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無名の染物屋が、なぜパリのブランドとコラボしてジャケットを作れたのか#2
前回の記事の反響が大きかったので、今回は海外へ挑戦している理由と過去の取組みについてお伝えしようと思います。
私たちは、岩手県一関市に、大正七年から100年以上続く染物屋です。
普段は民俗芸能の衣装や祭り半纏、手拭などを受注生産しており、海外への販路開拓など未経験。ましてや、ファッションの都パリとは縁遠い存在でした。しかし、そんな田舎町の染物屋が、なぜ海外進出できたのか。
数回に分けて、お伝えできたらと思います。
2017年から挑戦は始まっていた
そもそも、なぜ海外に販路を開拓しようと思ったのか。については、前回の記事の通りです。
海外に挑戦したいと思っていても、経験ないし、人脈ないし、どうしたら良いかわかりませんでした。
そんな時に見つけたのが、中小企業庁が行っている"JAPANブランド育成支援事業"です。
中小企業庁では中小企業者等が、海外展開やそれを見据えた全国展開のために、新商品・サービスの開発・改良、ブランディングや、新規販路開拓等の取組を行う場合に、その経費の一部を補助することにより、地域中小企業の域外需要の獲得を図るとともに、地域経済の活性化及び地域中小企業の振興に寄与することを目的として、令和4年度当初予算「JAPANブランド育成支援等事業費補助金」を実施します。
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相談できる専門家と繋がりたい!と考えていた私は、この支援事業を知り、すぐに、問合せの電話をしました。
説明会が開催されるということで、早速参加しました。
会場には事務局の方々、専門家、コンサルタントの方々、それと海外販路開拓したいという企業の方々が沢山きていました。
色々説明を聞いて感じたのは、「海外進出したいけど、自社商品がどの国に受け入れられるかわからないし、どの国へ販路開拓するか決まっていない」という時点で、今回の支援事業に乗り遅れているということでした。
本気の参加者は、すでに販路開拓先の国も決まっているし、現地コーディネーターや、国内で一緒に商品開発をする専門家も決まっている感じ。
出遅れ感満載の私でしたが、それでも藁をも掴む気持ちで、担当者やその時に講演されていた販路開拓コンサルの方を捕まえて、海外進出への思いを伝えました。
すると、担当の方々から、
今回の支援事業への参加については、準備が足りないから間に合わないと思います。ただ、京屋さんが参加できそうな事業が他にもあると思うので、調整してみますので、お待ちください。
という心強い言葉を頂けました。
異例の参加許可
しばらくすると、担当の方から連絡がありました。
関東経済産業局の管轄にはなるのですが、そちらでアジアに向けた販路開拓のプロジェクトが立ち上がります。そのプロジェクトへ参加する企業の選考会が行われる予定です。本来は関東の企業限定だったのですが、もし海外進出へのお気持ちがあるなら、参加してみませんか?
こんなチャンスはないと思い、すぐに申込みをして、バイヤーの方々の面接を受けました。
この時のプロジェクトは、海外用の商品を海外のデザイナーと一緒に作っていく事業だったので、商品開発をしていない私たちにとっては本当にありがたい事業でした。
選考の結果、私たちもこのプロジェクトに参加させていただけることになり、海外販路開拓への第一歩を踏み出すことができました。
上海のファッションショーに出品
2018年から、上海で活躍中の若手デザイナーさんと何度も打ち合わせを重ね、10月に上海で行われた上海ファッションウィーク「モード上海」に作品を出品することができました。
初めての海外ファッションショーでのコレクション発表です。
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染物屋3社がそれぞれの技術を活かしあって、コレクションが完成しました。本当に素晴らしい皆さんと取り組めたことをありがたく思っています。このプロジェクトに参加させていただいた経験が、パリやロンドンへの販路開拓に活かされています。
世界に日本のモノづくりを発信できている喜びと、縁ある方々のために、このチャンスを必ず活かさなければと強く思いました。
全てが初めて。恐れや不安だらけです。
それでも私たちにはチャレンジしなければならない理由があります。
「大切に思っていることを大切にしていきたい」だからこそ行動する。
止まってはいられない。行動こそが未来を作る。何もしなければ何も起きない。
成功もなければ学びもない。創り上げたい未来にも近づけない。
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いつやるのか
「海外への挑戦は、今ではない。まだ、その時ではない。」と言って、先延ばしにしていませんか?
もちろん、社内体制、経済状況、業績、トレンドなど、さまざまな観点で時期を判断するのは当然です。
私が言いたいのは、タイミングは待っていてもやってこないし、チャンスも過ぎ去ってしまうということです。
成し遂げるための準備や段取りを本気で行なっているのか、それとも他力本願で待っているのか。
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タイミングは待つのでなく、作る!
その方が、夢がグッと近づく気がするのです。
次回は、挫けそうな時、冷や水をかけられてしまう時に、どのように情熱を持ち続けることができたのか。私の事例を紹介できればと思います。