち着け、遠くから息子の遊ぶ姿を見守りたい。

ここはキッズのユートピア。時には無鉄砲に新しい環境に飛び込んでくれても良いのだ。

頑として動かない息子を抱え、仕方なく我々夫婦は疲弊した肉体に鞭打って、トランポリンやらボールプールやらを体験させる。
当然入場料の元を取りたいという下心も大いにある。

汗だくである。

息子はどこぞの王様のように遊具から遊具へ神輿(抱っこ)で優雅に運ばれる。
彼の柔らかい足の裏が汚れた床を踏むことはない。

王様が一等お気に召した遊具は一人用トランポリンであった。
といってももちろん王は自らトランポリンを揺らしたりはしない。
王は鎮座するのみ。
下僕(我々)が両脇から中腰で必死で揺らし彼を喜ばせる。

そりゃもう、汗だくである。
言うまでもないが、中年期の中腰姿勢は自傷行為に等しい。

ふと気づいたら、夫は姿を消していた。

トランポリンでご機嫌になった小さな王様を抱え、暴発しそうな腰を庇いつつ夫を探す。

プレイスペース内に設置された無料のマッサージチェアの一つにひっそりと夫は体を預けていた。

未だ地面に対する警戒心を解かない息子を小脇に抱え、私は夫の前に仁王立ちになった。

「おうおう、妻が必死に子供を遊ばせてる間にマッサージたぁ、良いご身分だなぁ!」

怒っていたわけではない。ただ、子どもたちの嬌声に負けじと我知らず私の声はかなりの大きさとなっていたらしい。

ビクッと体を震わせたのは夫ではなく、両隣のマッサージチェアを使用していた他所様の旦那衆であった。

やってしまった…

図らずも、私の一言はこの場でいっときの休息を楽しむ全ての旦那衆への非難となってしまった。

焦る私と左右の旦那たちをよそに、普段から私に罵られることに慣れ親しんでいる夫はのほほんとした顔で立ち上がった。
「でもこれ、無料だからあんまり気持ちよくないよ。」
「あ…そう?それは…良かった(テンパり)」


普段の何気ないふるまいや関係性がこうやってふいに露見する。
私は大いに反省すべきである。










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たいたい
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