二十四節気の養生法【2022 穀雨】
いよいよ春も最後の節気「穀雨(こくう)」ですね。
4月20日から5月4日までが穀雨です。穀物の成長を助ける雨のことで暦便覧には「春雨降りて百穀を生化すれば也」とあります。
温かい春の雨が降り、それに合わせて田植えの準備が整う時期で、変りやすい春の天気も安定して日差しも徐々に強まってきますね。
4月17日からは立夏の前18日になり「春の土用」にも入っています。
新入学や転勤・転居など新しい環境に変わった方も多いでしょうが、少しは慣れてこられたでしょうか?通勤・通学にカラダも慣れるまで大変ですが、新しい人との人間関係作りなどに気も使いココロも大変ですね。
ストレスに傷められず、新しい環境をも楽しむぐらいの気持ちでお過ごしいただければと思います。
春の終わりから初夏へと季節の変わり目(土用)で一番体調を崩しやすい時期なので、しっかり養生してお過ごしくださいね。
少しでもストレスを和らげていただければと願い、今日は、桂離宮庭園をご案内します。庭園の木々が鮮やかな新緑になり、とても美しいお庭でした。
ここは宮内庁管轄で事前に申し込みをしなければ拝観できないので、わたしも60年以上京都に住んでいますが、実は中を訪れたのは初めてです。
江戸時代初期につくられた八条宮という皇族の別荘で回遊式の庭園や書院造の建物があり、いままで火災などの災害に合わず創建当時のまま現存しているそうです。
池の周りに茶屋があり、それぞれに船着き場があり四季折々の風景を池遊びや茶屋で茶を点てて楽しまれたようです。月見台からは池に浮かぶ月を見てお月見をするなど、昔の貴族の風流な暮らしが偲ばれます。
参観コースは1時間ほどですが、外界の喧騒を忘れしばし平安貴族の気分で戯れるのもストレス解消法です。遠方の方はビデオでご覧下さい。
https://sankan.kunaicho.go.jp/guide/katsura.html
もう一枚、円山公園の枝垂桜です。こちらも京都の桜と言えば良く登場する有名な枝垂桜ですが、撮影した日は4/8でもう満開ではなくなっていましたが当日は青空に映えとても綺麗でした。
自然を見ているととても癒されます。忙しくてストレスフルな毎日でしょうが、少しでも時間を見つけて自然の移ろいを愛でてください。自分もこの大自然の一員なんだなぁと感じることが大切ですね。
コロナや戦争や物価高など毎日イヤなニュースばかりで気も滅入りますが、自然から少しでも良い「気」をもらって「正気」を補いましょう。
さてさて、穀雨になり春の季も終わり、初夏になっていきます。少しずつ自然界の気は「生」から「長」に移り変わり、万物がどんどん成長していく気に進んでいますね。中国中原地域では、「長夏」と言って夏の終わりに梅雨のようにしとしと雨が降るようですが、日本や台湾、中国の江南地方(揚子江流域)では、夏の前に「梅雨」がありますね。しとしと雨が降り湿度が高いこの季節は「脾(お腹)」を傷めやすい時期です。
そして4月17日からは季節の変わり目の土用に入っています。土用も季節の変わり目で脾を傷めやすい時期になります。西洋医学でいう脾臓は「血液を一時的に貯蔵して循環血液の量を調節したり、古くなった赤血球を破壊する」臓器とされていますが、中医学でいう脾とは全く違います。
中医学でいう脾とは、飲食した物から営養を吸収し、生命活動に必要な「気・血・水(津液)」というエネルギーをつくり、それを全身に運ぶ(運化)働きと、もう一つ「血」が脈外に漏れないようにする働きを担っています。中医学では臓器の名前ではなくこの働きを脾というのです。
