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【私小説3】リアルサプライズプレゼント
幼稚園での生活をやんややんやと思い起こしていると、絶対に避けては通れない思い出にぶち当たる。それがリアルサプライズプレゼント事件だ。その日は突然やってきた、いつもと変わらない朝のはずだった。朝ご飯を食べ、制服に着替え、母に見送られ、幼稚園バスに乗り込んだ。しばらくしてからだ、背中に違和感を覚えた。なんだかなぁと制服の前を開いてモゾモゾやっていると、自分の脇の下あたりからハンガーが出現した。(えっ)そう、制服にハンガーを内蔵した状態で着てきてしまっていた。可愛らしいクマがあしらわれたハンガーだ。やべぇ、どうしよう。今日一日どう乗り切ろう。そう思った。
なんとか隠し通したかったが奮闘努力の甲斐もなく、園について間もなく京ちゃんがこんなもんを幼稚園に持ち込んでいる、と大騒ぎになった(は?いいじゃねーかハンガーくらいでガタガタ抜かすなガキどもが)。今だっだら
「ちょっw制服ハンガーごと着る人おる?wいや我ながらw」
とかなんとか言えるのだが、その時の私はすでに半泣きであった。何故きちんと確認してくれなかったのか、母を憎たらしく思った。母はあんまり私の事を見ていなかった。
皆の騒ぎに先生がやってくる。(けいこ先生だっけ?あっこ先生だっけ?)
先生は半べその私を膝に乗せてくれた。
「京ちゃん、どうしたの?」
私は(どうしたもこうしたもねーよ)とべそをかいた。
可愛いクマのハンガーなんぞ持ち込み、怒られるのも嫌だし、私はどうして良いのかわからず、とっさに一言
「あげる」
と言った。劇的にか細い声で言い放った。
それ以来、可愛いクマのハンガーが我が家に戻る事はなかった。
(突然の別れ)
先生は無邪気に
「くれるのー?!」
と喜んでいたように思う(人の気も知らねーで)
心底情けなく。損な性格が形成されつつあった。