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情報Ⅰの執筆者・校正者が足りていない話
2025年1月に現課程での初回の大学入学共通テストが実施され,情報Ⅰが初めて出題されました。さまざまな版元(出版社などのこと)から,共通テスト対策用として情報Ⅰの問題集や参考書が発行されています。弊社でも,情報Ⅰの教材の仕事を何度か受注しました。今回は情報Ⅰの執筆者・校正者に関する話です。
教材出版社のサイトの訂正一覧を見る
問題集や参考書を発行する教材の版元は,出版物に誤りがあると自社サイトに訂正一覧をアップすることが多いです。
少し前に,ある版元のサイトで出版物の訂正一覧を見る機会がありました。情報Ⅰの問題集の訂正一覧PDFもあったので開いてみたところ,単純な誤植も含めると十か所以上の訂正がありました。
情報Ⅰの問題集に誤りがあるのは,この版元だけではないようです。
「情報Ⅰ 問題集 訂正」
などと検索すると,さまざまな版元から発行されている情報Ⅰの問題集の訂正一覧が表示されます。
教材の仕事をする知人からの連絡
昨年,教材の仕事をしている知人から連絡がありました。知人によると,取引先の版元から,情報Ⅰの執筆・校正(+校閲)ができる人がいれば紹介してほしいとの依頼があったとのこと。ただ,この版元とは10年くらい前に別の教科の仕事でトラブルになってご縁がなくなったこともあり,知人による紹介の話は辞退しました。
情報Ⅰの執筆者・校正者は足りていないようです。上記の版元の場合,転職サイトで情報Ⅰの執筆者・校正者を募集しているのを何度か見かけたことがあります。また,こことは別の版元も,昨年に自社サイトで情報Ⅰの執筆者・校正者を募集していましたが,応募が少なかったのか,締切を延長して募集を続けていました。
能力が十分でないのに仕事をする人も
情報Ⅰにかぎった話ではないですが,版元で執筆者・校正者が足りない場合は教材編集プロダクション(編プロ)に仕事を発注することが多いです。ただ,版元で足りていないのですから,ほとんどの編プロでも足りていないようです。そのせいか,編プロから情報Ⅰの仕事をする能力が十分でなさそうな人に,情報Ⅰの仕事が発注されているケースがあるみたいです。
実際にSNSで,情報Ⅰを勉強しながら自転車操業のように執筆をしている人の投稿や,プログラミングは門外漢と公言しながら校正をする人の投稿を見かけたことがあります。以前書いたように,版元が編プロに仕事を発注したあと,ブラックボックス化している典型かもしれません。
内容が多岐に渡るので分業が必要
情報Ⅰはプログラミングだけを扱う科目ではなく,データの活用,シミュレーション,情報ネットワーク,メディアリテラシー,情報デザイン,問題解決の手法など多岐にわたります。情報Ⅰの学習指導要領には「公民科及び数学科などの内容との関連を図る」と,数学科だけでなく公民科との関連についても触れられています。
有名な情報科の先生でも得意でない分野があると聞いたことがあります。情報Ⅰで扱う範囲の広さを考えると,一人で情報Ⅰの全範囲の仕事をするのはなかなか難しいように感じます。それぞれの得意分野を分業するのが,教材の誤りをすべてなくすための近道かもしれません。得意分野だけでいいとなれば,情報Ⅰの執筆者・校正者はいまよりもずっと増えるはずです。
共通テストの問題を解いて思ったこと
今後の仕事の参考にするため,1月に実施された情報Ⅰの共通テストの本試験と追・再試験の問題を解きました。大学入試センターから事前に公表されていた問題作成方針のとおり,高校生が既知でない事例や事象を扱った問題がいくつも出題されていました。また問題文の文章量が多めでした。ただし,問題文をきちんと読めば難しくない問題も多かったです。
ところで,現代文では,共通テスト予想問題で出題した文章が共通テスト本番でも出題されることはまずないです。情報Ⅰも,共通テスト予想問題で出題した事例や事象が共通テスト本番で出題されることはまずなさそうです。情報Ⅰの共通テスト予想問題集は的中を狙うのではなく,既知でない事例や事象を扱った問題と文章量の多い問題文に慣れるためのもの,と割り切って制作するのがいいかもしれません。
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