もう少しわかりやすく言うと脾とは、気血製造工場とか気血製造機というイメージで、なおかつ血水輸送機といった感じです。
せっかく高価なオーガニック食品や健康食品を食べても、気血製造機がオンボロでは気血が作れず、全身に運ばれません。気虚や血虚の元には、脾虚と言う脾の働きが弱った状態があるのです。
昔から病気がちで元気のない子どもを「ひよわい子」と言いますが、漢字は「脾弱い子」と書きます。つまりお腹が弱いということです。ほとんどの病気や症状の大本は脾虚と言っても過言ではないくらいに脾の働きが大切です。そのため脾は、気血生化の源と言われ後天の本と呼ばれます。
脾は冷えに弱く冷たい物の飲みすぎ食べ過ぎやお腹を放り出して寝ていると外から寒邪が侵入して悪さをします。お腹が冷えるとすぐに下痢をしたり、消化不良や食欲不振になるのは脾陽虚体質と言います。中からも外からも冷やさないようにすることが大切です。金太郎さんや千と千尋の神隠しの坊、また江戸時代の職人さんなども寝冷えなどでお腹を冷やさないよう腹掛けをしています。お腹の弱い人は出来れば夏でも薄手の腹巻などで補温するようにしましょう。
そして土用は、土気が盛んになるので土用に土をいじると土の神様が祟ると言われ、脾も五行の土に属し脾気も盛んになりお腹を壊しやすい時期になると考えます。
黄帝内経太陰陽明論編に、黄帝が「脾が一つの季節で旺盛にならないのはなぜか?」と問い、大臣の岐伯は、脾は土で中央を治める。四臓の長で各季節の終わり18日間を治めているので一つの季節だけ治めることはない。 土は万物を生じ養い生かしているのと同様に、脾は一つの季節だけ旺盛になるわけにはいかない」と説明されています。
土用と言えば土用の丑の日で「鰻」が有名ですが、それぞれの季節の終わりに土用があるのです。
立春、立夏、立秋、立冬の前18日間がそれぞれ土用となり、脾の気が盛んになるので特に脾を養生しなければいけません。
脾の養生法は、「健脾利湿」と言い、脾を健やかにして、水の巡りを調えることです。
5月は爽やかな季節ですが、梅雨になる前の春の土用の間にしっかりと脾を健やかにしておかなければ、梅雨に入ると益々体調は悪化します。
最近テレビなどでもよく気象病と言われるようになりましたね。医学部の教科書にはなかったと思いますが、中医学では病気になる原因は「外因」と言って外の原因、つまり気象や気候など外側にある邪気がカラダに侵入して起こると考えました。雨が降ると体調が悪いと言う人は脾気虚、つまり根本的にはお腹が弱い体質だと考ます。
脾は、消化・吸収・運化を主りますが、脾と胃は陰陽関係で密接に繋がり脾胃として一体となり脾は昇清、胃は降濁に働きます。お腹が弱い脾気虚体質であると気血を作れずやがて気虚や血虚、さらには運化の働きが低下して湿痰といった体質に偏っていきます。
気虚は、疲れやすい、やる気が出ない、手足がだるい、いつも眠たい、冷え症、免疫力が低い、内臓下垂、尿漏れ、帯下などが起こりやすく、血虚は貧血や不妊症、更年期障害、くすみやしわや肌荒れ、情緒不安定が起こりやすくなり、湿痰はむくみや肥満のほか、アトピーや花粉、喘息などのアレルギー体質や腰痛、膝痛、四十肩などの関節痛などのほか、リウマチや掌蹠膿疱症などの膠原病や原因不明の病気や治療法のない難病は「怪病多痰」と言い湿邪が原因のことが多いとされます。
湿痰は、脾気虚により脾の運化作用が低下して津液(水)の巡りが悪くなり脾虚湿盛という状況になった体質のことです。
土用の養生法「健脾利湿」は、まず脾の働きを落とさないこと、そのためには暴飲暴食を避ける、冷飲食を避ける、高カロリー高たんぱく、激辛など消化に負担がかかるものを避ける、ストレスを溜めない、特に思い詰めたり拘り過ぎないことなどが大切です。
