おっさんずラブ リターンズ 始まる!
おっさんずラブ リターンズが始まる!
この日をどんなに待ちわびたことか(涙)。日本中のOL民の歓喜の雄叫び(おたけび)がそこここから聞こえてくるようだ。
しかし、元旦から地震、津波。飛行機事故と、日本は大変なことになっている。大切な人を失われた方達、今も救助を待っている方達、避難所で不自由な思いをなさっている方達の苦悩を思うと、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。被災地でもこの日を待っていたOL民がたくさんいらっしゃるはず。だから、申し訳ないという気持ちとともに、今ドラマの開始を待っている。
記憶を手繰り寄せると「おっさんずラブ」が放映された2018年のあれやこれやが怒涛のように押し寄せてくる。
ドラマが始まった時は、私の娘達(キリエ)が連載していた『4分間のマリーゴールド』の映像化がすでに決まっていて、ドラマのスタートを翌年に控えていた。私はそのノベライズの準備中で、毎日パソコンに向かってひたすら文字を打ち続けていた。ノベライズと言っても、娘達から「好きに書いていい。できるだけ漫画にはないシーンをたくさん入れて欲しい」と強く要望されたので、ゼロを1にする産みの苦しみはオリジナル小説と同じだった。
ある夜、疲れた頭を休ませるつもりで何気なくテレビをつけた。そこに映し出されたのがあのドラマで、私は一瞬で「沼」に落ちてしまった。まさかあれほどまでにどハマりするなんて夢にも思わなかった。春田と牧が存在感とリアリティーを持っていきなり私の世界に入り込んできた。私の世界に天空不動産は存在し、春田も牧も、黒澤部長も、皆そこで普通に生活し始めた。彼らがいる世界は温かく、優しく、善意に満ち、愛に満ちていた。日本のどこかで何気ない日常を送っているに違いない春田と牧の姿を思い浮かべるだけで、唇に笑みが浮かんだ。
今にして思えば私は『4分間のマリーゴールド』を執筆中、「おっさんずラブ」の影響を少なからず受けていたに違いない。恐らくは無意識レベルで。
菜々緒さん演じるヒロイン沙羅の、血のつながらない弟へ愛が恋心に昇華していく道程は、同僚である牧への友情がいつしか恋に変わっていった春田の心のプロセスと重なる部分がある。
そして福士蒼汰さん演じる主人公みことの、健気でひたむきでただひたすらに沙羅を想う気持ちは、まさに牧の愛と寸分違わない。きっと春田と牧は、執筆中の私の背中を優しく押してくれていたのだろう。
私はあのドラマを観てからというもの、登場人物が恋に苦悩する姿を書いている時に、しばしば牧の姿がまぶたの中に立ち現れるようになった。
春田とちずのハグを見てしまった時の牧の瞳!!!顔も歪めず、泣いてもいないのに、その悲しみの深さ、切なさたるや、見ているこっちが溺れてしまう。あの瞳を思い出すだけで、私はウルウルを止められない。観返すたびに泣いてしまう。本当にすごい俳優さんだ。あの優しい繊細な牧君とHIGH&LOWの達磨一家のおっそろしい頭(かしら)が同一人物だなんて、 林遣都さんの神がかった演技力にひれ伏したくなる。
それにしても、あれほどまでに牧の心をつかんだ春田に対して、誰一人「なんであんなダメ男を!?」と微塵も思わないのは、ひとえに田中圭さんの魅力のたまものだと思う。
やっていることを考えるとほんとに困ったちゃんなんだけど、あの殺傷力のある「可愛げ」!!! あの無敵の可愛げのせいで、何もかもチャラにさせられてしまうのだ。まさに可愛すぎる罪である。だけどあの可愛げが出せるのは田中圭さんだけじゃなかろうか。
もし春田のような男を小説に登場させたとしたら、私の筆力では絶対にあの可愛さの百万分の一も出せない自信がある。自信満々と言っていい。いや、たとえ文豪でも難しいだろう。あの笑顔、あの表情、あの仕草、あの話し方、どうやって文字で表現したらいいのだ? 無理!
あと数時間で、あのドラマが帰ってくる。春田と牧が帰ってくる。武蔵が帰ってくる。天空不動産の社員が帰ってくる。
またみんなに会えるなんて、夢じゃなかろうか。多分夢だ。いや、残念だが絶対夢だ。きっと朝目が覚めて「やっぱり夢かあ」と肩を落とすのだろう。だけどせめて夢でいいから第一話を観終わってから、目覚めたいものである。