今更ブルベだイエベだの。
いつからだろうか。
世間が、女子らが呪文のようにブルべだのイエベだの唱えだしたのは。
いわゆる「パーソナルカラー診断」だ。
皆さん既にご存じだろうし、なんなら診断済みの方も多いだろうが、念のため…
女性ファッション誌が狂ったように「イエベさん」「ブルべさん」とまくし立てていても、SNSで「ブルべマウント(※ブルベ=色白だと勘違いした人たちがイエベに対してマウントを取ることがあるらしい)」がどうだこうだ話題になっても私はそれらの狂騒を一歩引いたところから斜に構えて眺めていた。
一過性のブームはただ去るのみ。
子供の頃から流行りものには手を出さない硬派な女で通ってきた私。
「みんなが持っている」から欲しいなんて愚の骨頂。
マスメディアに踊らされ流行りものに飛びつく哀れな大衆よ。
と、確固たる信念を持ってブームに近寄らないでいるのかと言われればそんなことはなく、ただただ私が少しばかり捻くれているだけなのである。
こんなことがあった。
小学生の頃クラスで一大ブームを巻き起こした「ロケット鉛筆」
私は盛り上がるクラスメイトをよそに長らくゴーイングマイウェーを貫いていた。
ブームというものはある日突然儚く終焉するものである。
見た目の可愛さも、カラフルな芯を自由に装着可能だという斬新さもすっかり真新しいものではなくなり、皆の筆箱の中からロケット鉛筆が消え去った頃、私は突如ロケット鉛筆への熱情というか激情に突き動かされた。
私は一人財布を握りしめ、学校近くの文房具屋に走った。
一時は店のトップを張ったロケット鉛筆が、今はもう寂しげに隅の方に追いやられていたあの寒々とした光景を私は忘れない。
そう、私は流行りものに飛びつかないクールな女を装いつつ最終的には大抵ブームに乗っかる女なのだ。
そこでパーソナルカラーである。
「イエローベース」を「イエベ」
「ブルーベース」を「ブルベ」
という略し方の違和感と言うか可愛く無さも相まって(たぶん「○○べ」とべで終わる語感が嫌なんだと思う)これまで忌避してきたこちらの診断が今!まさに今、俄然気になっている!
パーソナルカラー診断はもはやブームを越えてすっかり定着してしまっている様相だ。
プロに診断してほしい熱は高まるばかり。
しかし、お金を払う意味があるのだろうかという点において私には若干の迷いがあった。
なぜなら私は誰が見たっていわゆる「イエベ」のお手本みたいな色艶、姿形をしているからである。
目の色をじっくり見る必要も、顔の前で様々な色をした布を合わせてみる必要も、腕にいくつかのファンデを乗っけて色の変化を観察する必要もない。
私が「失礼します」とドアを開けて入ってきたその瞬間にパーソナルカラー診断士は断定するだろう。「はい君、イエベ!」
ひよこの性別鑑定士が雄雌を見分けるのと同じ要領だ。
海は青い、ポストは赤いと同じレベルで私は黄色い…もとい、「イエローベース」なのだ。
これで「あなたはブルベですね」という診断が下りたらおそらくパーソナルカラー界の常識はひっくり返り、人類が恐慌状態に陥ることとなるだろう。
この「ブルーベース」「イエローベース」という2つのベースはさらに春・夏・秋・冬の4パターンに細分化されるという。
私は8割がた「春」タイプだろうと思っているがこちらはぜひプロに確定診断をしていただきたいところである。
最近そこからさらに細分化出来るらしいと聞いたからにはもう子供の頃のようにお財布を握りしめて走り出したい気分だ。
誰か!誰か私を細かく診断しておくれ。
自分の新しい魅力に気づきたいんだ。
もっともっと自分に惚れたいんだ!
おそらくプロに見てもらった後は「とはいえ結果に囚われすぎて好きなものを好きに選べなくなるのはどうかと思うよね」などと鼻持ちならないことを言いつつも、洋服選びやコスメ選びの度にプロのご意見を全力で参考にするに違いない未来が見える。
先日ようやく思い立ち、人気のパーソナル診断屋さんの9月分の予約枠争奪戦に参戦し、開始10分であえなく散った私。
パーソナルカラー診断の人気はまだまだ現役だったらしい。
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