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2018年アカデミー賞: "This is me"圧巻のパフォーマンス

今年の授賞式一番のクライマックスは歌曲賞にノミネートされた『グレイテスト・ショーマン』の“This is me”のパフォーマンスだったのではないでしょうか。

『グレイテスト・ショーマン』という、とにかく楽しいエンタメミュージカル作品の中で、"This is me"を歌うシーンの重みだけは別格でした。ヒゲ女(キアラ・セトラ)をはじめとするサーカス団員たちが、「逃げも隠れもせず、ありのままの自分で生きていく」ということを高らかに宣言するシーン。

"This is me"は、この映画を象徴する歌というよりも、『グレイテスト・ショーマン』自体がこの歌のために作られたんじゃないかと。それぐらい心に残る名シーンでした。

薄暗い授賞式の舞台で、スポットライトにぼんやりと照らされたキアラ・セトラの影が歌い出します。”言葉の刃で傷つけるなら 洪水を起こして溺れさせてやる”と、歌詞が力強く変化すると、歌の高まりと共に彼女の声も変わります。彼女の表情や目線に何か鬼気迫るものを感じます。

途中からコーラスに加わるのは、スポットライトの影の中にいた大勢の人たち。歌のとおり、影の中に隠れていた人たちが“私たちは戦士だ”と歌った瞬間、舞台に光があふれます。クライマックスでは、全員が前へ歩き出し、舞台から客席へ飛び出すのです。

途中、キアラの感情が高まり、グッと声が詰まります。歌えなくなり、顔を上げて涙をこらえる。その直後に、今まで泣きそうだった人とは思えないほどの、力強い声が響き、“気を付けろ 私が行く”と歌い上げます。

こんなふうに魂のこもった歌を久しぶりに聞いたな、と思いました。この歌に、どれほど救われたのか、どれほど勇気をもらったのか、今回の作品への出演が彼女にとってどれほど特別なことだったのか。キアラ本人のこの歌に懸ける思い、作品に対する思いみたいなものが、ガンガン伝わってきました。

映画のシーンに匹敵する、むしろそれを超えるほどの名シーンが授賞式の舞台の上で生まれたのです。

残念ながら歌曲賞は『リメンバー・ミー』に持っていかれてしまいました。"リメンバー・ミー"もとてもいい歌なのですが、授賞式当日のパフォーマンスは、"This is me"とは比べ物にならず、まるで素人のカラオケ大会みたいでした。(ガエル・ガルシア・ベルナルは歌手じゃないので、仕方ないか…)

見ているだけで勇気が湧いてくるキアラのパフォーマンスはこちらから。

https://www.youtube.com/watch?v=tbsDdzCyU5g

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