三浦翔平さんのこと
私は「おっさんずラブリターンズ」を観るまで、三浦翔平さんという俳優さんを知らなかった。
だからこのドラマが始まっても、三浦さん演じる菊之助に対して、正直興味がなかった。
ところが…ところが……。ドラマが進むにつれて、三浦さんの演技力と魅力の虜になってしまったのである。
私の偏見かもしれないが、正統派のイケメンというものは、なかなか「面白い」とか「笑える」とはならない気がする。何をやってもかっこいいし美しいからだ。
ところが三浦さんときたら、イケメンであるにもかかわらず、ものすごく面白いのである。表情や仕草が七化けするのだ。表情といい仕草といい、よくもまあこんなオモロイ演技ができるものだと驚かされた。イケメンという属性をかなぐり捨てて、全力で泥酔や狼狽を演じて、私たちを爆笑させてくれたのだ。
そして彼は二つの顔を自在に使い分けている。
「和泉さんに見せる顔」と「和泉さん以外の人に見せる顔」の二つだ。
前者の可愛さったらもう、筆舌に尽くしがたい。しかも可愛さだけでなく、時には母のように慈愛に溢れ、時には雨の中で母犬を探す仔犬のように哀れでいじらしいのだ。
眼差しも声も表情も和泉さんへの愛に溢れている。他の人に対する時と全然違うのだ。
そして驚くべきは、その細かく計算された演技。とにかく細部に演技力が光っている。
ものすごく小さいところを一つ挙げてみよう。蝶子さんがおむすびを買いにやってきたシーンだ。
菊之助が下を向いておむすびを握っているところに、「こんにちは」と、声がかかった。菊之助は顔を上げて、ほんの一瞬の「間(ま)」を置いてからパッと笑顔になった。「三浦翔平さん」は、何度も脚本を読んでいるから当然知っている。聞こえた声の主が蝶子さんであることを。しかし菊之助はこの時点では知らないのだ。だから一瞬の「間」があった。
もしかしたら、これは計算ではなく、三浦さんが菊之助になりきっていたからかもしれない。
そして三浦さんは演技ではなく、本当に和泉さんを愛していたに違いない。
あの健気で一途な菊之助の恋が叶って本当によかった。最終回までどうなるかわからなかったので、本当にハラハラした。まんまと制作者の罠に引っかかってしまったのだ。
噂によると、三浦さんは漫画好きで有名らしい。漫画家の親として、こんな嬉しいことはない。
私の世界に彗星のごとく現れた三浦翔平さんは、蝶子さんの4チミンのように、私の「推し」になった。
ちなみに菊之助のアクリルスタンドはすでに注文済みである。