食べ過ぎや夜遅い食事などは脾に負担がかかるので要注意です。どうしても遅い食事の時は消化の良い温かい柔らかい物を食べましょう。
そして脾の働きを高める物を摂るように心掛けましょう。
自動車の車検のように気血製造機である脾胃を取り出して点検したりメンテナンスすることは出来ませんが、メンテナンスをして老朽化した部品を交換するように、食べる物でメンテナンスを行います。
脾胃をメンテナンスする食べ物は、穀物類、まめ類、いも類など自然な甘味の食べ物です。それらの食材を温かく柔らかく消化しやすく調理して食べることで、脾胃をメンテナンスし性能を高めます。少しの量を食べるだけでたっぷり気血をつくり、全身に運ぶことが出来るようになります。
お腹の調子が悪いなぁという人や気虚や血虚、湿痰体質の方は、ぜひこの土用の間にしっかりと「健脾利湿」をしましょう。
お腹の調子が悪い時は、おへその上の【水分】やへそ下の【関元】、へその両横の【天枢】といったツボにカイロを貼って温めたり、背中の胃の裏辺りにある【脾兪】、【胃兪】にテニスボールを置いてグリグリ刺激や【足三里】、【豊隆】、【陰陵泉】にお灸やツボ押しもオススメです。
京都伝統中医学研究所の"穀雨におすすめの薬膳茶&薬膳食材"
1.「健脾利湿」におすすめ薬膳茶&食材
薬膳茶では、「水巡茶」、「そろそろダイエット茶」
薬膳スープでは、「美潤湯スープ」など
薬膳食材では、「新彊なつめ」、「はとむぎ」、「緑豆」
薬膳スィーツでは、「いろいろお豆のお汁粉セット」、「八宝果仁豆」など
2.「健脾利湿におすすめ」全部食べられる薬膳茶2種 スィーツのような薬膳茶
①「調補気血茶 桂棗黒豆茶」 紅棗片、黒豆、竜眼をブレンド
お湯を注いでそのまま放置(長めに抽出)
脾(お腹)をメンテナンスし働きを良くして消化吸収を高め、気血を補
う。黒豆が香ばしく、なつめや竜眼の自然な甘味があり、とても美味し
い全部食べられる薬膳茶です。
②「健脾利湿茶 意棗紅豆茶」 紅棗片、小豆、薏苡仁(はと麦)
お湯を注いでそのまま放置(長めに抽出)
脾(お腹)をメンテナンスし働きを良くして水の巡りを調え、湿邪を排
出し肥満やむくみを改善。とっかん小豆(ポン菓子)を使用しているの
でこちらは砂糖が使われています。
まるでお汁粉やぜんざいなどスィーツのような全部食べられる薬膳茶。
3.漢方入浴剤
ヨモギがたっぷり入った「ポカポカあたため乃湯」もカラダが温まりコ
コロの緊張もほぐれ気の巡りを促進。
ヨモギは漢方で艾葉(ガイヨウ)と言い、古来から擦り傷や切り傷など出
血時に止血薬などとして使われたり、浄血や造血、デトックス作用(むく
みの改善)、冷え性改善、美容効果があり、最近では「よもぎ蒸し」など
も流行っていますね。
中医学や漢方の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。
薬膳茶や薬膳食材などの商品は各ショップでお買い求めいただけます。
京都伝統中医学研究所 楽天市場店 https://www.rakuten.co.jp/iktcm/
京都伝統中医学研究所 ヤフー店 https://store.shopping.yahoo.co.jp/iktcm/
次回は、5月5日「立夏」ですね。もう夏です!また猛暑になるのでしょうか?その前に日本にはじめじめとイヤな梅雨の季節になりますね。
梅雨入りまでのひと時が一番爽やかな気候ですが、土用ですのでくれぐれもお腹の養生をしてお過ごしくださいね~!
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